[2月]バックカントリー?遭難多発

[2月の遭難関係ニュースから]
2月の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

1月末ごろから始まっていましたが、2月以降はバックカントリー?の遭難が多発しました。
「バックカントリー」は説明が必要でしょう。山岳地をおもにスキー、スノーボードなどで歩き、登り、滑走するのがバックカントリーです。スノーシューで歩くのもバックカントリーですが、登山靴になると、なぜか「雪山登山」になってしまいます。昔なら「山スキー」「山岳スキー」と呼んでいました。
上記のように「?」を付けているのは、同じような形の遭難事例の中に、スキー場の管理コース以外の場所を滑走する「コース外滑走」「管理区域外滑走」でのものが大変多いからです。これらは厳密にいって、バックカントリーのジャンルには含まれません。
2月中に当方がリストアップした遭難事例は49件でした。バックカントリー?での遭難は21件、その中で「コース外滑走」と思われるものは9件です。それらは、説明文の中になるべく「コース外滑走」という言葉を入れるようにしています。しかし、遭難の起こり方を詳しく調べないと、バックカントリーか「コース外滑走」かを、きちんと確定できない場合もあります。

2/1B(土)北海道ピンネシリ岳南斜面でイギリス人男性(34)が滑走中雪崩に巻き込まれる。病院で死亡
2/1B(土)乗鞍岳北東斜面で男性(47)がハイクアップ中に滑落し雪崩に巻き込まれる。ヘリ搬送後、病院で死亡
2/2(日)蔵王・熊野岳方面で中国籍男性(36)が「御釜を見に行く」と山頂駅を出発し戻らず。2/16未発見
2/2B(日)志賀・焼額山スキー場で男性(59)が仲間とコース外を滑走中、疲労のため戻れなくなる。中野署員が救助
2/2(日)八ヶ岳権現岳山頂付近で男性(45)がクライミング中に25m滑落し首を脱臼骨折。1.5H後防災ヘリが救助搬送
2/2B(日)北アルプス八方尾根で女性(62)がガイドらとスキー滑走中に転倒負傷。県警ヘリが救助
2/3(月)蔵王・熊野岳で台湾籍女性(34)が「山小屋に避難している」とSNSに送信して下山せず。2/4発見救助
2/4B(火)北アルプス乗鞍天狗原で男性(35)がガイド同行でスキー滑走中、雪崩に巻き込まれ負傷。県警ヘリが救助
2/5(水)延岡市北浦町の山林で男性(87)が山へ木を伐りに出かけて戻らず。道路脇の崖下に転落した遺体発見
2/7B(金)北アルプス栂池高原スキー場で男性(22・20)がコース外滑走中、道に迷い行動不能。大町署などが救助
2/8B(土)志賀高原寺子屋スキー場で男性(55)がコース外滑走中、道に迷い戻れなくなる。中野署・遭対協が救助
2/9(日)古賀志山(宇都宮市)の岩場を家族5人で下山中に、子供が怖がって動けなくなる。警察・消防が付添い下山
2/9(日)原不動滝(兵庫県宍粟市)で男性(34)が「滑落して木に引っかかっている」と通報。2/10滝壺で遺体発見
2/10B(月)羊蹄山へ単独で入山した男性(34)が戻らず、翌日1150m地点に埋まった遺体発見。雪崩に埋没した模様
2/10(月)吾妻連峰で男女3人(男59・47、女55)が風雪のため西吾妻小屋に避難して救助要請。2/12無事救出
2/10(月)八ヶ岳赤岳山頂付近で男性(53)が疲労および体調不良により行動不能。山小屋従業員が救助
2/10(月)八ヶ岳赤岳南東2800m付近で男性(61)が山梨側へ滑落して救助要請。2/12山梨県警ヘリが救助、死亡確認
2/10(月)御嶽山山頂付近で男女2人(66・47)が「吹雪のためビバークする」と連絡し不明。2/11通報後、発見救助
2/11B(祝/火)谷川・天神平スキー場で男性(15)が誤った方向へ滑走して戻れず、雪洞でビバーク。2/12発見救助
2/11(祝/火)浅間連峰黒斑山で男性(61)が下山中道に迷い行動不能。小諸署・遭対協が救助
2/14(金)八ヶ岳摩利支天大滝で男性(51)がアイスクライミング中に滑落し左足首骨折の模様。静岡県警ヘリが救助
2/15B(土)信越・鍋倉山で男性(78)が家族・友人とバックカントリー滑走中に転倒負傷。県警ヘリが救助
2/15B(土)北アルプス八方尾根南側斜面でツアー参加の男性(43)が滑走中に転倒し左膝骨折など。県警ヘリが救助
2/15(土)北陸・鞍掛山(石川県小松市)で男性(40代)が下山中に足を踏み外し左足首骨折の疑い。防災ヘリが救助
2/16(日)八ヶ岳赤岳地蔵尾根2600m付近で男性(60)が下山中に転倒し左足首骨折など。茅野署・遭対協が救助
2/17(月)八ヶ岳柳川北沢堰堤1950m付近で女性(47)が滑落して背中などを打ち骨盤骨折など。茅野署などが救助
2/18B(火)大雪・旭岳で男性(30)がコース外など滑走後、宿泊のホテルに戻らず行方不明。2/21地上捜索打ち切り
2/18(火)大菩薩・滝子山で男性(45)が下山中に道に迷い15:10ごろ通報。1.5H後防災ヘリが発見救助
2/19(水)寺山(兵庫県三田市)で男性(54)が山頂付近から「道に迷った」と通報。1.5H後防災ヘリが救助
2/19B(水)信越・野沢スキー場毛無山で女性(35・34)がコース外滑走中、道に迷い行動不能
2/20B(木)北海道サホロスキー場で男性(39・25)がコース外滑走中、道に迷い遭難。2/21朝に発見保護
2/20B(木)北アルプス八方尾根で男性(29)がコース外をスキー滑走中に転倒負傷。大町署が救助
2/22B(土)大雪・旭岳七合目付近で男性(42)が下山途中に吹雪で位置がわからなくなる。23:00ごろ発見救助
2/22B(土)トマムスキー場で男性(43)が滑走からホテルに戻らず行方不明、家族が通報。2/23朝コース外で救助
2/22(土)八ヶ岳広河原沢左俣で男性(59)がアイスクライミング中に3m滑落し左脚骨折の模様。茅野署などが救助
2/22B(土)北アルプス栂池高原で男女(46・36)がバックカントリー滑走中沢へ転落し行動不能。2/23県警などが救助
2/22(土)対馬・金田城跡で男性(68)が登山道脇に倒れているのを発見、病院で死亡確認。男性は2/21に入島
2/23(祝/日)大菩薩・滝子山で女性(60代)が下山途中に登山道から10m滑落し右腕を負傷。大月署などが救助
2/23(祝/日)道志・高川山で女性(65)が登頂後に体調不良(過呼吸)となり行動不能。防災ヘリが救助搬送
2/24(休/月)古賀志山(宇都宮市)で女性(74)が登山道の橋から足を踏み外して転落、頭を負傷。防災ヘリが救助
2/24(休/月)八ヶ岳唐沢鉱泉から天狗岳へ入山した女性(53)が行方不明。2/25白砂新道南方で遺体発見、外傷なし
2/24(休/月)八ヶ岳赤岳鉱泉で宿泊中の女性(28)が体調不良となり行動不能。県警ヘリが救助
2/24(休/月)乗鞍・野麦峠スキー場で男性(49)の遺体発見。詳細不明
2/25B(火)利尻山で男性ガイド(45)がスキー滑走中に滑落し左アキレス腱断裂。防災ヘリが救助
2/26(水)中央アルプス空木岳で男性(32)が「下山する」と連絡後不明。2/27県警ヘリが池山尾根1400mで遺体発見
2/26(水)北アルプス霞沢岳で女性(39)が滑落し行動不能。県警救助隊が救助
2/26(水)三倉岳(広島県大竹市)で男性(60代)がクライミング中に20m滑落し心肺停止状態。病院で死亡
2/28B(金)北アルプス乗鞍天狗原付近で男性(43)がスノーボード滑走中に雪崩に巻き込まれる。県警ヘリが救助
2/29B(土)北アルプスフスブリ山で男性(30)が体調不良により行動不能。県警ヘリが救助
注:「*」は遭難発生日以外の通報日、認知日、発見日など、「B」はバックカントリーまたはコース外滑走での遭難

気にかかった遭難事例

●ピンネシリ岳で雪崩、イギリス人男性死亡
2月1日11時40分ごろ、北海道中頓別町ピンネシリ岳(703m)で、バックカントリースキーで滑走していたイギリス人男性(34)が雪崩に巻き込まれて埋没しました。同行者2人と周辺にいたスノーボーダーが初期レスキューを行い、約40分後に2mほどの深さの雪中から男性を掘り出しましたが、すでに意識不明で、蘇生できませんでした。防災ヘリで名寄市の病院へ搬送され、死亡が確認されました。

1月であげたトマム山の事例(コース外滑走)から2日後に発生しました。こちらはバックカントリーでの雪崩遭難事故です。こちらも日本雪氷学会北海道支部、雪氷災害調査チームによる調査速報が公開されています。雪崩の専門的内容まで含む詳細なものです。
調査速報によると、地形全面が雪崩れる大規模なもので、デブリは幅30m長さ300mほどと推定しています。埋没地点は標高348mほど、埋没深約2mとしています。埋没位置特定に30分ほど、掘り出すのに10分ほどかかりました。
パーティは遭難男性とその兄、日本人ガイドの3人でした。頂上付近から滑り出し、最初に男性が滑った後に雪崩が発生したと推定されます。ガイドツアーの場合、滑走の順番はこれで普通なのでしょうか。
また、男性はアバランチエアバッグを装着していましたが、エアバッグが展開したままで2m下に埋没していた(つまり浮力が働かなかった)という情報もあります。エアバッグのような各種装備の発達によって、雪山リスクに対する行動が大胆になっていく傾向がないかどうか、検討する必要があると思います。

