姫ヶ岳登山、2回目(長文) 2022年4月30日

4月30日(土)
先日はルートを間違えたので、もう一度姫ヶ岳へ向かった。安全な登山ルートを確認することと、ヤセ尾根の難所が本当に危険かどうか再検討したかった。

01: 吉田林道で見た新緑。10日間あまりで山の様子は全く変わった

桜がだいぶ開花してきた吉田堤から林道へ。朝霧が立ち込めているが、日中は天気が回復する予定だ。日が昇って来ると青空がのぞき、新緑の木々が輝き始めた。10日あまりで山はすっかり春になった。あれほど多かった林道の残雪もすっかり消えていた。

02: 西コースの登山口。右側正面の尾根道へ上がっていく
03: 西コース下部の尾根道を行く。ほどよく伸びたコシアブラが採れた

林道は稜線の南側をずっと進み、標高250m付近で稜線に最も近づいている。このポイントで林道から右に分かれて山道に入る。林道は左にカーブしていて120m先が林道終点である。「姫ヶ岳西ルート」の登山口であるこの地点には、道標もテープも何もない。しかし尾根上に登ると明瞭な踏み跡があった。途中で沢に下る踏み跡が分かれ、左の林道から登って合流する踏み跡もある。尾根通しに行くと急斜面にはばまれ、一瞬、踏み跡が消えるが、開けた所を直登する。ここにピンクテープが2つと、「境界見出標50番」の標識があった。斜面にコシアブラの若木がたくさん出ていて、新芽の形がきれいなものだけ採った。
標高310m付近の平坦な尾根上に、ひときわ目立つ天然杉が立っている。続いて「境界見出標31番」は、先日ヤブ尾根から登って合流した所だ。登山口から約30分だった。
ここからイワウチワが多くなるが、先日はたくさん開いていた花がすべて終わっていた。続いて問題のヤセ尾根になる。「境界見出標25番」(以下「境界見出標」の部分省略)から最初のヤセ尾根は、数歩が悪いだけで終わった。左側は比較的新しい大きいガレが稜線近くまで崩れている。やはりこのあたりは、近年になって危険性が増したのではないだろうか。

04: ヤセ尾根の難所。4~5カ所続くうちの3~4番目あたりが悪かった
05: ヤセ尾根の難所。木はあるが両側とも極度の急斜面で危険

2番目のヤセ尾根もやはり危険で、足元が滑って転倒すると谷底まで滑落してしまう。慎重に足場を決めながら登る必要がある。登り切ると「21番」の標識がある。
3番目の難所は「19番」から10~15mの登りになる。最後のピーク手前で左側にちょっと巻いて抜けた。風化した岩面に小石が載っていて怖かった。登り切ると「18番」になる。4番目の難所は一番悪かったように思えた。ここを登り切ると「15番」の標識がある。
まだ終わらない。5番目の難所はそれまでよりも楽に越えられ「10番」のピークへ。それほど悪くなかった。どうやら終わったか? 前方に大きいピークが見え、「9番」を過ぎると、また左側に比較的新しい急なガレが落ちている。左側の樹林が切れて姫ヶ岳が望まれた。
やはり十分に危険だと感じられ、ここの一連のヤセ尾根は難所といっていいと思う。初級レベルと思う人は、安易に踏み込まないほうがいいだろう。
ちょうど9時、「境界見出標1番」のP480に着いた。ここで北秋田市と上小阿仁村の境界稜線に合流する。ルートは左に90度曲がる(ピンクテープあり)。直進してしまいやすい迷いポイントだ。
P480から15分弱で植林地ルートの分岐に着いた。沢筋の雪はすっかり消えて、支尾根にトラバースしていく踏み跡が連続して見えるようになっていた。

06: ブナの新緑
07: 上小阿仁ルートの合流点。前日の降水がこのあたりでは雪になった

この先で第2のP480のトラバースになり、稜線に戻った所で、大きい杉の切り株に「姫ヶ岳登山道」の標識があって、よい目印になっている。ここから5分ほどでもう一度「姫ヶ岳登山道」の標識があり、上小阿仁分岐である。下りで来たときに、少し右手の小さいピーク寄りに進むのが吉田方向、左にあるピンクテープへ行くのが上小阿仁方向である。大変迷いやすいポイントだ。

08: 姫ヶ岳見晴岩の岩峰より森吉山と阿仁合の町、旧阿仁鉱山の山々
09: 見晴岩より竜ヶ森、小繋森、四季美湖方面
10: 見晴岩にて
11: 姫ヶ岳山頂の愛宕権現、左に「太平山」の石柱

分岐から頂上までは25分ほど。10時23分、姫ヶ岳頂上に着いた。今日は青空に木々のきれいな新緑が映え、展望岩から見下ろす山々も新緑のモコモコが押し寄せている。すばらしい眺めだった。

12: P480から下降した尾根道の新緑。ここでもコシアブラが採れた
13: 「植林ルート」下部、杉植林地を下降して沢手前で右折する所

下りは植林地ルートの分岐まで約50分。吉田林道まで1時間弱だった(さらに吉田堤まで約1時間)。植林地ルートの支尾根上を歩く区間は、明瞭に踏まれた安全な山道だった。支尾根から左側に外れて植林地に入る所は、両側にピンクテープが下がっている。植林地内は足元の踏み跡に注意しながら下る。最後に小沢を渡り、対岸に上がったら沢から離れるように進んで、上部に見える林道の切れ込みをめざす。沢につられて下流方向に進んでしまうと、沢筋に迷い込んで時間をロスしてしまう。

14: 帰りの吉田林道にて、樹林の梢越しに姫ヶ岳が見える
15: スイセンが咲き、ヤマザクラが満開になった吉田堤

吉田堤から植林地ルートを通って往復するのが、積雪期も含めて姫ヶ岳の正規ルートだと思う。距離がけっこう長く、迷いやすい所も多いので、やさしい初級ルートとはいえないかもしれない。中級以上の人といっしょに登るようにしたい。

姫ヶ岳登山、1回目(長文) 2022年4月18日

4月18日(月)
阿仁合の姫ヶ岳(標高651m)に行く。軽い里山ハイクのイメージだったが、間違いのモトだった。情報はほとんどなし(ヤマレコの記録を見ればよかったのだが・・・)。地形図の標高差を見て登り3時間、下り2時間ほどと予想し、気温も高くもう雪山でもあるまいと、夏用シューズに軽アイゼンで出かけた。念のため、ワカンだけはリュックにぶら下げていった。

01: 吉田堤の南側(かざはり苑側)。正規の登山口は反対の北側にある
02: 吉田堤北側の登山口、黄色い標識のある林道を行く。左と手前の道は堤の周回路、右は吉田集落への車道

登山口の吉田堤までは車で10分ほど。少し戻って阿仁かざはり苑の前から山道に入るが、すぐヤブにはばまれたので引き返す。吉田堤の北の端まで歩くと、吉田林道の登山口があった。
今回は紙の地形図を持っていない。全面的にスマホのジオグラフィカ(地図アプリ)で行く。地形図を持たないとなると、かえって読図は真剣勝負になる。
地形図で林道がヘアピンカーブの所が1カ所ある。かざはり苑からの山道が、この角で合流することになっていた。そこを過ぎると、地形図に荒地記号のある広いカヤトの原にフキノトウがいっぱい出てきている。杉林を抜けて周囲は雑木林になり気持ちがよい。その先で林道は尾根上に乗り、左から山道が合流する。地形図には破線の道記号があるものの、判別しづらい踏み跡でしかない。首都圏周辺のコースのようにしっかり踏まれた山道ではない。

