「コース外滑走」という言葉の問題性について

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「コース外滑走」については、当ブログ1月30日の項「バックカントリー遭難始まる」で書きました。
「コース外滑走」という言葉は、調べてみると、私は2012年4月に『山と溪谷』誌で初めて使用しているようです。それ以来、今日まで使用してきました。情報の伝わり方はよくわからないのですが、最も初期の段階から使っていた可能性があります。つまり、『山と溪谷』誌に掲載した「コース外滑走」の記述から、各所に引用され伝わっていった可能性も考えられます。
「コース外滑走」の言葉は、特別な意図なしに私自身の考えに基づいて使っていたもので、どこかから引用したものではなかったと思います。もちろん、この言葉を使ったからといって、山スキーヤーが責められるとか、スキー場の責任問題になるとか、そういった意図は全くありません。

1月30日の項に書いたように、「コース外滑走」とは、いわゆる山スキーとは別の形式で、スキー場コース外を滑走することをさして使ってきました。
私は山岳遭難を専門に扱ってきたライターです。ある時期から、山スキー(スノーボードも含みます)の遭難が非常に目立つようになり、加えてその何年後かに、明らかに山スキーではないスキーヤーがスキー場外で遭難し、救助されるという事例が多く見られるようになりました。
これは、新しい遭難発生のパターンでした。両事例は「山スキー系」か「一般スキーヤー」かでパターンが異なり、区別する必要があると考えられました。そのために、
(1)山岳遭難の1つである、バックカントリー遭難
(2)「コース外滑走」における遭難
を区分しようとしたのです。ただ、本来は各事例の個別調査によって(1)か(2)かを確定しなくてはなりませんが、それを実行できたわけではありません。多くの場合、「・・・であろう」と推定にとどまっていたのが実際です。

さて、過日、日本雪崩ネットワーク理事の出川あずさ氏より、「コース外滑走」の用語を使わないで欲しい、との申し入れがありました。私自身、古い時代の山スキー経験はあるものの、現代のバックカントリーや、スキー場事情に全く疎いことから、出川氏の申し入れの意図する点が当初はなかなか理解できませんでした。
しかし、長時間の電話でのご説明、その後のメールによるご説明、さらにウェブサイト資料なども参照して、「コース外滑走」という表現の何が問題なのか、おおよそ理解することができました。
したがって、今後、「コース外滑走」の用語は基本的に使用しないことになると思います。書くことの内容は変わりませんが、「コース外滑走」を使わない表現方法で書くことはできるでしょう。既掲載の記事は特に訂正することはしませんが、必要と考えれば、注記などを追加するかもしれません。

「コース外滑走」という表現の何が問題かは、長文になりますので、ここでは省きます。日本雪崩ネットワークのキャンペーン「ロープの向こう側」に要点がまとめられています。特に最後の「関連用語」に明快な説明があります。
今回、忍耐強く説明してくださった出川氏に感謝申し上げます。
また、私が『山と溪谷』2012年5月号で、初めて「コース外滑走」に関してとりあげたまとめ記事を、資料として載せておきます。興味ある方はご一読ください。