出典:雪氷災害調査チーム「敏音知岳(ピンネシリ)雪崩調査(速報)」2020/2/2

[1月]地方の低山でも滑落事故

[1月7~31日の遭難関係ニュースから]
1月の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

元日からの遭難発生を合わせても20件未満(当方が把握した事例数です)、現在までのところ、2020年の月別で最少の発生数となっています。その理由は、雪不足のために、雪山登山者、スキー場周辺への入山者、ともに少なかったからだと推定されます。
1月7日以降1月中の発生は、北アルプス3件、八ヶ岳2件、各地の低山など7件、スキー場関係3件でした。積雪が原因なのか、低山でも滑落事故が頻発しています。1月中で最も大きく報じられたのは、30日に北海道トマムスキー場周辺(管理区域外)で起きた雪崩事故で、フランス人男性1人が死亡しました。

1/7(火)伊豆・天城山で男女2人が道に迷い救助要請。大仁署・消防が捜索し救助
1/11(土)北アルプス西穂2700m付近で男性(30)が稜線から150m滑落して肋骨骨折など。県警ヘリが救助
1/11(土)鈴鹿・御在所山八合目付近の岩場で男性(68)が滑って転び左足を負傷、骨折の疑い。防災ヘリが救助搬送
1/11(土)三段峡(広島県安芸太田町)でビデオ撮影の男性(70)が山道から30m滑落、妻が通報。19:55発見救助
1/13B(祝/月)谷川・平標山松手山ルートで、スキーで下山中の男性(62)が転倒し左足を負傷。県警ヘリが救助
1/13(祝/月)丹沢・鐘ヶ嶽で男性(70)がコース上に倒れているのを登山者が発見、病院で死亡確認。外傷なし
1/15B(水)かぐらスキー場付近で男性(44)がコース外に出て戻れなくなり道に迷う。1/16津南町大赤沢で発見救助
1/19(日)北アルプス涸沢岳西尾根2400mで男性(52)がテント周囲を散策中、迷って戻れなくなる。1/22遺体発見
1/20(月)道志・向河原橋~不老山で40代男性が登山道を外れて道に迷い行動不能
1/22(水)谷川・浅間神社奥ノ院付近で男性(45)が登山中に姿が見えなくなり行方不明。1/23崖下1000mで遺体発見
1/25(土)八ヶ岳広河原沢右俣で男性(46)がアイスクライミング中に4m転落し右足骨折の疑い。県警ヘリが救助
1/26(日)北アルプス前常念岳で男性(23)が単独登山中、道に迷い行動不能。富山県警ヘリが救助
1/30B(木)トマム山南西の三角沢で管理区域外滑走中のフランス人男性(38)が雪崩に巻き込まれる。1/31遺体発見
1/30(木)八ヶ岳赤岳地蔵尾根で男性(51)が下山中に滑落し右足首骨折の疑い。茅野署・遭対協が救助
1/31(金)日光・丸山で男性(57)が下山開始直後に20m滑落して頭を強打。防災ヘリで搬送後死亡
注:「*」は遭難発生日以外の通報日、認知日、発見日など、「B」はバックカントリーまたは管理区域外滑走での遭難

気にかかった遭難事例

●トマムスキー場で雪崩、男性1人死亡
1月30日15時30分ごろ、北海道占冠村の星野リゾートトマムスキー場周辺で、フランス人男女8人グループが管理区域外を滑走中に雪崩が発生し、男性1人(38)が巻き込まれました。仲間が救い出したときには意識も脈もなく、蘇生を試みましたが断念して、その場に残して7人は下山しました。翌31日、道警山岳救助隊などが捜索し、山頂から約50m下の雪洞中に男性を発見し、収容後に死亡を確認しました。

この遭難事例については、日本雪氷学会北海道支部の調査チームによる調査報告速報がありますので、そちらを参照してください。地形図を見ると、事故発生場所はまさに雪崩の起こる地形です(赤の部分が雪崩発生場所です)。スキー・スノーボードをやらない雪山登山者から見れば、彼らはただただ危険な斜面に飛び込んでしまうものだなぁ……という感想が浮かんでくるばかりです。

出典:雪氷災害調査チーム「トマム山雪崩調査(速報)」2020/1/31

2019/20年末年始の遭難状況

[12月28~1月6日の遭難関係ニュースから]
2020年も終盤に入ってきましたが、保存記録として、1月からの山岳遭難データをアップしていくことにします。まず年末年始の状況から。

出典:警察庁統計

警察庁で1月9日に発表した公表資料によると、2019年12月29日~2020年1月3日に発生した山岳遭難は37件、遭難者数52人(死亡・行方不明4、負傷15、無事救出33)となっています。年末年始の遭難状況は気象条件によって大きく左右されます。年次的な比較はあまり意味がないのですが、発生数としては過去最多レベルとなっています。過去18年間で、件数・遭難者数ともに2017年に次いで2番目に多いです。しかし、発生数のわりに死亡・行方不明者数は少なかったといえます。
マスコミで報道された遭難事例は少なかった模様で、当方でも5事例しか把握できませんでした。軽度な遭難事例が多かったものと推測されます。以下のリストには、12月5週から1月1週(12/28~1/6)に発生したもので、当方で把握できた事例をあげています。

12/28(土)北アルプス横尾尾根で男性(41)が登山中に雪庇を踏み抜いて滑落負傷。岐阜県警ヘリが救助
12/28(土)六甲山町五介山の登山道に男性(70)が倒れているのを別の登山者が発見通報。その場で死亡確認
12/28(土)南アルプス北岳で男性(27)が登頂後、山小屋へ下山途中に転倒して負傷。防災ヘリが救助
12/29(日)奥秩父前衛鈴庫山で女性(73)が体調不良と頭痛や手足の痺れを訴える(脳出血)。防災ヘリが救助
12/30(月)北アルプス剱岳早月尾根2600mで男性2人が雪庇を踏み抜き滑落、1人(46)行方不明。1/6捜索打ち切り
12/30(月)北アルプス西穂山頂付近で男性(29)がルートを迷い行動不能。12/31悪天候で捜索できず、1/1遺体発見
1/1(祝/水)札幌国際スキー場でイタリア人男女7人が山頂からコース外に入って迷い通報、19:00自力下山し保護
1/1(祝/水)富士山御殿場口下り六合目付近で冬山装備を持たない男性(34)が凍結斜面で行動不能。御殿場署が救助
1/4(土)北アルプス燕岳を登山中の男性(56)が悪天候により道に迷い行動不能。遭対協救助隊が救助
1/4(土)南アルプス前衛ボンジ山で男性(55)が登頂後、下山中にルートを迷い通報。1.5時間後ヘリで救助

気にかかった遭難事例

●剱岳早月尾根で雪庇踏み抜き、行方不明
12月30日13時30分ごろ、北アルプス・剱岳の早月尾根2600m付近で、3人グループの男性(46)が滑落して行方不明になりました。同行者の男性(27)も雪庇を踏み抜いて約50m滑落しましたが、自力で元の場所へたどり着きました。もう1人の女性(49)は無事でした。
3人は28日に馬場島から入山しました。30日は早月小屋を早朝に出発し、約2800mまで登りましたが、天候が悪化したため引き返していたところ事故が発生しました。現場周辺は風雪になっており視界が悪かったそうです。男女2人は早月小屋(標高2200m)に戻り、常駐していた山岳警備隊員に救助要請しました。2人は1月1日に消防防災ヘリで救助され、背中の痛みを訴えていた男性は病院で治療を受け、重傷のもようです(傷病名などは不明)。行方不明の男性はその後も発見されず、上市署は1月6日で捜索を打ち切りました。

この年末年始は、マスコミを騒がせるような遭難事故は少なく、この事例は最も被害の大きかった一つでした。積雪期の剱岳は全ルートが上級者向きですが、その中でも、早月尾根は中級者でも何とか登れるのでは?と期待をもたせてくれるルートです。しかし、実際にはやはり相当グレードが高く、雪山遭難が多く発生しています。富山県警が毎年発表している『試練と憧れ』(山岳遭難統計)に、早月尾根の危険個所が下記のようにまとめられています。このような信頼性の高い情報をよく研究してのぞむことが重要だと思います。

出典:富山県警『試練と憧れ』第36号(2020年3月)

[8月]夏山シーズンの遭難は大幅減少(続)