03: 吉田林道から姫ヶ岳が意外に近く見える
04: 吉田林道終点。ヤブのかぶさった林道跡が奥へ続いている

P313の南斜面一帯では、薪の伐り出し作業が行なわれているようだ。吉田の集落では昔ながらの薪燃料の生活が試みられているのだろうか。この一帯を過ぎるとまた杉林になり、しばらくで林道は稜線上に最も接近する(後で調べると、ここが西ルートの登山口だった)。なおも林道を進み、200mほど先が林道終点で小さな広場がある。残雪がない時期なら、底の高い車はここまで入れるだろう。
「姫ヶ岳登山道」の標識と、沢へ下る方向にピンクテープがある。気になったが、ヤブが多くなるものの林道跡はなおも続いているので、(地形図の道記号通りに)そのまま進んだ。やがて林道跡は沢に行き当たって終わっていた。

05: ヤブ支尾根から出た西ルート稜線上。32番の標識があった

ここからは沢を行くか左岸(右側)の尾根に上がるかだが、後者を選んだ。急登を標高差50mほど。危険ではないが完全に道はない。ハイキングコースとして紹介はできなくなった。稜線に出ると、薄いものの確かに踏み跡がありひと安心した。

06: ヤセ尾根の難所が始まる。こういうのが4~5回続いた

休憩後、稜線を進んで登っていくと、イワウチワが次々に現われて気持ちが和む。それに続いて、ちょっとした岩場っぽい登りを緊張して通過した(イワウチワは岩場に生えるのだったか)。ところが、もう1段、さらに1段と、岩ガレ道が連続して、しだいに悪くなる。手がかりを取らないと怖くて登れない。私の考えすぎか、怖がりスポットにはまってしまったか。初級者さんを連れていたとしたら、丸腰ではやばい(つまり、ロープを使わないと安全を保てない)・・・といった感じ。
短いが、ヤセたガレ尾根の登りが4~5段続いた。ルートは合っているのだが、水害か何かで荒廃が進んだのかもしれない・・・。帰りに同じルートを下る気にはなれなくなった。

07: 第1のP480で90度左折する(ピンクテープの方向)。稜線は直進しておりまちがえやすい

林道終点広場で沢方向に下るピンクテープがあったのだから、どこかで沢からの道が合流するだろう。そのように推定して、沢からのルートを探しながら先へ進んだ。「境界見出標1」のP480で稜線の左側にピンクテープを発見、これが沢から合流する地点にちがいないと一度は確信した。しかし、ここから急にヤブが多くなり、立ち止まって検討の結果、P480でルートは90度左折してピンクテープの方角に下っていることに気づいた。ここは迷いポイント、危ないところだった。

08: 沢方向への下降点を示すと思われた地点。ピンクテープ4つ(1つは落ちている)

もうどこからでも左側の沢に下りられなければおかしいので、下降ラインを探りながら慎重に進む。高差40m下った第1の鞍部からは、見たところ沢へ下降可能なように思える。さらに進んだ次の鞍部からも、沢筋の雪がつながって下りられそうだ。そこから一段登った所で立ち木にピンクテープを2つ発見、ここが沢への下降点に違いない。ほぼ決定である。下降点が見つかりホッとした。

09: 姫ヶ岳山頂へ続く踏み跡はとても薄かった
10: 上小阿仁ルートの分岐点。ピンクテープは上小阿仁へ、吉田ルートは右へ

約10m進むと太いブナの木があって、踏み跡はP480(左折したP480とは別のピーク)の直登とトラバースに分かれる。積雪期はトラバースできず直登するのだろう。トラバースの踏み跡もかなり薄い。距離にして200mほどトラバースして、稜線に戻ると、明らかに森林の雰囲気が変わった。立派なブナや天然杉が多く、林床は短いササ。踏み跡は薄いが歩きよいラインに続いている。旧阿仁町の「姫ヶ岳登山道」の標識がある所で、上小阿仁から登ってくるルートが合流する。ここから20分あまりで頂上だった。

11: 山頂の愛宕権現石仏。その様子から、由緒正しいものであることがうかがえる

頂上からは木にじゃまされるが、正面に森吉山がドンと見える。その真下に阿仁町の家並みが広がり、旧阿仁鉱山の山々が取り囲んでいる。東を向いた愛宕権現(wikiによる)の石仏が置かれ、少し離れて「太平山」の石柱がある。広場の北側には一等三角点の標石があった。

12: 見晴岩(第2岩峰)から森吉山と阿仁の町並みがすっきりと見える

頂上の南側へ踏み跡を行くと岩峰が2つ続いている。どちらも右側を少し巻いてから、左上へ斜面を登ってピークに立てる。第1の岩峰は木にじゃまされるが、第2の岩峰上に立つとほぼ180度、東側の展望が開ける。森吉山はすぐ対面に大きい。北東方向には竜ヶ森方面、南方向には奥阿仁の無名の山々が展望できる。このポイントが見晴岩というらしいが、何も施設のないむき出しの岩峰なので、本当に転落・滑落には注意しなくてはならない。

13: 山頂直下の林床にあったキクザキイチゲ。紫の花びらのように見えるのは萼片だそう

頂上へ戻り、13時5分下山開始。10分あまりで上小阿仁分岐だが、直進方向へピンクテープが2つ見えていたため、そちらへ下ってしまう。しばらく下ってから気がついて戻った。下る傾斜が急になったとき「さっき来た道ではない」と、違和感を感じることができた。気づかなければ、そして、事前に地形図で分岐があることを予測できていなければ、そのままもっと下り続けただろう。現代の道迷い遭難はその程度のミスで起こっている。

14: 下った沢(左の沢)をふり返る。合流点にはデブリ堆積跡があった
15: 下部まで来てもうすぐ林道合流点。無事に下ることができた

修正して吉田へのルートを下ること20分あまり、P480の下降点に着いた。ここから少々本気を出して沢筋を雪上下降である。足はトレッキングシューズに軽アイゼン。傾斜はそれほどでもなかったが、途中から雪が割れて流れが一部出ており、靴が濡れないよう気を使った。標高310m地点には雪崩のデブリ堆積跡があった。45分ほどで吉田林道終点に出た。
※この日の下降ルートは誤っていることが、あとでネット情報を確認してわかった。正しい吉田ルートから再登したときのことは、またあとで。

北八ヶ岳縦走 2022年3月5~6日

北八ヶ岳は好きな山である。雪山入門に適した条件がそろっていて、これほど気構えなく向かえる雪山も少ない。
ロープウェイから北横岳の往復は初めての雪山体験として定番になっている。2回目の雪山はロープウェイから縞枯山、茶臼山と縦走し、日帰りなら西側山麓の五辻を通ってロープウェイに戻るのがいい。麦草峠か白駒の池に1泊して、さらに高見石、中山峠へ歩き続けると、北八ヶ岳の核心部を縦走するルートになる。今回はこのルートだった。

2日間の天気/低気圧が通過して発達、6日は冬型になった

5日11時30ごろ、登山開始。ロープウェイがスキー客で混んでいたため、予定よりも1時間ほど遅れてしまった。ロープウェイの山上駅から外に出ると曇り空で、風も強く寒い。
同行のMさん(女性)は、何年か前に雪山登山を始めて、ガイドの技術講習も受けたと聞いていた。しかし、今回は久しぶりの雪山再開だったのかもしれない。相当ゆっくりなペースで歩いたつもりだが、Mさんはついて来れずに遅れがちだった。
13時に縞枯山到着。本日のルート中、まとまった登りの部分はもう終わりである。稜線に出ると強風にあおられて体が揺れた。Mさんの後ろにつき、ショルダーベルトをつかんで支えながら進んだ。強風の箇所は短く数10mで終わり、樹林帯に入った。