[8月1~31日の遭難関係ニュースから(続)]
7~8月の山域別の遭難発生状況をまとめておきます。

●北アルプス
例年に比べて遭難は非常に少なかったです。後立山連峰は、白馬大雪渓4件、八方尾根2件、遠見尾根付近2件、鹿島槍ヶ岳、烏帽子岳各1件でした。死亡事例は、8/27遠見尾根で発生しています。
剱立山連峰は、剱岳4件、室堂平1件、薬師岳稜線2件でした。7/7室堂平で病死遭難(高山病か?)、8/26剱岳チンネ付近で滑落死亡事故がありました。
槍穂高連峰では、槍ヶ岳3件、北穂2件、奥穂2件、前穂2件でした。例年に比べて非常に少ないといえます。死亡事例は、8/2前穂北尾根で発生しています。
このほか、黒部源流山域2件、弓折岳1件、常念山脈5件でした。
●南アルプス
主稜線での発生は3件だけ(鋸岳、北沢峠、地蔵ヶ岳)でした。中心部よりも周辺山域での遭難が多くなっています。死亡事故は、8/1接阻峡付近、8/11梶谷川(釣り)で発生しています。
●中央アルプス
主稜線での発生は2件だけ(将棊頭山、熊沢岳)、周辺山域でも2件発生しています。
●八ヶ岳
全体の遭難発生数は昨年とほぼ同じでしたが、通常なら遭難が最も多い赤岳、阿弥陀岳、権現岳での発生が見られません。夏沢峠以北の北八ヶ岳で4件、横岳1件、編笠山2件、天女山1件でした。
●関東周辺
ここでは首都圏から主に日帰り圏内の広範囲な山域を指しています。今年の夏山シーズンで最も遭難が多かったのは、これらの山域でした。代表的な日帰りエリアである奥武蔵、奥多摩、丹沢では、死亡事故でなければ、遭難事故はほとんどマスコミで報道されません。したがって、特別に取材しないかぎり、遭難情報が把握しづらいのが現状です。
それ以外のエリアでは、奥秩父(大菩薩を含む)8件、足尾山塊3件、谷川連峰2件、雨飾山2件、その他、那須、奥日光、安蘇山塊、武尊山、榛名山、妙義山、西上州二子山など、広い範囲で遭難が発生しています。個々にあげませんが、死亡・行方不明事例も頻発しています。
●東北
把握できた事例は13件。発生山域は北から、岩手山(2件)、鳥海山(3件)、丁岳、月山、焼石岳(夏油温泉)、栗駒山、神室岳、吾妻連峰(2件)、安達太良山でした。そのほかに、飯豊・朝日連峰でも各1件発生しています。ただし、ほとんどは地元の登山者が遭難したもので、首都圏や近畿からの登山者が遭難した事例は少なくなっています。
●北海道
把握できた事例は13件。発生山域は、大雪山系(3件)、日高山脈(2件)、羊蹄山(2件)、空沼岳(2件)、利尻山、八剣山、お茶々岳、大千軒岳でした。遭難者住所が不明のものもありますが、地元登山者は一部のみで、本州から訪れた登山者の遭難が多いです。死亡事例は、7/5八剣山、8/9大雪・層雲峡、8/27羊蹄山、8/30日高・ヤオロマップ岳。
●近畿以西
把握できた事例は22件。白山および周辺で3件、鈴鹿山脈4件、大峰・台高4件、その他は散発的で、比良、大山、比婆山、四国石墨山、八多五滝、九州八面山、津波戸山、国見岳、市房山、屋久島高盤岳で発生しています。

[その他のニュース]
●三重県で8月に遭難急増
三重県で8月に入り遭難が急増しました。28日時点で8件13人にのぼり、昨年同期(4件4人)から倍増しています。7月までは例年より少なく18件21人(昨年同期25件29人)でしたが、8月に入って急増しました。新型コロナウィルスの影響で、人混みを避けて山に遊びに来る初心者が増加しているのが原因の一つではないかと分析しています。
8月15日、大普賢岳に勤務先の同僚など11人で登山に来ていた県外グループのうち、男女4人(20~30代)が下山時に道を間違えて遭難しました。翌日救助されましたが、スニーカーなどの軽装で、非常用食料もなく、登山届も提出していなかったそうです。(毎日8/31など)

●長野では遭難最多年齢層40~50代へ
長野県の8月までの遭難動向で、1/1~8/23の遭難者115人のうち、40~50代が最多の54人(47%)で、これまで最も多かった60代以上(36人=31%)を大幅に上回ったことがわかりました。県警山岳安全対策課では、新型コロナウィルスの影響で高齢者が登山を控える一方、中年登山者がテント泊などの重装備で、レベルの高い登山を志向しているのではと分析しています。
7月21日、烏帽子岳のブナ立尾根で男性(42)が疲労により動けなくなった事例では、男性の荷物は30㎏で、裏銀座コースへの挑戦を始めたばかりでした。8月15日、中央アルプス・駒ヶ岳で滑落遭難した男性(48)も、テント泊の重装備でした。(信濃毎日8/26)

[8月]夏山シーズンの遭難は大幅減少

[8月1~31日の遭難関係ニュースから]
8月の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

8月1日に、関東甲信、東海、北陸地方が梅雨明けしました。平年より10日以上遅い梅雨明けで、夏山登山への登山者の流れも正常化へ向かうことが期待されましたが、そのようにはならなかった模様です。
8月中に当方が収集した山岳遭難情報は142件でした。昨年同期には197件でしたから、28%減となりました。
さらに、夏山登山シーズンとみなされる7~8月の合計でみると、今年の遭難情報件数は175件、昨年同期297件の41%減でした。遭難発生数のデータから、夏山シーズン中の登山者の流れを推測してみましょう。山域別にみた遭難発生件数(あくまでも当方が収集できた件数です)の増減は、次のようになっています。
        2020年 2019年 増減数
北アルプス    51件  125件  -74
南・中央アルプス 12件  45件  -33
八ヶ岳       8件   9件  - 1
富士山       0件  31件  -31
関東周辺     47件  37件  +10
北海道      13件  10件  + 3
東北・朝日・飯豊 19件  17件  + 2
近畿以西     28件  23件  + 5
その他       4件   0件  + 4

当然のことながら、富士山と南アルプス北岳周辺には強い登山規制がかかっていたことから、登山者は激減した(またはゼロ)と推定されます。また、北アルプスも登山自粛のバイアスがかかり、槍・穂高連峰などへの登山者は非常に少なかったと思われます。北アルプスのそれ以外のエリアでも、遭難抑止への意識が強まったことから、入山者がかなり減少したのではないでしょうか。
遭難発生数が変わらなかった(または少し増加した)のは、八ヶ岳、関東周辺、北海道、東北、近畿以西、つまり、富士山と日本アルプス以外の全部です。しかし、登山者が単純に規制のないエリアへ移動したのだったら、これらの山域では明確に遭難増となったでしょう。顕著な遭難増加は見られませんので、登山者はいつも以上に遭難しないように注意しながら行動したのだと思います。その結果、夏山ハイシーズンで2か月間175件ぐらいの遭難発生は仕方のないことかもしれません。≪続く≫