01:縞枯山展望台から南八ヶ岳方面。手前中央は茶臼山、右遠方は右から仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、北岳、鳳凰三山(2015年1月撮影)

縞枯山の展望台からは北八ツの広い山裾が展望できたが、山頂は雲の中に入ってしまっていて残念。風が強くてゆっくりしていられない。

02:茶臼山展望台から北横岳方面。右から縞枯山、北横岳(北峰・南峰)、蓼科山、左遠くに槍・穂高連峰(2015年1月撮影)
03:茶臼山展望台から南八ヶ岳方面。右から西岳、権現岳、阿弥陀岳、中岳、赤岳、西天狗岳、硫黄岳、東天狗岳(2015年1月撮影)

トレースをしばらく歩くと、直接、茶臼山の展望台に出た(本来は茶臼山山頂からの往復になるはず)。ここは有名な縞枯山の縞枯れ現象を観察できる場所で、北横岳、蓼科山、さらに北アルプス、南八ヶ岳方面の展望もいい。しかし、今日はやはり山裾部分しか見られず、山頂は雲で覆われてしまっていた。
北八ツは樹林の山だが、このように、要所要所に展望のよいポイントがある。奥秩父や南アルプスの樹林帯のように単調ではなく、針葉樹林帯の中にも灌木帯、二次林、溶岩台地、池沼などの変化があって楽しい。
展望台から戻って茶臼山に14時30分ごろ到着、休まずに通過。予定より約1時間遅れのままである。山小屋に「遅くなる」と連絡を入れたほうがいい、とMさん。それから1時間ほどで麦草峠に下りて小屋に電話するが、私の携帯(au回線)は通じず、Mさんの携帯(Yモバイル)で連絡を入れてもらった。
それからが良くなかった。麦草ヒュッテのトイレに入ったMさんが、なかなか戻らない。そのうちに、コーヒーを飲んでいるから入って休んでください、と言いにきた。ヒュッテに入ると、お客さんたちが集まって談笑している。Mさんは皆さんに心配されて、あれこれとアドバイスを受けていたらしい。

04:青苔荘、クラシックな山小屋だった

麦草ヒュッテで1時間近くロスしてしまい、薄暗くなってきた道を白駒の池へ向かった。青苔荘には日没ぎりぎりに到着。せっかく電話したのに、なかなか着かないので、かえって心配をかけてしまった。

05:白駒の池を歩いて渡る
06:新館ができた白駒荘

6日、8時に出てゆっくりと森を歩く計画だったが、もっと早く出発してもよかった。
凍結したと思われる白駒の池を歩いて渡り、対岸の白駒荘へ。白駒荘は新館ができてにぎわっている様子だった。

07:高見石へのルート、シラビソの森が美しい

スノーシューにしたのは正解だった。Mさんはしっかりついて来られるようだ。昨日よりも足取りがしっかりしている。アイゼン歩きが苦手か、不慣れなのかもしれない。
昨日からいくらか新雪が降り、気温がだいぶ下がった。悪天候のおかげで、森は薄く新雪をまとって、きれいな冬景色を見せてくれる。白駒の池から丸山にかけては、北八ツの森が深遠さを増し、一番きれいな所だと思っている。
それほど苦労もなく高見石に登れたのでホッとした。Mさんはスノーシューのクライムサポートが楽に登れると感心していた。ところが、それからが少々失敗だった。高見石に登っていてくださいとMさんに言って、私はトイレに入った。ところが、高見石へはわずかな登りだが、凍結していてMさんには危険だった。交替でMさんがトイレに入り、私は高見石を往復してみて、アイゼンが必要なことに初めて気づいた。

08:高見石から白駒の池

戻って、2人ともアイゼンを装着して、あらためて高見石に登った。白駒の池はきれいに見えたが、やはり風が強くてゆっくりと景色を眺めていられない。でも、ここからの白駒の池、北横岳方面、中山方面などの眺めは、北八ツを代表する風景ですばらしい。
戻って、またスノーシューに履き替えるが、Mさんはスノーシューをうまく履けずに苦戦していた。禁じ手だが、私がベルトを締めて装着してあげた。
高見石に約1時間もいてしまった。11時、デッドと考えていた時刻を回った。ここからおとなしく渋の湯に下山すればよかったのだが、予定通りに中山へ向かってしまう。

09:中山近くの凍りついた樹林帯
10:晴れ間がのぞいたが、これ以上は晴れなかった

中山に登るのは久しぶりだ。丸山周辺に比べると樹木は小ぶりなように思えた。森全体が新雪を凍りつかせて、砂糖菓子の森になっている。そこをスノーシューで軽やかに歩いて行く。思い描いたとおりの北八ツの旅になった。時刻が遅めなことを除けば。
思いのほか順調に中山も登り切った。Mさんはだいぶスノーシューに慣れたようだ。中山展望台に出ると、わずかに青空がのぞいた。相変わらず風が強く顔が痛い。しかし、すぐ樹林帯に入れば風は弱まるので、そんなに恐れることはない。

11:中山峠へ下る
12:四辻になっている中山峠

雪で白くなった稲子岳あたりの山腹が見え、中山峠へ向けて下っていくと、左側はちょっと急な崖地形のようになる。「左側が危険なので転倒しないようにしてください」と私。

13:黒百合ヒュッテに入りお茶休憩にした

中山峠には13時50分着。そこから10分以内で黒百合平に出る。ここでまたトイレ休憩だが、Mさんの希望で小屋内に入りお茶休憩にした。あとでMさんは、この休憩でとても助かったと言っていた。私自身は休まなくても歩き続けられるが、普通の人はピッチごとの小休憩だけではつらくて、大休止の時間が必要ということだろう。
小屋には30分ほどいたと思う。もう一度スノーシューを履いて、最後の下りをがんばってもらった。Mさんはバテることもなく、ほぼ予定時間どおり、しっかりと歩いてくれた。

14:橋を渡って渋の湯へ

Mさんのために考えた北八ツ縦走だった。もう1日後ろにずれれば晴天になっただろうが、新雪に飾られた北八ツの森もよかったと思う。高見石から渋の湯に下っていれば、時間に追われずに、もう少しゆっくりと歩けたはずである。中山まで足を延ばしたのがよかったかどうかわからない。しかし、Mさんは、とても楽しかったと言ってくれた。

[情報]
*麦草ヒュッテ、白駒荘は、(人気が高いからか?)週末の予約はとりにくい。青苔荘は比較的予約がとりやすいと思う。青苔荘も十分満足できる山小屋だった。
*渋の湯~茅野駅のバスは土日祝と年末年始の運行で、しかも本数が少ないため、雪山登山にはほとんど使えない。タクシーは約40分、約7800円。
*トレースがしっかり踏まれていれば、アイゼンで歩くのがノーマルになっている。私たちのようにメインルートをスノーシューで歩く人は少ないようだった。
*トレースは時々夏のルートからそれている。ある程度、地形図で現在地を確認する作業は必要。地形図を見ないと道迷いのリスクは大きくなると思う。

『雪山登山』の訂正点
(1)アクセス:茅野駅~ロープウェイのバス約55分、渋の湯~茅野駅のバス約57分(土日祝日のみ運行)。渋の湯~茅野駅のタクシー約40分、約7800円。
(2)マイカー情報:渋の湯~ロープウェイの回送タクシー約35分、約7600円。
(3)問合せ先:青苔荘、白駒荘の電話マークに「*」(要予約)を記入。高見石小屋の現地電話080-2188-4429、「白駒荘は正月明け~4月は予約時のみ営業」の部分を削除。
(4)地図中:白駒荘の記号を「営業小屋」に変更。

奥越・荒島岳 2022年3月11日

取立山の翌日は荒島岳へ。車で勝原(かどはら)登山口への移動は50分ほど、意外に近かった。
勝原ルートの標高差は1200m以上、コースタイム8.5時間の予想である。私の感覚では完全に中級の範囲、しっかりした基礎体力が必要・・・となる。ところが、現実には初級者と思える人も普通に登っているようだった。私の感覚が古くて現実と合わなくなっているのか、それとも現実のほうがリスキーになっているのか。
ともあれ、私自身は油断することなく、けっこう緊張して臨んだのだった。

01:旧スキー場跡にある、きちんと除雪された駐車場
02:最初はスキー場跡を登っていく。朝日がさし込み始めた

ここでも整備された無料駐車場が登山口にある。20台以上可能と思われるが、この日は平日にもかかわらず、満車状態になったらしい(後から登ってきた女性が言っていた)。
予定よりも少し遅くなったが、6時20分に登山開始。緩やかに見えるスキー場跡を登っていき、上に行くにつれて傾斜は強まる。見た目よりもきつい。最上部で登山道跡に乗り、右斜上してジグザグを2回くり返すと広い尾根上に出る。ここでひと休み。標高差240mほど登った。多くの人に追い抜かれたが、若い登山者が多くみんなペースが速い。ひと昔前の中高年主体の山ではなくなっている。

03:きれいなブナ樹林帯の登り

細い二次林の樹林帯に入り、30分ほど登るとブナ林に変わった。谷を隔てて遠くに見える小粒な雪山は荒島岳ではなく、小荒島岳だった(後で調べた)。ブナがどんどん立派になっていき、やがて大きな古木も見られるようになった。上部よりも中腹のほうがブナ林は見事だった。
樹林帯に入ってから標高差300mほど登ったところで、木の間越しに白山が見えた。そのずっと左手には目立った白い尖峰が見えるが、経ヶ岳という地元の名峰らしい(これも後で調べた)。ここでロープを結んだ男性2人が登ってきて、リーダー氏「あの山は何ですか?」と聞かれたが、「まったくわかりません」と私。後で調べようと、彼は写真をひととおり撮っていた。

04:シャクナゲ平の斜面にかかると、早くも下ってくる人がいた

まだまだ先は長いが、尾根の傾斜が緩くなって歩きやすくなった。やがて平坦で広い一帯に出ると、前方に高くて大きい荒島岳が見えた。他のどのピークとも違う、圧倒的な存在感でそびえ立っている。尾根は右にカーブして主稜線へと向かい、シャクナゲ平の急斜面にかかった。標高差約100mの急登をがんばると、ピーク手前でトレースは左へ曲がり、鞍部へと続いていた。そこに、先ほどから前後して歩いていた単独行の女性(この人も初級者っぽい)が休んでいたが、私はもちが壁の下まで行って休憩にした。

05:もちが壁の下。正面を避けて右に迂回するトレースが踏まれていた
06:もちが壁最上部から抜けようとする単独行の女性

もちが壁はこのコース唯一の危険箇所になると予想していたが、急斜面を右側に巻いてトレースが踏まれているので簡単そうに見えた。しかし、念のために片手をピッケルに持ち替えて向かった。転倒すればかなり下まで流されると思えば緊張感が高まる。
すぐ上を先ほどの女性が登っていた。もうすぐ上へ抜け出そうという所で声をあげ、「ええっ!こっちでいいですか」そこはトレースがはっきり2つに分かれている。「そっちでいいですよ。左は下っている別ルートだと思います」と答えた。見ず知らずのオジサンに聞くって・・・しかも、この危ない場所で。

07:山頂へ続くきれいな雪尾根。何段もの登りを続けていく
08:山頂直下。登りはあと2段あるようだ

上へ抜け出すとほとんど樹木のない雪尾根になり、遠くまで点々と登山者が登っているのが見える。頂上までまだ標高差300m近く登る。
しかし、もう展望は全開なのであった。晴れる予想を立てて来たのだが、何という幸運、またも晴れてしまった。最高のロケーションの中を登りながら、体は苦しく、いっぱいいっぱいなのであった。一段登ればまた次があり、それを4~5回くり返して、ようやく頂上に着いた。12時20分。先ほどの単独行の女性は、出会った別の女性と意気投合したようで、仲良く並んで腰を下ろしている。「去年の夏に山登りを始めた」との会話が聞こえてきた。「私は2年前、冬山は去年から」とか言っている。

09:山頂の人たち。白山、経ヶ岳が見えている
10:白山方面:右から別山、白山・御前峰、大汝峰、七倉山、四塚山、加賀禅定道の稜線、その下に赤兎山
11:飛騨側に続く山なみ。左の山は縫ヶ原山というらしい

多数の人はもう下ってしまい、おかげでゆっくりと静かな頂上を楽しめる。春霞で山々の輪郭はぼやけてしまっているが、白山は南側から見るようになり別山を従えている。北方には大長山や経ヶ岳、前日登った取立山らしい小ピークも見える。南の岐阜側にも、名前はわからないが、累々と山ひだの連なりが続いていた。

12:経ヶ岳方面:右から大長山、北岳、経ヶ岳、湯谷山(経ヶ岳の右下)、中岳、釈氏ヶ岳、取立山(奥の白いピーク)、法恩寺山など

13時すぎ、下山開始。360度の大きな展望のなか、大野盆地に向かって飛び込んでいくような爽快な下りだが、転倒しないよう気をつけなければ。
もちが壁の下りにかかると、この展望ともお別れである。代わってブナの美しい樹林帯に囲まれながら、まだまだ気持ちのよい山の時間を、エンディングまで楽しめるのだった。のんびりと約3時間で下り、登山口駐車場に到着した。

13:ブナの温かそうな木肌。穏やかな気持ちになる
14:旧スキー場上部から野伏ヶ岳方面(左奥)、右は野伏ヶ岳南方のP1609と思われる

この地方の山は、本格的な雪山ルートでありながら、好条件をとらえれば日帰りで登頂できる。北アルプスなどと比べると取り付きやすく、スノーシューやスキーを使った登山にも向いている。首都圏からは遠いが、複数のルートをハシゴして登ったり、観光も適度に組み合わせれば、楽しみが広がるのではないだろうか。

[情報]
*国道158を東へ進み、勝原駅入口を過ぎて約1.2kmで右折し山側の車道へ入る。約200m先の終点に駐車場、トイレ(冬期閉鎖中)、登山届投函箱がある。
*登山口の駐車場が満杯の場合、大野市では五箇公民館(勝原駅の隣)の駐車場を利用するよう推奨している。
*もちが壁は正面寄りに登ればかなり急傾斜だが、今回は右側から回り込むトレースがあったため簡単に登り下りできた。
*森林限界はもちが壁の上で、森林限界を超えた区間が長いので、悪天候時にはリスクが大きい。上部では東側(山頂に向かって左)に雪庇が出ている。