(注)日付に「*」があるものは、(遭難発生日が不明のため)通報日、救助要請日、認知日、発見日などであることを示しています。赤字は9/20修正です
8/1(土)接阻峡(静岡県川根本町)山中で男性(25)が「沢へ滑落し場所もわからない」と通報。8/3発見、死亡確認
8/1(土)北アルプス・スゴ乗越小屋で男性(58)が到着後体調不良(熱中症・脱水)を訴える。8/2県警ヘリが救助
8/1(土)愛鷹連峰愛鷹山で男性(79)が一時遭難するが、静岡県警などが発見救助(詳細不明)
8/2(日)越後・角田山山頂の200m下で、男性(80)が座ったまま意識不明でいるのを登山者が発見。防災ヘリで搬送
8/2(日)谷川・湯檜曽川白毛門沢で、男性(71)が仲間8人で沢登り中に転倒し右脚骨折。谷川岳警備隊が救助搬送
8/2(日)四阿山から鳥居峠へ下山中の女性(66)が斜面に足を取られ30m滑落、左手首を負傷。同行ガイドが救助
8/2(日)北アルプス・剱岳チンネ付近で、男性(61)が手をかけた岩が崩れて転落し左足首打撲。8/2県警ヘリが救助
8/2(日)北アルプス・小槍で男女2人(74・56)が数m滑落して男性は右足、女性は右腕骨折。8/3県警ヘリが搬送
8/2(日)北アルプス・前穂北尾根4峰で女性(52)が200m滑落して頭を強打。県警ヘリで病院へ搬送、のち後死亡確認
8/2(日)大峰・双門ノ滝で男性(43)が転落して行方不明となり、目撃者が通報。8/4発見、死亡確認
8/2(日)宮川河原(三重県大台町)でバーベキューの片付けをしていた男女(28・24)がクマに襲われる。女性は指を骨折し重傷、男性は左足負傷
8/2(日)「鰐塚山(宮崎市)に行く」と家を出た男性(29)が戻らず行方不明。8/21頭や胸を骨折した遺体発見
8/3(月)頚城・雨飾山山頂付近で男性(74)が意識がない状態で倒れ、登山者が通報。県警ヘリで搬送、死亡確認
8/3(月)北八ヶ岳で女性(21)が雨池山から三ツ岳へ縦走中、疲労により行動不能。茅野・佐久署が救助
8/3(月)北アルプス・剱岳前劒付近を下山中の男性(70)がバランスを崩して転倒し左手に重傷。県警ヘリが救助
8/3(月)白山南竜山荘で男性(60代)が目まいや嘔吐の症状を訴え、山小屋が通報。8/4防災ヘリが救助搬送
8/4(火)安達太良山の登山道で女性(56)が転倒して負傷。宮城県防災ヘリが救助搬送
8/4(火)古賀志山山頂付近を下山中の男性(79)が、登山道から5m滑落して首を強く打つ。搬送先の病院で死亡
8/4(火)武尊連峰玉原湿原付近でクマ2頭が出没。うち1頭に遊歩道を散策中の女性(71)が襲われて腕を骨折
8/4(火)榛名山系水沢山の「おやすみ石」付近で、女性(55)が足を滑らせて転倒、右足首骨折。県警ヘリが救助
8/4(火)大山六~七合目を下山中の男性(40)が気分が悪くなり、防災ヘリが救助搬送。中等度の熱中症
8/5*(水)北アルプス・北穂南稜2800mで大腿骨1本が発見される。2017/8に涸沢を出発し行方不明の男性(当時63)
8/5(水)白山周辺大明神山(富山県南砺市)で、男性(83)が道に迷い下山できなくなる。8/6県警ヘリが救助
8/6(木)吾妻連峰人形石付近で、女性(65)が何らかの理由により下山不能となり宿泊先旅館に連絡。救急隊が救助
8/6(木)妙義山を登山中の男性(76)から「道に迷った」と連絡を受け、旅館が消防に通報。8/10山中で遺体発見
8/6(木)奥秩父・丹波山村の川で沢登り中の男性2人(10-20代)が流される。1人は川底で心肺停止、1人無事救出
8/7(金)北アルプス・高天原山荘の南方600mで男性(53)が足を滑らせて転倒し右足骨折。8/8県警ヘリが救助
8/7(金)北アルプス・白馬岳で、猿倉登山口から大雪渓を登山中の男性(50)が落石により負傷。大町署が救助
8/7(金)北アルプス・常念岳で女性(68)が下山中に転倒して負傷。安曇野署などが救助
8/8(土)足尾・皇海山へ入山した男性(49)が、六林班峠付近から道に迷い遭難。8/9自力下山
8/8(土)東京都奥多摩町の山中で男性(50代)が登山から戻らず家族が届け出。8/9意識不明の状態で発見、死亡確認
8/8(土)津波戸山(大分県杵築市)で男性(74)が登山途中で仲間2人とはぐれ行方不明。8/10自力下山後に保護
8/9(日)大雪・層雲峡荒井川を沢登り中の男性2人が川に流される。翌日警察が発見。男性(23)死亡、ほか1人軽傷
8/9(日)北アルプス・上高地小梨平で女性(50代)が深夜クマに襲われ右脚に10針のケガ。キャンプ場は9/6まで閉鎖
8/9(日)鈴鹿・国見岳で男性(65)が道に迷って複数回転倒、顔面骨折など重傷を負う。8/10発見、防災ヘリが救助
8/9(日)大阪府の山で男性(50代)が遭難、死亡。詳細不明
8/10(祝/月)米山(新潟県上越市)を家族4人で下山中、男児(12)がはぐれ行方不明。翌朝、ヤブ中から発見救助
8/10(祝/月)奥秩父・廻り目平の岩場で男性(36)がクライミング中に5m転落して腰部など負傷。県警ヘリが救助
8/10(祝/月)八ヶ岳・東天狗岳から根石岳へ縦走中の女性(52)が、転倒して右足首を骨折。県警ヘリが救助
8/10(祝/月)満観峰(静岡市駿河区)で男性(50代)が滑落するが、無事救助される。詳細不明
8/11(火)鳥海山へ8/11に入山した男性(65)が「道に迷った」と妹を通じて通報。8/12午後から連絡不通
8/11(火)栗駒山へ男性(53)が登山に出かけたまま戻らず、妻が警察に通報。8/12自力下山中を発見
8/11(火)越後・角田山で男性(40代)が登山中に体調が悪化し(熱中症疑い)行動不能。消防ヘリが救助搬送
8/11(火)梶谷川(飯田市南信濃)へ8/10に釣りに出かけた男性(70)が戻らず、携帯電話も不通。8/12遺体発見
8/11(火)北アルプス・槍沢2100mで下山中の男性(62)が転倒して右足首骨折。県警ヘリが救助搬送
8/11(火)北アルプス・蝶ヶ岳「槍見台」付近を下山中の男性(58)が転倒して左足首骨折の疑い。松本署が救助
8/12(水)日本ヶ塚山(愛知県豊根村)で年齢不明男性が遭難死。遺体引き上げ中に倒木が発生し救助隊員が軽傷
8/12(水)八ヶ岳・硫黄岳から横岳へ縦走中の男性(67)が、日ノ岳付近で道に迷い行動不能。遭対協が救助
8/12(水)北アルプス・白馬岳大雪渓で、男性(73)が下山中に疲労のため行動不能。大町署・遭対協が救助
8/12(水)北アルプス・大天井岳で、男性(26)がテント泊中に体調を崩して行動不能となる。県警ヘリが救助
8/13(木)鳥海山外輪コースで男性(55)が濃霧のため引き返そうとしたが戻れなくなって通報。防災ヘリが救助
8/13(木)足尾・鋸山で、皇海山へ向かっていた男性(46)が登山道から3m下に滑落して負傷。県警ヘリが救助
8/13(木)八ヶ岳・桜平~夏沢峠をトレランで下山中の男性(48)が転倒し負傷。自力下山後、茅野署などが救助
8/13(木)北アルプス・奥穂ザイテングラードで、ツアーの男性(70)が岩場から滑落負傷。松本署・遭対協が救助
8/13(木)国見山(宮崎県西米良村)に入山した男性(30代)が連絡不通、行方不明。8/14山頂の北西2kmで発見
8/14(金)大雪・層雲峡「銀河の滝」で男性(28)がクライミング中に滑落し腰など骨折の疑い。8/15警察などが救助
8/14(金)南アルプス・水窪の山中で男性(40代)が道に迷い、家族を通じて届け出る。8/15自力下山中を発見
8/14(金)太郎山(長野県上田市)で、女性(69)が裏参道を下山中に転倒して負傷。消防が救助
8/14(金)頚城・雨飾山で、男性(62)が笹平付近を下山中に滑落して負傷、行動不能。県警ヘリが救助
8/14(金)奥秩父・入川林道を下山していた渓流釣りの男性(44)が山道から100m滑落。県警救助隊が遺体発見
8/14(金)奥秩父・廻り目平の岩場で男性(50)がクライミング中にバランスを崩して転落し負傷。県警ヘリが救助
8/15(土)奥秩父・甲武信ヶ岳で女性(66)が下山中に体調不良で動けなくなり、息子が通報。8/16県警ヘリが救助
8/15(土)南アルプス林道北沢峠付近で、下山中の男性(41・38)が装備不足のため行動不能。8/16伊那署が救助
8/15(土)松沢山(下伊那郡阿智村)で男性(44)が家族と登山中にはぐれて行方不明。自力下山後、無事確認
8/15(土)中央アルプス・将棊頭山から桂小場へ下山中の男性(48)がバランスを崩して滑落負傷。県警ヘリが救助
8/15(土)北アルプス・常念岳から蝶ヶ岳へ縦走中の男性(42)が滑落して負傷。県警ヘリが救助
8/15(土)比良・明王谷三ノ滝で、沢登りの男性(54)がロープ固定作業中に滑落、宙吊りになる。救助後死亡確認
8/16(日)南アルプス・北又沢上流で渓流釣りの男性3人(56・46・39)が疲労により行動不能。飯田署などが救助
8/16(日)南アルプス・鋸岳で男性(33)が山頂付近を下山中に滑落して骨盤骨折の重傷。県警ヘリが救助
8/16(日)北アルプス・八方尾根扇雪渓付近で女性(48)が下山中に転倒して足を骨折。大町署・機動隊が救助
8/16(日)北アルプス・八方尾根扇雪渓付近で男性(40)が下山中に転倒して負傷。大町署・機動隊が救助
8/16(日)北アルプス・北穂高岳南稜で男性(75)が登山中に疲労と体調不良により行動不能。県警ヘリが救助
8/17(月)利尻山五~六合目で19:00ごろ女性(55)・男児(12)が「疲れて動けない」と通報、同日救助
8/17(月)殿城山(長野県長和町)で男女(70・67)が下山中、道に迷い行動不能。上田署が救助
8/17(月)台高・大杉谷登山口から1.6km付近で、突然クマが現れ女性(30代)が両足をかまれるなど軽傷
8/18(火)中央アルプス周辺大棚入山で、男性(35)が下山中体調不良により行動不能。8/19岐阜県警ヘリが救助
8/19(水)日高・ピラトコミ山で、沢登りの男性(40代)が「滑落して動けない」と通報。ヘリ出動中に自力下山
8/19(水)八ヶ岳・三ツ岳から雨池山へ縦走中の女性(73)が転倒して負傷。静岡県防災ヘリが救助
8/19(水)西上州・二子山へ登山に出かけた男性(71)が戻らず。8/20西岳北側、尾根から35m下に倒れた遺体発見
8/20(木)浅間連峰車坂峠から黒斑山へ登山中の男性(67)が、疲労により行動不能。小諸署などが救助
8/20(木)北アルプス・槍ヶ岳北鎌尾根で、男性(72)が山頂付近を登攀中に滑落して負傷。8/21県警ヘリが救助
8/20(木)北アルプス・奥穂高岳のハシゴ場を下降中、男性(72)が足を滑らせ転落、頚椎損傷など。岐阜県警が救助
8/21(金)北アルプス・常念岳で、男性(56)が山頂付近を下山中に転倒して負傷。県警ヘリが救助
8/23(日)空沼岳(札幌市南区)で男性(80代)が家族と登山中に転倒して頭から出血。消防ヘリが救助搬送
8/23(日)大雪・トムラウシ山で、女性(60代)が登山道で転倒して頭から出血
8/23(日)神室岳川崎町側の林道で、沢登り中の男性(64)が道に迷ったうえ右腕骨折の疑い。8/24発見救助
8/23(日)白山周辺白川村木谷で、渓流釣りの男性(37)が岩場で足を滑らせ15m下の河原に転落、脳内出血で死亡
8/24(月)お茶々岳(北海道富良野市)で男性(25)が軽装のうえ昼過ぎに入山、道に迷い下山できなくなる
8/24(月)大平温泉付近(米沢市)で男性(65)が旅館へ向かう道から脇の斜面に滑落、意識不明となる。病院で死亡
8/24(月)日光白根山山頂付近で女性(53)が登山中にバランスを崩し20m滑落負傷。男性登山者が見つけて通報
8/24(月)大菩薩嶺から下山中の女性(48)が道に迷い17:50通報。8/25日下部署が千石茶屋付近山中で発見救助
8/25*(火)丁岳へ登山に出かけた男性(72)が戻らず、8/25家族が届け出。9/6釣り人が林道下の沢で遺体発見
8/25(火)湘南・高麗山ハイキングコースで男性(76)が誤って30m下に滑落し、妻が通報。病院へ搬送後死亡
8/26(水)八ヶ岳・編笠山で男性(66)が下山中に道に迷い行動不能。8/27茅野署・遭対協が救助
8/26(水)北アルプス・剱岳に入山した男性(45)が8/26から行方不明。8/27チンネの100m下で発見、死亡確認
8/27(木)羊蹄山一合目付近で男性(67)が意識もうろう状態で倒れているのを通った人が発見通報。病院で死亡
8/27(木)羊蹄山三合目付近で男性(76)が下山後、置き忘れた荷物を取りに戻って迷う。登山口付近で発見救助
8/27(木)大千軒岳(北海道福島町)で男性(64)がスマホの電源が切れて方角がわからず道に迷う。8/29救助
8/27(木)北アルプス・白岳で女性(59)が登山中に転倒して負傷、歩行困難となる。8/28県警ヘリが救助
8/28(金)足尾・庚申山を登山中の男性(66)がルートを外れたうえ滑落、左足開放骨折など。県警ヘリが救助
8/29(土)鳥海山山頂付近で男性(63)が急にふらついて倒れ、意識・呼吸なく重体となる。近くの登山者が通報
8/29(土)八ヶ岳・編笠山で、女性(44)が山頂から不動清水へ下山中、転倒して負傷
8/29(土)御嶽山剣ヶ峰付近で男性(60)が登山中、疲労・体調不良のため行動不能。木曽遭対協が救助
8/29(土)八多五滝(徳島市)で、男性(41)が滝巡りから戻り下山途中で道に迷う。警察・消防53人が捜索して救出
8/29(土)鈴鹿・銚子ヶ口付近で男性(47)が「下山途中で遭難した」と通報。8/30夕方、釣り人が発見し同伴下山
8/30(日)日高・ヤオロマップ岳で男性(63)が「寒さで動けない」と通報。悪天候でヘリが飛べず、9/3遺体発見
8/30(日)北アルプス・岳沢登山道で、奥穂で父親と別れ単独行動中の男性(17)が転倒し腰を骨折など。8/31救助
8/30(日)鈴鹿・ツメカリ谷付近で男性(45)が登山中に左足を負傷、同行者が救助要請。1.5時間後防災ヘリが救助