『雪山登山』の訂正点
(1)マイカー情報:駐車スペースの台数を「約25台」に訂正。満杯の場合は勝原駅隣の五箇公民館駐車場へ。
(2)地図:登山口付近(スキー場跡)の図を現状に合わせて修正。駐車場の位置も移動

奥越・取立山 2022年3月10日

日本海側に近い福井の山は、多雪のため冬には簡単には登れないはずだが、そのなかで取立山は比較的登りやすいので人気があるようだ。(1)近くを国道157号が通りアプローチがよい、(2)標高差700m程度なので初級者も可能、(3)特別な危険箇所はなし、というありがたい雪山である。

01:登山口の無料駐車場、きちんと除雪され管理されているようだ

前夜発で遠路はるばる車を走らせてきて、9時前に駐車場着。きれいに除雪された無料駐車場は25台ほど可能、とてもありがたい。パトカーが来て車のナンバーをチェックし、遭難対策をやっている。雪山も含めて取立山登山の価値を地元が認め、大切に維持されている証しである。登山者は感謝しなければ。

02:「東山いこいの森」の林道終点付近の広場、頭上は西尾根末端

多くの人は最初からアイゼンだが、私は最初は登山靴のみ。40分ほど登って、せっかく持ってきたのでスノーシューをつけた。無雪期の林道終点広場(駐車場?)と思われる場所まで登るのに1時間30分ほどかかった。(予定は1時間10分だったが・・・)

03:最も急な箇所は登り切ったが、まだ急な尾根がしばらく続く
04:緩やかな尾根に出るとすばらしい展望が広がった

頭上に見える取立山西尾根末端へ約150mの急登が始まった。スノーシューはきついのであきらめて、アイゼンにチェンジ。このとき早くも下ってくる若いグループがいた。
急斜面を右斜上ぎみに登り切ると、トレースは左にカーブしてなおも急な尾根を登り続け、標高1100mぐらいからは緩やかな登りになる。後ろに特徴的な雪山が見えるが、越前甲(越前大日山)、加賀甲、大日山(加賀大日山)というようだ。

05:取立山への最後の斜面が立ち上がる
06:登り切って細くなった稜線、右(南)側に雪庇が出ていた

広く緩やかな、尾根というより雪原上を気分よく歩いてゆく。太い木は1本もなくなり、山スキーやスノーシューで散歩するのによい疎林の雪斜面だ。もう一度傾斜を増した斜面を一段登ると、尾根はやや細くなり右から左へカーブする。右側にはそれほど大きくない雪庇が出ていた。そこを登り切れば頂上で、何人かの人が腰を下ろして山を眺めていた。

07:山頂で休む人たちと白山連峰
08:取立平と白山、右から御前峰、剣ヶ峰(三角の突起)、大汝峰、白山釈迦岳(大汝峰手前の低いピーク)、七倉山、四塚山

期待した通りの展望が一気に開け、白山がドーンと構える。眼下には取立平の平原、そこを区切る低い尾根が白山の前景を一部塞いでいるが、それはそれで調和した風景である。
どうにもすばらしく、神様が造った奇跡の風景としか言いようのないものだった。この風景を見られたことに感謝しかない。もちろん晴れを計算して来たのだが、運がよく本当に晴れてくれた。
白山以外は山名がわからないが、加越国境の大長山、赤兎山、奥越の経ヶ岳、荒島岳も見えるようだ(あとで写真を見て調べたが、荒島岳はわからなかった)。

09:大長山方面:中央が鉢伏山、奥に小さく大長山、その右に1500Pと烏岳、さらに右に赤兎山が見えた
10:大日山方面:中央の高い山が加賀大日山、左に加賀甲(大日山稜線の左角)、越前甲(手前の丸い山頂)、1135P(左の突起)
11:経ヶ岳方面:右から経ヶ岳の中岳、経ヶ岳、北岳、市境稜線の1421P

頂上には40分ほどもいた。取立平へ下ってこつぶり山へ行けば、また違った角度で白山が見られると、行ってきた人が話していた。

12:楽しそうに下山する人たち

14時下山開始。目標がすべて達成できたようで、とても気分がよい。登りの苦労がうそのように足取りは軽く、2時間ほどで駐車場に戻った。

[情報]
*メインの登山口駐車場はトンネルを抜けてすぐ左側にある。25台ほど可能。一角に公衆電話がある。ほかにも国道沿いに駐車可能な場所がある。
*取立山往復でも十分だが、余裕があればこつぶり山を往復するとよい(約25分)。
*中~上級者向けの周回ルート:(1)取立山~ゴマンド山~谷峠、(2)取立山~大長山~小原峠~滝波川(1泊2日?)

『雪山登山』の訂正点
(1)地図中、P記号を国道の上側へ、「東山いこいの森」の文字を国道の下側へ移動
(2)林道をショートカットした歩行ラインを破線で記入する

大山 2022年2月26日

01:南光河原駐車場の登山口。車道に沿ってアイゼンで歩けるトレースが踏まれている

前日の石鎚山からの移動は長く、登山開始は8時過ぎになってしまった。土曜日で、登山者が次々に入山している。私の古い考えだと、冬の大山は雪山のハウツーを身につけた中級以上の人でないと登れない(リスクが高い)と思っていたのだが、現実はそうではなく、いかにも初級者という感じの人が普通に入山している。でも、これは想定内だったし、条件のよいときは問題ないというふうに判断しているのだろう。

02:三~四合目のブナ樹林帯。下部では晴れているが、大山の中腹以上が雲におおわれていた

私の歩くペースは遅く、1時間20分ほどかけて最初の標高差250mを登った。登山口付近は針葉樹が多かったが、しだいにブナを中心とした林相に変わり、新雪をまとった樹林帯が美しい。ただ急いで登るだけではもったいない。

03:五合目で小休止する人たち。東側の展望が開ける

さらに1時間で五合目に着いた。元谷に分岐するルートにはトレースがなかった。このすぐ上が森林限界のようだが、大山は森林限界がかなり低い。
森林限界に出ると急に風が強まるが、時おりガスを通して日がさしかけたり、青空がうっすらとのぞいた。こういう時は雪雲が薄いので、しばらくすると晴れてくるかもしれない。おびただしい数の登山者が列をなして登る。そして、早々と降りてくる人も。上はこんなもんじゃない、もっと風が強いよと言い下っていった。

04:人だらけの六合目、強風が顔に痛い。左下の人だかりは避難小屋前
05:八合目付近(手前?)、急斜面をもうすぐ抜け出すところ

さらに30分ほどで六合目。避難小屋が完全に雪の下になっている。強風が痛く吹きつけるが、厳冬期ほどではない。頭上に見える白いピークは八合目付近だった(登っているときはわからなかった)。最も急傾斜になる箇所をノロノロと登った。若い人たちが次々に追い抜いていくが、そのつど脇によけて小休止できる。最後は、高齢のご夫婦か、遅出で後から登ってきた人が残った。ガスと強風でご夫婦は厳しそうだ。

06:頂上台地の一角に出ると青空がやってきた。幸運としか言いようがない

だが、ここを登り切ると、とうとう晴れがやってきた。雪山でこういう経験は何度もしてきたように思う。ペースが遅かったのがかえってラッキーになる。
八合目から九合目、広大な大山の頂上台地に出た。悪天候時にはルートロストの危険があることがよくわかる地形だ。すでに下山した人も多いからか、思いのほか混んでいない。

07:弥山頂上
08:頂上避難小屋は7割ぐらい雪に埋まっていた(こちらが風下側)

12時30分ごろ、10数人が休んでいる弥山避難小屋に到着。小屋は7割方埋まって、頂上側と九合目側の両方から入口が掘り出され、入ることができるようだ(実際には入らなかった)。すぐ裏手の頂上に登ると、有名な剣ヶ峰の頂稜が飛び込んでくる。文句なしに格好良く、雪の大山を象徴する眺めである。

09:弥山の三角点頂上から剣ヶ峰、右下槍ヶ峰、左下矢筈ヶ山
10:三角点頂上から北東方向、右から矢筈ヶ山、甲ヶ山、三鈷峰、北壁終了点のクライマー

稜線を少し進んで三角点ピークまで来ると、剣ヶ峰を正面に、北壁を足元に眺められる展望台である。北壁にはバリエーションを登る人たちが固まっている。ここでしばらく写真を撮った。
小屋へ戻り、行動食をまとめ食いした。今ここにいるのは、遅く出発してきた人、ペースが上がらずに遅れて着いた人、北壁登攀を終えてきた人である。多くの登山者はもう下ってしまった。
頂上での時間に満足して、13時10分下山開始。九合目近くで、写真を撮るためかフラフラと稜線の端へ歩いていく男性がいたので、小走りに近寄り、「あまり端に行くと危ないですよ、雪庇なので」と注意した。男性は驚いた様子だったが、コクリと小さくうなずいた。伝わったか心もとなかったので、もう一度「雪庇が出ているので」と言い、それ以上は関わらずに通過。見ると、雪庇の上にいくつか足跡があった。私にとっては(ちゃんと雪山をやってきた人ならだれでも)考えられない行為である。
ルートには標識となるプラスチックの細いポールが立っているが、本当はこの風上(西)側が安全ラインなのだろう。トレースはそのすぐ風下(東)側に踏まれていた。すでに少し危険を冒しているわけである。

11:六合目からの大山北壁
12:六合目からの三鈷峰、左端甲ヶ山、手前に宝珠尾根

すっかり晴れ上がった。大山北面の全貌と、米子あたりの平野と街並み、日本海までが広々と見渡せる。すばらしい景観のなかを自由な気持ちで歩いていく、幸せな下山となった。

[情報]
*冬の気象が一番のハードルだが、ルート自体は滑落などのリスクは少ない。好条件であれば初級者でも安全に登れて、第一級の雪山登山ができるルートである。
*駐車場は登山口近くに南光河原駐車場(58台)、バス停近くに大山博労座駐車場(600台)がある。冬期は1日1000円、3/7以降500円。
*上記が満車の場合、米子側3.4kmの所にある槇原駐車場(1530台、無料)が利用できる。シャトルバスで登山口に移動するため、入山時刻が遅くなってしまう。
*路線バス、タクシー、高速夜行バスも利用できる。

『雪山登山』の訂正点
(1)岡本さんのコースタイム設定は厳しいと思う。登山口~六合目間は登り2時間10分、下り1時間30分に修正。合計6時間30分。
(2)タイトル下の日程:日帰り/約6.5時間
(3)アドバイス:頂上避難小屋の入口は、頂上側と九合目側の両方にあった。メインは九合目側のようで、赤・白のポールが立っていた。
(4)アドバイスに追加:登山届はバス停付近以外に、南光河原駐車場にも投函できるポストが設置されている

四国・石鎚山 2022年2月25日

01:成就の石鎚神社、正式には石鎚神社中宮成就社

ロープウェイの始発は8時40分、最終は17時、雪山用に多めに見積もったコースタイムは6時間余りである。時間内に戻って来られるかが問題だった。
30分以上かかって(遅い・・・)成就に着いた。旅館が2~3軒あると聞いていたが、荒廃してひっそりしているし、営業しているかわからない。本当はここに前泊して、早朝から登り出すのがよかった。

02:八丁鞍部、ルート中標高が最も低くなったところ

神門をくぐってゆるく下っていくと、しばらくで八丁鞍部に着く。この区間はブナの古木が多い見事な植生の森だった。途中から雲が取れて、石鎚山の一部が見えるようになってきた。前社森への急登が始まる手前でアイゼンをつけた。一段登ったところで、早すぎる気もするが休憩にした。標高1470mのあたり。

03:前社森休憩所、いちおう入れるようになっていた
04:登りの途中から見えた瓶ヶ森(左)と笹ヶ峰(左)

前社森(ぜんしゃがもり)の岩峰を左に回り込んで通過すると、細い稜線上に休憩所があるが、人はなく休業中である。その先のピークを右寄りに巻き上がっていくと、水平なトレースになり夜明峠(よあかしとうげ)に出た。石鎚山が全面に広がって、左右にゴツゴツとした岩稜を伸ばす様子は独特だ。猛禽類の広げた翼を連想させる。

05:夜明峠から見上げる石鎚山はすばらしい。岩峰は右から弥山、天狗岳、南尖峰
06:二ノ鎖迂回ルートのハシゴ、急斜面の途中に架けられているうえ長く続く

ここからの標高差300m余りが核心である。二ノ鎖小屋で片手をピッケルに持ち替え、不安な場所では(山側に)ピッケルをしっかり挿して進むことにする。ルートは右に大きく迂回して、急斜面に架けられたハシゴや桟道を伝っていく。転倒したら事故になるリスクのある場所なので緊張した。とても危険である。場合によってはロープを使うこともあるのではないだろうか?

07:山頂の石鎚神社(弥山頂上)、すばらしい天気になった
08:二ノ森(中央)、鞍瀬ノ頭、右の白い平らなピークは堂ヶ森、左遠くに五代ヶ森
09:天狗岳、すぐ左遠くに手箱山、左の尖峰は岩黒山
10:左から、笹ヶ峰、瓶ヶ森・女山、(男山の後ろ)西黒森、冠山、平家平(白いピーク)

三ノ鎖も右斜面からの巻きルートで通過するとすぐ頂上山荘の横に出た。13時23分。日は高く上ってしまったが、最高の天気、すばらしい展望。ちょっと迷ったが、帰りの時刻が心配なので、最高峰の天狗岳の往復はしないことにした。無事に登れたことに感謝して、15分ほどで頂上を後にして下山開始した。

11:下山する登山者、ガイドと男性の2人

13時40分頂上、14時10分二ノ鎖小屋。ガイド登山の2人組が、ペースの上がらない私を追い抜いていった。若い男性と、中年の男性ガイド。手にしていたロープをザックにしまうようだ。ガイド氏は「クライミングもやったほうがいいよ」と、若いお客さんにアドバイスしていた。

12:八丁鞍部~成就間で、ルート沿いのブナ林が美しい

14時40分夜明峠。おそらく本日最後の単独男性が、私を追い抜いていった。あまり急がずに、ゆっくり下山しようという人のようだった。時間があれば私もそうしたい。
15時53分八丁鞍部、16時31分成就。ギリギリでロープウェイ最終に乗ることができた。天狗岳を往復していたなら、もっと忙しくなっていただろう。

[情報]
*ロープウェイは、冬期は8:40~17:00の運行(元日以外)。体力的に弱い人は日帰りは厳しい。成就に前泊すると余裕をもって歩ける。
*成就社では白石旅館のみ通年営業で、ほかの旅館は冬期休業となっている。白石旅館は休憩所(茶店)も営業していた。
*二ノ鎖、三ノ鎖は、巻きルートにトレースが踏まれている(直登ルートはトレースがなく一般的でない模様)。転倒すると長い距離を滑落するリスクがあるので慎重に。初級者にはロープ使用も検討したほうがよい。