[9/10追加:34件]
8/8(土)大菩薩・滝子山を下山中の男性(79)が疲労のため仲間から遅れて連絡不通となる。のち無事救出
8/8(土)大峰・前鬼川で沢登り中の女性(73)が徒渉に失敗し高さ10mの滝から転落。8/9吉野署が発見、死亡確認
8/9(日)大菩薩・滝子山で女性2人(22・22)が下山途中に道に迷い、都内の友人を通じて通報。県警ヘリが発見
8/10(祝/月)徳網山(山形県小国町)で女性(68)が下山途中、先行した仲間を見失い道に迷う。山麓の路上で発見
8/10(祝/月)奥秩父・東沢渓谷で女性(37)が沢下り中に足を滑らせ転倒、右かかと骨折など。日下部署などが救助
8/10(祝/月)道志・高川山で男性(43)が下山中に道に迷ったうえ、靴底がはがれ歩行困難となる。県警ヘリが救助
8/10(祝/月)北アルプス・剱岳池ノ谷左俣で男性(73)が複数個の落石に遭い骨盤骨折など。防災ヘリが救助搬送
8/11(火)谷川岳オキの耳の山頂近くで男性(57)が転倒し右足首骨折の重傷。谷川岳警備隊・県警ヘリが救助
8/11(火)両崖山(栃木県足利市)で男性(80代)が足が動かないなどの症状で行動不能(熱中症か)。消防が救助
8/11(火)北アルプス・太郎平小屋付近で女性(60)が石につまずいて転倒し左足首骨折。県警ヘリが救助
8/12(水)奥秩父・甲武信ヶ岳で男性(53)が下山中に道に迷い110番通報。日下部署が発見救助
8/12(水)北アルプス・百貫ノ大下りで、ガイド登山中の女性(43)が急斜面で転倒し右足首骨折。防災ヘリが救助
8/12(水)北アルプス・黒部川B沢合流点でカヤックの男性(36)が川に飛び込んだ際に右足首骨折。県警ヘリが救助
8/12(水)日本ヶ塚山(愛知県豊根村)で、遭難者の救助作業に当たっていた男性2人(37・25)がダウンウォッシュで発生した倒木に巻き込まれるが軽傷。自力下山
8/14(金)西吾妻山を登山中の男女(33・56)が山頂付近ではぐれる。北望台へ下山後合流するが日没のため行動不能
8/14(金)北アルプス・浄土山で男性(45)が転倒して斜面を滑落、腹部を打ち内臓損傷の重傷。県警ヘリが救助
8/14(金)北アルプス・太郎山付近で男性(54)が濡れた木道で足を滑らせ転倒、右足首を骨折。県警ヘリが救助
8/14(金)大峰・双門滝付近で男性(29・28・28)が何らかの理由で下山できず、警察に通報。8/15防災ヘリが搬送
8/14(金)剣山コリトリ橋付近を下山中の男性(30)が何らかの理由で行動不能(脱水症状あり)。防災ヘリが救助
8/15(土)北アルプス・薬師沢~高天原間で女性(65)がぬかるんだ岩場で転倒し左手首骨折。県警ヘリが救助
8/15(土)大峰・大普賢岳から分かれて下山した11人グループのうち男女(27・28)が道に迷う。防災ヘリが救助
8/15(土)大峰・大普賢岳から下山中、上記グループのうち男性2人(32・29)も道に迷う。吉野署などが発見救助
8/16(日)鳥海山行者岳~伏拝岳で男性(51)が下山中にルートを外れて道に迷い、100~150m滑落。防災ヘリが救助
8/17(月)大菩薩嶺で女性(48)が浮き石で足を滑らせて転倒し、右足関節を骨折。県警ヘリが救助
8/17(月)北アルプス・薬師沢~高天原間で男性(55)が足を滑らせ5m滑落、左手指骨折。8/18県警ヘリが救助
8/18*(火)8/14未明「16日に帰る」とメモを残して南アルプスへ出かけた男性(50代)が行方不明。奈良田で車発見
8/19(水)北アルプス・剱岳北方稜線で男性(61)が雪渓を横切る際に20m滑落、右肘骨折など。県警ヘリが救助
8/19(水)古城山(岐阜県山県市)はじかみ林道登山口の150m先で男性(56)が写真撮影中に10m滑落、顔などに軽傷
8/22(土)北アルプス・真砂岳大走り付近で女性(51)が下山中に左足首をひねり骨折。防災ヘリが救助搬送
8/23(日)北アルプス・立山川で沢登り中の男性(47)が高さ1mの岩場から滑落して右足首骨折。防災ヘリが救助
8/24(月)北アルプス・剱岳前劒の鎖場で女性(59)が手を滑らせ3m滑落、左足首・左手首を骨折。防災ヘリが救助
8/25(火)越後駒ヶ岳山頂小屋で男性(70代)が持病の発症を訴え、小屋管理者が通報。8/26県警ヘリが救助
8/25(火)日光・半月山登山道で男性(66)が登山開始後すぐ両足がしびれて歩行困難となる。日光署などが救助
8/25(火)北アルプス・岩苔大滝付近で沢登り中の男性(63)が足を滑らせ3m転落して右膝骨折。8/26防災ヘリが救助

[9/20追加:7件]
8/25(火)丁岳へ登山に出かけた男性(72)が戻らず、8/25家族が届け出。9/6釣り人が林道下の沢で遺体発見
8/27(木)北アルプス・剱岳チンネ周辺の岩場で人骨と衣服、ザックなど発見。男性の可能性高く、死後数年
8/28(金)白山砂防新道で男性(65)が下山途中に転倒して頭を負傷。防災ヘリが救助搬送
8/29(土)大菩薩・源次郎岳で男性(69)が登山道を外れ獣道を下山中に滑落、さらに道に迷う。県警ヘリが救助
8/29(土)御坂・王岳西方で男性(70代)が下山途中に道に迷い、家族が18:00すぎ通報。8/30県警ヘリが発見救助
8/30(日)青森県五所川原市の山中へ山菜採りに入った男性(84)が戻らず9/3親族が通報。9/5発見、重度の脱水症
8/30(日)巻機山米子沢で沢登りの女性(47)が落石で頭を負傷し、同行者が通報。2時間後県警ヘリが救助
8/30(日)北アルプス・和田川で渓流釣りの男性(48)が沢登り中に堰堤から5m下の沢へ転落して両足骨折

[7月]各地の低山でめだつ滑落死亡事故

[7月1~31日の遭難関係ニュースから]
7月の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

7月中にマスコミ報道などで把握した山岳遭難発生は29件(遭難者数37人)でした。
通常、7月下旬からは夏山登山が活発化します。昨年7月は99件の遭難事例がリストアップされていました。今年の発生件数は3分の1以下となっています。富士山への登山は全面的に禁止され、本格的な夏山登山の対象である北・中央・南アルプスと八ヶ岳では、登山への制限や自粛ムードがまだ色濃く残っています。本来の夏山中心地へ向かえないことから、居住地に近い日帰り圏内の低山を地道に登っている人が多いと思われます。
29件の遭難の発生エリアは、北海道・東北6件、関東6件、日本アルプス・八ヶ岳11件、近畿以西6件と、見事に分散傾向を示しています。例年のような、北・南アルプスでの集中的多発が全く見られない一方、各地の低山で、病死遭難事例や滑落死亡事故が頻発しています。