『雪山登山』の訂正点
(1)成就で冬期営業している旅館は白石旅館のみで、その他は季節営業(冬期休業)となっている。P239キャプション3行目、アドバイス欄、地図中の成就をさすネームを変更
(2)追加情報欄:「トイレは12~3月使用不可」->「トイレは冬期使用不可」(今年は11/17~4月下旬使用不可、年により変わる)

比良・武奈ヶ岳 2022年2月12日

■晴
4日前にも武奈ヶ岳西南稜ルートに来たが、出発が遅すぎたため(11時30分発だった)時間が足りなくなり、御殿山手前で引き返した。今日は2回目。もっと早立ちしたかったが、駐車場7時50分発になってしまった。

01:登山届入れと遭難情報掲示

曙橋を渡って、国道を上流側に少し進むと右側に公衆トイレがあり、ここで右折。右に比良山荘を見て、地主神社に突き当たる。神社の左角で明王谷沿いの林道と、明王院への道が分かれる。明王谷沿いのほうに遭難情報の掲示と、登山届の投函箱がある。
赤い橋(三宝橋)を渡って明王院の前を通過すると、武奈ヶ岳の登山口がある。いきなり急登が始まり、高差100mほどを一気に登る。土の道だが、早朝は凍って滑りやすい。登りきると小さな平地になり、トレースが左右に分かれるが上部で合流する。今年はこの付近から完全な雪道になって、アイゼンをつける人が多いようだった。
尾根道をぐんぐん登っていくと、標高670mあたりで針葉樹の大木(モミの木と思われる)が目立つ場所になる。この付近から上部は雰囲気のよい自然林に変わっていく。

02:ちょっと急でいやな所。左から2番目の人が話しかけられたおじさん

03:自然林の尾根道、ここは御殿山に近い所

標高700mあたりで左へのトラバースになり、雪が剥がれて凍土がむき出しになった箇所を右に折り返す。トレースが不安定で滑りやすく、ちょっと緊張させられるかもしれない。このあたりが最も傾斜が急になる箇所だった。右上へ斜めに登ると尾根上に出たところに道標があり、下降時に直進しないように、進入止めのロープが張られている。
御殿山まではまだ長いが、尾根の傾斜が緩くなるのでだいぶ楽になる。標高860m付近から地形図の破線記号は右の沢筋に迂回しているが、トレースは尾根通しに登っていた。

04:御殿山山頂の人たち
05:御殿山から西南稜を前にした武奈ヶ岳

12時ごろ、御殿山に到着。遅すぎるけれども、これが自分の現実である。武奈ヶ岳と西南稜がいい姿に見える。
朝、「いい写真、撮れましたか?」と声をかけてくれたベテランらしいおじさんが、コンロを使って昼食中だった。「もう限界だな、御殿山で十分だろ・・・」自分に納得させるようにブツブツ言っていた。そうなんだな、急がなきゃと思い、武奈ヶ岳の写真を撮って、休憩もそこそこに出発した。
最初のピークの登りで、おじさんに追い着かれ、ふたたび追い越されることに。やっぱり行くことにしたのか、刺激してしまったかな・・・こんなときに言葉をかけて、大人のコミュニケーションをとらないのは、自分の悪い所だと思う。

06:西南稜を気持ちよく歩く

ワサビ峠からの西南稜は多量の雪におおわれて、ところどころ小さい雪庇もある美しい雪稜だ。ほとんど危険はないうえ、雪山登山の雰囲気がしっかり味わえてすばらしい。今日のような好条件でこのルートを登ったら、雪山登山が一発で好きになるだろう。

07:山頂が間近に迫る
08:山頂につどう人々
09:山頂から琵琶湖、伊吹山(左)、霊仙山(右)

13時17分、武奈ヶ岳山頂に到着。またも琵琶湖がすばらしい。対岸に伊吹山、霊仙山の白い山頂がくっきりと浮かんで、そこを中心に奥美濃、鈴鹿山脈の膨大な山々が取り巻いている。広大な濃尾平野と、伊勢湾らしい広がりも見える。けっこう遅い時刻だったが、山頂には多くの人がいて、晴天の雪山を時間の許すかぎり楽しんでいた。

10:西南稜を下る

[情報]
*関西を代表する雪山入門ルート。入山者が多くトレースが踏まれていることが多い。ワサビ峠~武奈ヶ岳の西南稜はすばらしい雪稜歩きが体験できる。
*西南稜以外にも多くのルートがとれる。スノーシューまたはワカン歩行(地図読みを含む)のよい練習になると思われる。
*地主神社前は以前駐車スペースとして紹介されていたが、現在は駐車禁止。
*葛川市民センター前に大きな無料駐車場があるので登山者は助かる。本ルートの人気は駐車場の影響が大きいと思われる。愛好者を集めるために重要なことである。

『雪山登山』の訂正点
(1)出町柳駅~朽木学校前(京都バス)は冬季を除く土休日のみ、1日1便運行。堅田駅~細川(江若交通)も冬季を除く土休日のみ、1日1便運行。どちらも雪山登山には利用できなくなった。複数人数ならタクシー利用がよい。堅田駅~坊村約50分、約8700円。近江タクシー堅田☎077-572-0106 ※アクセス欄を変更
(2)地主神社前の駐車は禁止されている。曙橋を渡った葛川市民センター前に無料駐車場(約80台)があり利用されている ※マイカー情報欄を変更
(3)地図中のP記号を安曇川対岸へ移動、国道の該当箇所にトイレ記号を追加

伊吹山 2022年2月11日

■快晴

01:正面登山口、夜間でも停められる無人駐車場は4~5台のみ

自分の体力不足をカバーするため早立ちをすることにし、5時前に登山口に着いた。ところが、登山口前の駐車場はもう塞がっていた。見ると帯広ナンバーとかでびっくり。当てにしていた向かい側の駐車場はチェーンが張られて入れない。旧ゴンドラ駅跡に上がれば駐車場があるらしいが、そこへ行く車道は、除雪後の残雪で道幅が狭まっているうえ、路面が凍結していて、私の運転テクでは怖くて入れなかった。
少し引き返して、高橋さん宅の駐車場に置けないかと見ると、スペースに「予約」と書いた札が置かれている。予約が必要なのか? その向かい側のお宅にも「駐車400円」と看板があったので、意を決して車を入れ、勝手に停めさせていただいた。あとは帰りに何とかしよう。駐車のためにだいぶ時間をロスしてしまったが、5時50分ごろ、何とか暗いうちに歩き出すことができた。

02:三合目から伊吹山南面が大きい

6時25分、一合目の伊吹高原荘に到着。ここから旧スキー場とのことで、展望が開けて気持ちがよい。なるべく楽に登れるようにと、少し登った所でアイゼンを装着した。
8時34分、三合目の廃業したレストランの建物を過ぎて、トイレ(冬季閉鎖)の所へ。このあたりから伊吹山南面が正面にそびえたち、直登ルートの全貌が望まれる。六合目の避難小屋がすぐ上に見える。それにしても雪崩の通り道としか思えないラインである。

03:五合目付近、琵琶湖がすぐ近くに見える
04:五合目付近、左上に六合目避難小屋
05:八合目付近、傾斜が最もきついところ

ここからは大量の登山者に追い越されるが、とにかく両脚けいれんなどで潰れないように注意を払いつつ、休み休み登った。11時36分、急斜面を登り切って九合目に到着。ここは頂上台地の一角で、あとは頂上台地を散歩するだけだ。