7/4(土)安蘇・両崖山(栃木県足利市)で男性(46)が足を滑らせ3m滑落、腰や左足を骨折。発見者が搬送し通報
7/5(日)八剣山(札幌市南区)山頂近くの岩場を下山中の女性(79)が30m下の斜面に滑落。消防ヘリで救助後死亡
7/7(火)北アルプス立山室堂で7/6午後男性(40代)が発病、7/7早朝救助要請するが、下山中に意識不明となり死亡
7/8(水)四万川(群馬県中之条町)本流で沢登りの女性(21)が徒渉中に流され行方不明。7/10下流800mで遺体発見
7/18(土)奥秩父・笠取山登山道で女性(60)が沢に架かる丸太橋で足を滑らせ2m転落負傷。日下部署・消防が救助
7/18(土)中央アルプス熊沢岳に日帰り予定で入山した男性(57)が帰宅せず連絡不通。7/19自力下山し無事確認
7/18(土)北アルプス剱岳前剱付近で男性(31)が足を滑らせ転倒して右肩打撲。劒沢へ下山後、7/19県警ヘリが救助
7/19(日)月山賽ノ河原付近でトレイルランニングの男性(42)が10m滑落して行動不能。7/20防災ヘリが救助
7/21(火)夏油温泉北側の山中で女性(55・35)が道に迷い18:30通報、20:00以降連絡不通。7/22朝、発見救助
7/20(月)谷川岳天神尾根を登山中の女性(76)がバランスを崩して転倒、右腕を骨折。沼田署が救助搬送
7/21(火)北アルプス烏帽子岳ブナ立尾根で男性(42)が30㎏の重荷、睡眠不足、疲労により行動不能。大町署が救助
7/22(水)奥秩父・金峰山で男性(50)が道に迷い行動不能。7/23遭対協救助隊が救助
7/22(水)北アルプス白馬大雪渓で女性(48)が落石を受けて負傷。大町署などが救助
7/22(水)北アルプス白馬大雪渓で女性(50)が疲労により行動不能。大町署などが救助
7/22(水)=救助日/北アルプス鹿島槍ヶ岳へ7/19に入山した女性(72)が転倒して歩行困難。7/22県警ヘリが救助
7/22(水)鈴鹿・武平峠から御在所岳へ向かった女性(70)がコクイ谷分岐付近で5m滑落、くも膜下出血により死亡
7/23(祝)飯豊・大日杉小屋の西1.5kmで女性(69)がぬかるんだ道で転倒、左脚骨折の疑い。7/24防災ヘリが救助
7/23(祝)南アルプス地蔵ヶ岳で、女性(54)が鳳凰小屋に宿泊後、下山途中に石につまずき転倒負傷。夫が通報
7/24(祝)空沼岳(札幌市南区)で高校生・教員計8人が予定日に下山できないと救助要請。消防・道警ヘリが救助
7/24(祝)大峰・行者還岳~七曜岳で男性(62)が「道に迷った」と長女に連絡後行方不明。7/25警察に届出、未発見
7/24(祝)朝日・西朝日岳の東400m付近で、男性(25)が足を滑らせ左足首をくじいて骨折。防災ヘリが救助搬送
7/24(祝)那須・赤面山で女性(54)が天候悪化のため引き返す際に右足を滑らせ負傷。白河署・消防が救助
7/24(祝)八ヶ岳山麓の天女山でツアー登山中の男性(70)が体調不良を訴え、意識を失い倒れる。病院で死亡確認
7/26(日)北アルプス薬師沢2060m付近で男性(56)が濡れた木道で足を滑らせ転倒、左足首骨折。県警ヘリが救助
7/26(日)比婆山(広島県庄原市)で登山行事参加の男性(70代)が、先に1人で登り始めて道に迷う。7/28未発見
7/29(水)八面山(大分県中津市)へ登った男性(75)が道に迷ったと、妻が110番通報(19:45)。詳細不明
7/30(木)北アルプス白岳2400m付近で意識なく倒れている男性(66)を登山者が発見。8/2大町署が救助、死亡確認
7/31(金)皿ヶ嶺山脈石墨山を下山中の男女が道に迷い、8/1から別行動。8/4白猪ノ滝付近で女性(77)の遺体発見
7/31(金)屋久島・高盤岳へ向かった女性(69)が戻らず行方不明。8/5登山道から500m離れた国有林内で遺体発見

[その他のニュース]
●富士山登山道閉鎖
富士山は山梨県側の五合目から上の登山道を閉鎖(五合目までは入山可能)、静岡県側は富士宮・御殿場・須走の登山ルート閉鎖とともに、各五合目へ通ずる車道も閉鎖されます。全山小屋が休業し、静岡県警は常駐警備を行わないことに決定しました。山梨県側五合目は車の入場台数と駐車時間を制限します。登山禁止期間中に富士山に登ると、道路法違反で処罰されます(6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金)。

●南アルプスは大半の山小屋休業
静岡県側の南アルプスでは、今夏は16ある全山小屋を閉鎖して営業しないことを決めました(5月15日)。一部山小屋は、避難小屋としての利用はできます。長野県側でも、仙丈小屋、こもれび山荘、塩見小屋、中央アルプス西駒山荘の休業決定(5月22日)、山梨県側でも市営山小屋である北岳山荘、白根御池小屋、広河原山荘、両俣小屋、長衛小屋の休業を決めました(5月27日)。さらに、県道・県営林道である夜叉神~広河原~奈良田線、広河原~北沢峠線と、北岳の白鳳峠歩道、広河原~中白根歩道、両俣歩道も利用禁止が決まりました(7月3日)。日本第2位の高峰である北岳は限りなく登山禁止に近いです。それ以外の南アルプス主稜線は、今年の夏山はテントと無人小屋泊のみとなります。

気にかかった遭難事例

●道迷い後に行方不明、滑落死亡で発見
7月31日、石鎚山系の西にある皿ヶ嶺山脈石墨山に登った男女(76・77)が道に迷い遭難し、昼ごろ男性の家族(娘)に女性から「遭難した」と連絡がありました。8月1日15時すぎ、女性の知人から、「2人がまだ帰っていない」と110番通報があり(なぜ通報が1日遅れたかは不明)、警察・消防が捜索したところ、約30分後に白猪ノ滝付近を1人で下山している男性を発見しました。
男性によると、1日昼ごろまで女性といっしょに沢を下っていたが、女性は「滑落が怖いので別のルートを行く」と言い、尾根に向かって登って行ったそうです。のべ約150人での捜索が行われ、8月4日昼前、白猪ノ滝の滝つぼに近い斜面に女性が倒れているのが見つかり、その場で死亡が確認されました。

(考察)
東温市側から石墨山へよく登られているのは、唐岬(からかい)ノ滝、または黒森峠からのルートです。白猪ノ滝からのルートは標高差が大きく健脚向きとなるため、登る人は少ないようです。そのためか、登山口から白猪谷分岐まではルートがわかりにくい、ヤブが多い、または沢が交差するなど、道迷いの危険要素があることが、SNSの記録などでわかります。
以下はすべて推定です。遭難者が歩こうとしたのは、唐岬ノ滝から石墨山に登り、白猪峠に下って、白猪谷分岐から唐岬ノ滝へ周回するルートだと推測されます。どのように迷ったかは報道からはわかりませんが、下山時に白猪谷分岐を見すごして直進してしまい、さらに薄くなった踏み跡も見失って沢通しに下ってしまった可能性があります(たとえばA地点)。そのように進んだとすると、最終的に白猪ノ滝の上に出ます。白猪ノ滝は安全に下れる方法があるのかどうか、現地を見ないと何とも言えません。男性は無事に下ることに成功したようですが。
沢を下った男性が助かって、尾根へ登り返そうとした女性が助からなかった、道迷いの基本原則とは逆だと話題になっているようです。しかし、この事例の一番の問題点は、分かれて行動してしまったことだと思います。
道迷いは、欧米ではインシデント(事故寸前)に分類されています。滑落と低体温症さえ防ぐことができれば、かならず助かる遭難形態なのです。

雪山ガイド講習―12月11~13日 谷川岳周辺

12月11日から3日間、かながわ山岳ガイド協会の雪山ガイド講習を受講しました。講師は武川俊二ガイド。10月のガイド講習(無雪期)でもお世話になっていて、だいぶお人柄ものみ込めたところです。
ガイド講習というのは、ガイド資格認定を兼ねた講習のことです。受講生がガイドとして必要な技術を身に付けているか確認して、足りない部分は講習してもらえます。それも、できるまでくり返し教えてくれるので、最終的には高い確率で合格できるしくみになっています。実技試験をダイレクトに受けるより、受講料がかかるけれどもお得です。

1日目。1人がガイド役、3人がお客さん役になって、本番のガイド登山をシミュレーションしながら歩きます。コースは、宿泊地の土合山の家から旧道をマチガ沢出合、一ノ倉沢出合までです。私のよく知っている道でもあり、へたですが比較的楽にできました。
この旧道沿いはブナのきれいな森で、温帯広葉樹の原生林に近い植生と思われます。東北地方の白神山地のような有名どころにも負けないほど美しいところです。大量の積雪が作った地形や植生が見られるので、そのことをお話しすればいい感じです。あまり詳しすぎるのも飽きられるので、ほどほど、短めの解説がコツです。

P01: マチガ沢

マチガ沢に着くと、谷川岳東面の異様な岩壁群の風景になります。今は特別なスキーヤーでなくても、この谷をスキーで滑り降りています(もちろん上級者です)。左に見えるスカイラインは谷川岳を代表する西黒尾根ルートです。登山を続けられるなら、ぜひ1度は登ってほしいルートです(できれば積雪期に)。というように、話題はいろいろあります。

P02: 一ノ倉沢

一ノ倉沢はさらに異様な景観が展開します。どんな場所がルートとして登られているか、ルートを少し解説してみるのもいいかもしれません。クライマーとはすごい所を登れるものだと感嘆するでしょう。しかし、旧道に沿った岩壁には、犠牲者を慰霊する多数のプレートが埋め込まれていて、この場所の重い歴史を語りかけています。
一ノ倉沢旧道出合から湯檜曽川近くに下りて、新道を歩いて戻ってきました。この日はガイディング実技だけで終わり、夜にはショートロープのセット方法を教わりました。

2日目。ロープウェイで天神平に上がり、スノーシューで稜線まで登ります。けっこう斜度のある斜面を登るように指示され、そのときに雪崩を避けるラインを考えているかテストされました。問題があると止められて、何が悪かったのか講習されます。「自分が登れるかどうか」ではなく、お客さんを「安全に登らせられるかどうか」が視点になります。でも、講習生は息を切らせ、自分が登るのでせいいっぱい……みたいな様子でした。
稜線に出て、熊穴沢方面に少し進み、下りになったところで固定ロープのセットを指示されました。固定ロープは無雪期の講習でもやっているので、説明なしで講習生が各自セットします。ちなみに、ただ固定ロープをセットすればよいのではなく、ガイディングしている状態から、あらかじめザック上部に入れて用意してあったロープを末端から引き出して、支点の木にロープ末端を結び、次の支点のカラビナにロープ中間を固定、第3の支点のカラビナにロープ中間を固定、最後の支点にロープ(中間または末端)を固定、これぐらいでセット完了になります。
しかし、全員が雪を考慮していないと指摘されました。支点が細めの木の場合、雪の上に出た部分にセットするのは危険です。雪を掘り下げて、しっかりと効いた部分を出して、そこにセットするのが正解です。