06:九合目付近から琵琶湖方面、比良山地
07:ヤマトタケル像のある山頂

快晴、春の天気になったが、それでもまだまだ寒い。冬型の天気になったら大変だろうなと想像しながら、右手の山頂へ向かう。山頂のすぐ手前に、避難小屋として使える建物(松仙館?)が一部開放されている。その後ろに山頂標識とヤマトタケル像がある。

08:奥美濃の山々(1)
09:奥美濃の山々(2)白山かもしれないが・・・

山頂から北側、北の弥勒堂、一等三角点、南の弥勒堂と巡った。北アルプスは雲に隠れて見えないが、奥美濃の山々がいろいろ見えているようだ(山名など全くわからない)。御嶽山は独立して見えたが、乗鞍岳らしい山は確認できなかった。

10:西端のピークから琵琶湖を眼下に

山頂前の広場で琵琶湖を眺めながら10分ほど昼食。それから九合目へ戻り、西側のピークへ(三ツ頭・雨降岩)。ここは眼下に琵琶湖が一望できてすばらしい。ここから滑降しているシュプールはすごいと思った。最上部の傾斜は40度以上あるように見える。

11:六合目避難小屋

下降開始13時5分、約1時間で六合目の避難小屋着。ここからアイゼンを外し、さらに約1時間30分で登山口に戻った。遅いペースながら順調にこなすことができた。

12:旧ゴンドラ駅近くにある駐車場。現状ではここが一番便利

山頂付近で出会った多くの人が「今日は最高の条件」「これほど山が見えるのは珍しい」と言っていた。山は多くの人を幸せにする力があるのだなと、改めて思った。

[情報]
*六~九合目は、一定量以上の降雪後には、雪崩の発生する可能性が高いと考えられる。完全なトレースが踏まれたあとは、雪崩のリスクは軽減されたと判断してよいかもしれない(断言はできないが)。六合目でスノーテストをするとよい。
*六~九合目は雪質が硬ければピッケルが必要。ポールでは滑落に対処できない。
*登山口の細い車道を上がった旧ゴンドラ駅跡に大きな有料駐車場があり、料金も300円と安いうえ、夜間も停めることができる。しかし、今年は雪が多いためか、残雪から溶け出した水で夜間は路面が凍結していた。夜間に停められる駐車場は限られるので、問い合わせたほうがよい(朝発なら問題ない)。

『雪山登山』の訂正点
(1)伊吹山ゴンドラは廃止されました。スキー場のリフトも運行されていません
(2)近江長岡駅からのバス(長岡登山口線)は、12~4月は土日祝日運休となりました。長浜駅からのバス(所要46分)は冬季も運行されています

鈴鹿・霊仙山 2022年2月9日

■晴
霊仙山は、鈴鹿山脈の最北に位置する山で、初級雪山ルートとして紹介されることが多い。鈴鹿の中では雪が多いのだろうと予想していた。
入谷の橋を渡った先に、先行車が2台停めてあったので、ショベルで雪を削り広げて隣に停めた。心配していた駐車を、これで何とかクリアできた。

01:今畑登山口、登山届の投函箱がある

車道を落合方向へ10分ほど歩くと、左に作業小屋があり、そのすぐ先に登山口の道標があった。登山届の投函箱が壊れていて、提出しても横風が吹いたら飛ばされそうだ。ちゃんと取り扱ってもらえるのか心もとないが、用意してきた登山計画書を入れておいた。
不明瞭なトレースを登り出すと、落合の方向から男性がやってきた。やはり、そちらによい駐車場所があったのか。トレースは迂回して右にトラバースし、下から別の明確なトレースが合流した。こちらが正規ルートなのだろう。それからは登りやすくなった。

02:廃村のお寺
03:下部樹林帯、雪たっぷり

今畑廃村のお寺の前を通り、トレースが乱れて変な所へ迂回させられ、また正規トレースを探し当てて戻った。廃村裏の山道に入るとあとは迷うこともなく、尾根の一端に登り着いた。標高差150mぐらいしか登っていないが、もう体(特に両脚)がつらい。

04:西南尾根末端の急斜面
05:急斜面を登って行った軽アイゼンの女性
06:西南尾根から、初めて頂上方面が見える

笹峠の小広い雪原にたどり着いた。登山口から約3時間もかかっている。正面に見える白いピークは西南尾根の末端で、霊仙山はまだずっと先である。樹林帯を高差50mほど登り、雪の急斜面に取り付いて、さらに250mほど急登する。若い男性1人、少し若い女性1人に追い越された。女性は「なかなか進みませんねぇー」とひと声かけると、ひょこひょこと過ぎていった。たぶん雪用ではない靴に、モンベルの軽アイゼン。
一番急な所を越えても、少し傾斜が緩んだ斜面がまだまだ続いた。登り切った付近が近江展望台らしい。休み休み登って2時間以上かかった。体力不足が大問題だが、本当に歩けなくならないように、気をつけなければいけない。

ここで初めて、はるか遠く霊仙山の頂上台地が見えた(見た目ほどには遠くなかった)。鈴鹿北部の山々が周囲にズラッと見える。左側には広々と琵琶湖。この尾根は琵琶湖をすぐ横に見ながら登れるルートなのだ。
特徴的なブッシュが出ているが、名前がわからず残念。ブッシュが出ているぐらいだからそれほど多雪ではないのだろうが、高木のない石灰岩台地だから、全面的に白い雪に覆われて、豪雪の雪山と同じような風景に見える。すばらしい雰囲気の雪山ルート。

07:P1036手前から山頂方面。右最高点、左三角点、中間が経塚山分岐のピーク

トレースは地形図のP1036手前から左の沢に下り、沢底から霊仙山最高点(P1094)と三角点(P1084)の両方に分かれていた。プラス20~30分程度で周回できると思うが、時間ギリギリであまり遅くなるのも危険なので、今回は最高点の往復だけにした。

08:最高点ピーク、後ろは伊吹山
09:山頂付近での雪景色
10:西南尾根から山頂をふり返る(16時すぎ)

下りは、笹峠でほぼ暗くなり、途中からヘッドランプをつけた。最後の30分ほどをヘッドランプで歩くことになった。
基礎体力が必要だが、技術的に難しい所はほとんどない。人気があるのも納得できるよい雪山ルートだった。駐車スペースが少ないのが残念である。

[情報]
*雪山登山の要素がしっかり味わえる山。難易度は武奈ヶ岳より少し高い。
*トレースがないか、または不明瞭な場合に備えて、スノーシューまたはワカンがあったほうがよい。頂上一帯はスノーシューなどで雪上散歩が楽しめる。
*山頂は3つのピークがあり、西側の三角点ピークが正式の山頂、東側に最高点がある。中央の1070mピークからは経塚山、汗フキ峠を経て落合に下山できる。
*公式に認められた駐車場所はなさそうである。入谷~落合間に2、3カ所駐車可能なスペースがあるが、地元の迷惑にならないよう注意。ツアーやガイドの場合は、彦根駅からタクシーを利用するのがよいと思う。

『雪山登山』の訂正点
(1)登山口に「落合・西南尾根登山口」の標識はなくなっており、現在は、立ち木に「今畑登山口」の標識が付けられている。文中の「落合・西南尾根登山口」は今畑登山口に変更したほうがよい。本文上段13行目、参考タイム、追加情報、に該当箇所あり。地図中「落合・西南尾根登山口」も「今畑登山口」に訂正
(2)駐車可能なスペースは2~3カ所あるが、いずれも狭く、除雪車の雪捨てや折り返しに使われているかもしれないので注意