P03: オートブロックのセット、スリング右の結び目は長さ調節のためのもの

さらに先へ進み、天神平からのトラバース道が合流する地点から、右折して天神平へ戻ります。その途中で、ロープによる1/3引き上げをやりました。これは滑落などで歩けなくなった人を、安全地帯まで引き上げるシンプルな方法で、ロープ、スリング、カラビナだけを使って引き上げます。手順の都合上、ムンターヒッチでの引き下ろし技術と、次のように組み合わせて行います。
(1)アンカーを作り、セルフビレイをセット
(2)ロープ末端をお客さんに結び、アンカーにムンターヒッチをセット
(3)お客さんを下ろす。一定距離を下ろしたら安全な場所で停止し、ミュールノットで仮固定、オーバーハンドノットで本固定する。お客さんへ待機するよう指示を送る
(4)1/3引き上げシステムをセットする(下部クレムハイスト、上部オートブロック)
(5)ムンターヒッチの固定を解除し、お客さんを最初の地点まで引き上げる
この一連の実技は、登山ガイドの検定試験の中では、最も複雑な項目のひとつといえます(ショートロープは試験科目に入っていません)。ここではピッケルアンカーを作ったうえで、1/3引き上げの実技をできるまでやりました。しかし、できない人も残ったので、あとでまた講習してもらえることになりました。

スキー場に戻り、かつて雪崩事故があったという斜面を靴だけ(アイゼンなし)で登りました。悪場の歩行かキックステップ(またはカッティング)が試されていたと思います。講師は指摘しませんでしたが、ガイドとしては、お客さんが安全かつ楽に登れるように、キックステップやカッティングで安定した足場を作りながら登るべきだったと思われます。講習生のかたは自分が登るだけでせいいっぱいのように見えました。
途中で、左側の灌木帯の木を使って、ツエルトを張るように指示されました。ここはかなり条件が悪かったです。ガイド講習でのツエルトの張り方は決まっています。
(1)ロープを2つの支点(ここでは木)間に張り渡す
(2)ロープの2点にスリングをフリクションノット(クレムハイスト)で結ぶ
(3)そのスリングに、カラビナでツエルトの頂点を連結する。スリングを動かしてツエルトを張る
(4)中の空間を広げ、底のシートを整地してできるだけ平らにする
フリクションノットはクレムハイスト以外の方法でも可と思います。また(4)の居住性は、実技試験でどの程度問われるか不明ですが、底から枝が突き出てないか、大きな石がないかなど調べられるようです。これを一定時間(15分程度と思われます)で完了することが要求されます。ツエルトはすぐ張れるように常時準備しておくこと、張るときに強風で飛ばされない工夫(カラビナで身体にツエルトの一端をかけておくなど)が必要です。
この日も夜に1時間ほど、ショートロープと1/3引き上げをやりました。

3日目、またマチガ沢出合へ行きました。途中まではガイディングの実技です。前夜はけっこうな量の雪が降ったので、山は美しい雪景色が見られました。
マチガ沢で3つのことをやりました。厳剛新道を少し入ったところで、ビバーク用ツエルトのセットです。昨日よりも条件のよい場所で張りやすかったです。講習生の1~2人用ツエルトはコンパクトで小さく、お客さんが3人入ることができないか、ガイドが入ることができない、と指摘されました。私の1~2人用ツェルトは旧タイプで、4人が窮屈でなく腰を下ろすことができます。ただし、軽量化された現代のツエルトの2倍以上の重量があります。ともあれ、1~2人しか入れないツエルトはガイド用には使えません(しかし、そのことは実技試験で要求されず、結び方が正しければ試験は通るらしいです)。

P04: ザック搬送のためのセット

ザックでの背負い搬送をやりました。要救助者はハーネスをつけている前提です。
(1)空にしたザックのショルダーベルトにスリング+カラビナをセット
(2)そのスリングをクロスさせたうえで、要救助者のハーネスのウエスト~レッグベルト連結部にカラビナをかける
(3)ショルダーベルトを一度緩めて、救助者が肩を入れ、背負う態勢になってからショルダーベルトを締め直す
(4)立ち上がる際に、お客さん1~2人に補助してもらう。補助をお願いする際には、わかりやすく明確に指示をする必要がある
以下は講習されたものではなく、私自身の考えた方法のメモです。
 ・1人は背側に回り、要救助者のヒップベルトに手をかけて持ち上げる
 ・1人は救助者の前で、ショルダーベルトに手をかけて持ち上げる
次に、アイゼンを装着し、岩場の通過のシミュレーションをしました。短い岩場の通過で、お客さんをどうガイドするかという問題です。しかし、雪が少なすぎるため、アイゼンで通過するのが難しすぎて、うまく実技できなかったと思います。予定していた支点がなくなっていて、固定ロープも張れませんでした。以下は講習されたものではなく、このテーマについての私個人の整理です。
(1)固定ロープをセットする
(2)あらかじめ足場、手がかりの位置を示し、通過のしかたと注意点を説明する
(3)1人ずつ、通過する際の動作をアドバイスしながら、通過してもらう
(4)通過し終えた人に待機場所を指示する
※全員分のハーネスはないので、待機してもらう場所は、セルフビレイがなくても安全である必要があります。

P07: 旧道を歩く

帰りの途中で、もう1度、1/3引き上げをやりました。このときが一番本格的な設定で、10mほどの長い引き上げはきつかったです。これまでの反復練習のおかげで、講習生全員がだいたいできるようになりました。
しかし、積雪期安全管理技術の実技試験を受験しなければ、1/3引き上げの試験はありません。私はまだ予定を決めていませんが、ほかの3人は日本雪崩ネットワークの認定講習を受けるので、そうすると上記試験は免除されることになっています。
雪崩講習を受ければ、雪崩関係だけでなく、ロープワークその他の安全管理技術の試験まで免除されるとは、何か変だなあ?と疑問を感じます。これでは、ロープワークや雪上ビバークのできない、または苦手な登山ガイドが送り出されてしまうのではないでしょうか?(とはいえ、受講生の身分でよけいなことは言わないほうがいいでしょう)

P05: ツエルト担架のセット1。とても簡単にできる
P06: ツエルト担架のセット2

講習の全日程が終わり、武川ガイドは最後に次のようにアドバイスしてくれました。
「皆さんはステージ2の資格を取れたら、ガイドの仕事を具体的に始めてがんばられるとよいと思います。ステージを上げる方法もありますが、これ以上のステージは相当厳しいので、甘くは考えないほうがいいです。ステージ2は、十分にガイド業を展開できる資格ですので、まずはガイドとしてよい仕事を目指してください。上級を目指すよりも、そちらに労力を注がれるほうがお勧めできます」
自分に言われているような気がしました。
何のためのガイドかといえば、山が好きだがうまく山へ行けないでいる人がいて、その人の手助けをしながらいっしょに登り、気持ちよく山の時間を過ごすのが目的です。よいガイドの仕事をするのが目的で、上級の資格に挑戦して突破することが目的なのではありません。
講習内容の多くの部分は、以前からやっていたことと同質のもので、少し安心しました。ひさびさに登山技術を使い、考え、チェックするような作業を楽しんでいました。具体的な目標をもって山とかかわろうとしている3人(男性2人、女性1人)は前向きですがすがしく、彼らと3日間、とても気持ちのよい時間を過ごすことができました。

[10月4週]道迷いから死亡にいたった遭難事例

[10/22~28の遭難関係ニュースから]
(遅くなりましたが)10月第4週の遭難まとめです。

高山では紅葉シーズンが完全に終わりました。雪のシーズンである12~1月までは比較的入山者は少なく、それにともない遭難も少なくなる可能性があります。それとは別に、道迷いから死亡にいたる遭難事例がいくつか見られ、注目されました。
これからは最も日の短い季節となり、登山にはリスクの高い状況となります。きちんと計画性をもって、時間の余裕を十分に保ちながら、登山に出かけることが重要です。
富士山では、自分の登山の様子をライブ送信中に滑落遭難してしまうという異様な事例が、マスコミなどで注目されました。登山準備が不十分なようですし、登山のやり方が誤っているとしか言いようのない事故でした。

10/22(火)奥秩父・鶏冠山から下山中の男女(45・33)が道に迷う。西沢渓谷(西沢山荘の北西1800m)で発見救助
10/22(火)傾山地新百姓山へ杉ヶ越から入山した男性(64)が行方不明。10/28山菜採りの男性がおもち谷で発見通報
10/22(火)由布岳で男女(62・58)が16:20「道に迷った」と通報。10/23熊本県防災ヘリが救助
10/24(木)三才山(松本市)の山林でキノコ採りの男女(73・71)が道に迷い行動不能。10/25松本署が救助
10/25(金)野地温泉から安達太良山へ入山した男女(70・69)が悪天候などで動けなくなる。10/26心肺停止で発見
10/26(土)南アルプス仁田岳南東の山中で男性(55)が滑落負傷して救助要請。10/27静岡中央署が救助
10/26(土)南アルプス前衛七面山で男性(79)が下山中に足を滑らせ転倒して左足首骨折。防災ヘリが救助搬送
10/27(日)塩原・八方ヶ原歩道で男女(60・59)が登山道から外れて道に迷う。警察・消防が救助、同伴下山
10/27(日)妙義山奥ノ院鎖場で男性(55)が岩場をトラバース中に滑落した模様。防災ヘリが搬送、死亡確認
10/28(月)大菩薩峠から小菅村へ下山中の男女(76・64)が高指山付近で道に迷う。上野原署・消防らが救助
10/28(月)富士山須走ルート山頂付近で男性(47)が登山をライブ配信中に滑落。動画を見た複数の視聴者が警察に通報した。10/30七合目(3000m)で遺体発見
10/28(月)大山・甲ヶ山で男性(49)が仲間と別れ1人で下山したまま行方不明。10/29登山道を外れた沢で遺体発見
10/28(月)熊本県美里町の山中で女性(79)が伐採作業の立ち会い後、1人で下山中に行方不明。警察・消防が捜索中

気にかかった遭難事例

●新百姓山の遭難男性、遺体で発見
10月22日、九州・傾山地の新百姓山へ登った男性(64)が戻らず、行方不明になりました。23日、同居する妹が警察に届け出て、昼前に杉ヶ越登山口付近で、遭難男性のオートバイが見つかりました。その後、杉ヶ越登山口から山頂までのルートを中心に捜索しましたが、発見されませんでした。
10月28日14時30分過ぎ、新百姓山の西2kmにある「おもち谷」で、山菜採りをしていた男性が、倒れて死亡していた遭難男性を発見、通報しました。

新百姓山の西2kmということから、重内(おもち)谷本流に近い位置まで下っていたと思われる
原本:yamareco – 2017年5月4日 yamaumihitoさんの山行記録より

発見場所の詳細は不明、死因も把握できていません。おもち谷は新百姓山のすぐ西側にある谷で、地形図を見ると、新百姓山~杉ヶ越間のルートからいくつかのポイントで、おもち谷に迷い込みやすいことが推測できます。このことを逆に考えると、迷ったら素直に引き返せば、もとの正規ルートに戻りやすいことを意味します。
10月23日に発見されなかったことが不運でした。23日午後から24日にかけて雨になった可能性が高いです。谷を強引に下って抜け出そうとするのではなく、なるべく尾根に近い位置にとどまってビバークしていれば、発見されやすかったと思います。

●大山山系甲ヶ山でも、遭難男性死亡
10月28日、友人と4人で甲ヶ山などに登った後、午後から別のルートを1人で下山した男性(49)が、夕方になっても戻らず、携帯電話でも連絡がつかなくなりました。友人が警察に通報し、29日朝から捜索が開始されました。13時30分ごろ、消防ヘリが登山道近くを流れる沢沿いに倒れている男性を発見し、救助しましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。
男性は28日18時30分ごろ、家族に電話で「道に迷ったので帰りが遅くなる」と話していました。大山山系で今年初めての遭難死亡者になりました。

前事例同様、道迷い時の対応に失敗した結果、滑落または低体温症で死亡してしまった事例と言えます。インシデント(遭難寸前の状態)が起こったとき、サバイバル状態の中でも生き延びられる知識と装備を持つことが、この時期の登山には重要だと思います。「軽量化」で緊急用装備まで省略してはいけません。
※上記事例のかたがそうだったという意味ではありません。

[10月3週]黒部川下ノ廊下で遭難事故多発

[10/15~21の遭難関係ニュースから]
(遅くなりましたが)10月第3週の遭難まとめです。

黒部川下ノ廊下で遭難事故が多発しました。10月19~21日の3日間で4件の事故が発生(遺体発見を含む)、すべて死亡事故となりました。また、前週にも2件の事故があり、1人が死亡しています。下ノ廊下ではこのように、事故多発になる年が、数年に1度の割合で現れるようです。
下ノ廊下は、黒部峡谷が3000m級の山脈に最も狭められた部分にあります。絶壁の中に一筋刻まれた水平歩道を歩きますが、一歩踏み外すと数10m以上の致命的な転落・滑落となってしまいます。例年、雪のブロックが完全に消えて、ルートの点検が終了する9月上旬以降からしか入山できません。

10/15(火)那須・茶臼岳で女性(64)が下山中に石につまずいて転倒し左脚骨折など。消防・警察らが救助
10/16(水)男鹿山塊黒滝山で男性(57)が「遭難した」と110番通報。地上とヘリで捜索し、防災ヘリが救助
10/16(水)雨飾山で男性(78)が仲間と2人で下山中、ハシゴ場でスリップして滑落負傷。10/17大町署が救助
10/16(水)北アルプス槍ヶ岳で女性(48)が槍ヶ岳山荘を出発後しばらくして転倒、左足首骨折。県警ヘリが救助
10/17(木)朝日連峰祝瓶山で女性(70)が下山途中に登山道から30m滑落し左足を負傷。小国署が背負い搬送
10/18(金)北アルプス白馬乗鞍岳で男性(57)が天狗原付近を下山中、転倒負傷し行動不能。大町署・遭対協が救助
10/19(土)北アルプス下ノ廊下十字峡付近1000mで男性(70)が河原に倒れているのを防災ヘリが発見。体に複数の傷あり、死亡確認
10/20(日)蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅付近で男性(63)が友人らと離れ道に迷う。3km離れた坊平高原近くで救助
10/20(日)守門・青雲岳山頂付近で男性(70代)が転倒して腰を打ち行動不能。別の登山者が通報、防災ヘリが救助
10/20(日)北アルプス下ノ廊下蜆谷付近で男性(41)が狭い道ですれ違う際に転落。防災ヘリが100m下で遺体発見
10/20(日)北アルプス下ノ廊下で男性(52)が帰宅せず家族が通報。白竜峡付近の登山道から20m下の河原で遺体発見
10/21(月)日光白根山・五色山から湯元へ下山途中の男性(26)が道に迷う。日光署が国境平東方で発見救助
10/21(月)奥秩父・西沢渓谷(西沢山荘の西650m)で男性(59)が写真を撮ろうとして足を滑らせ転倒、右足首骨折
10/21(月)奥秩父・小川山の岩場で男性(48)がロッククライミング中に転落して負傷。佐久署・消防が救助
10/21(月)北アルプス下ノ廊下白竜峡付近で女性(66)が黒部川近くへ20m転落。防災ヘリで搬送後死亡

[その他のニュース]
●登山者見守りシステムに5Gドローン活用
10月16日、信州大学、駒ヶ根市、KDDI、プロドローン、中央アルプス観光は、5Gを活用したドローンによる登山者見守りの実証実験を、中央アルプス千畳敷で実施しました。
実験に使われたドローンには、5Gタブレット、4Kカメラ、拡声器などを搭載。遭難者をドローンが検出すると、自律飛行で現場に飛び、遭難者の身体の状況などを確認して救助隊本部に伝送します。一方、拡声器により、救助隊本部から遭難者を呼びかけを行うことができます。これにより、救助隊員の負担が大幅に軽減されるそうです。

気にかかった遭難事例

●黒部川下ノ廊下で遭難多発

  • 10月10日14時10分ごろ、東谷吊橋付近(標高約900m)で、女性(71)が約60m転落しました。防災ヘリで病院に運ばれましたが、全身を強く打っており、約3時間後に死亡が確認されました。事故が起こったのは同行者と2人で阿曽原温泉小屋に向かう途中、現場は急勾配で幅の狭い下りの登山道でした。
  • 10月19日9時ごろ、十字峡付近(標高約1000m)の河原に男性(70)が倒れているのを防災ヘリが発見し、死亡を確認しました。男性は15日から入山しており、帰宅予定の18日になっても戻らないため、19日から捜索していました。約100m滑落したと見られ、死因は外傷性ショックでした。
  • 10月20日8時ごろ、蜆谷付近(標高約950m)で男性(41)が滑落し、防災ヘリが約100m下の岩場で発見、救助しました。病院へ搬送後に死亡が確認されました。男性は水平歩道を単独で下山途中でした。
  • 10月20日14時ごろ、白竜峡付近(標高約1050m)の河原に男性(52)が倒れているのが発見され、防災ヘリが収容しました。約20m転落したと見られます。17日に黒部ダムから入山の予定で、同日遭難したと推定されます。
  • 10月21日8時45分ごろ、別山谷出合付近(標高約1080m)で、7人で欅平に向かっていた山岳会グループの女性(66)が、登山道から約20m下の河川敷に転落しました。近くにいた別グループの男性が、携帯電話の通じる所まで移動して通報しました。防災ヘリで病院へ搬送、死亡が確認されました。

[10月2週]森吉山麓小又峡でツアー客とガイドが遭難死

[10/8~14の遭難関係ニュースから]
(遅くなりましたが)10月第2週の遭難まとめです。

中部山岳エリアの高山帯や東北地方の山では、10月1週が紅葉のピークです。その時期を過ぎて遭難発生件数が急減しました。入山者が減ったことを示しているのでしょう。
しかし、印象に残る遭難が起こっています。秋田県森吉山麓の小又峡で、ツアー登山の女性客と男性ガイドが、増水した流れにのまれて水死しました。また、北アルプスの黒部峡谷で転落・滑落事故が起こっています。黒部峡谷の「下ノ廊下」はこれからが紅葉シーズンとなり、翌週にかけて多くの事故が連続して発生しています。

10/8(火)森吉山小又峡で増水した沢に男性ガイド(73)と女性(74)が流され死亡。男性は10/11下流で遺体発見
10/8(火)北アルプス下ノ廊下黒部別山谷付近で女性(70)が徒渉時に流されて歩けなくなる。10/9防災ヘリが救助
10/8(火)北アルプス黒部源流登山道で女性(40)が濡れた石に足を取られて転倒し左足甲を骨折。11/9防災ヘリが救助
10/10(木)岩手山七滝ルートへ入山したと見られる男性(62)が帰宅せず、家族が届け出る。七滝登山口に車発見
10/10(木)古賀志山(宇都宮市)で女性(32)が登山道から6m滑落して顔や左膝に打撲傷。防災ヘリが救助
10/10(木)中央アルプス宝剣岳から千畳敷へ下山中の女性(69)が転倒して負傷。駒ヶ根署・遭対協が救助
10/10(木)北アルプス下ノ廊下東谷吊橋付近で、女性(71)が急勾配かつ幅の狭い登山道で足を滑らせ60m転落死亡
10/11(金)北アルプス奥穂ザイテングラードで男性(70)が下山中にバランスを崩して転倒。県警・遭対協が救助
10/11(金)北アルプス常念岳から下山中の男性(67)が前常念岳において道に迷い行動不能。安曇野署が救助
10/13(日)中央アルプス大川入山から下山中だった女性(53)が転倒して足首を負傷。静岡県防災ヘリが救助
10/14(祝)大雪・愛別岳で男性(38)が行方不明となり、10/21山頂の南1km、登山道から20m離れた斜面で遺体発見

気にかかった遭難事例

●森吉山小又峡でツアー登山の女性客とガイドが水死
この週に起こった中で、最も大きな遭難事故でした。
10月8日午後、森吉山麓の小又峡遊歩道で、女性ツアー客と男性ガイドが増水した川に流されました。女性(74)は死亡が確認されました。男性ガイド(73)は行方不明になりましたが、3日後の11日10時ごろ、事故現場から約50m離れた三角滝近くで遺体が発見されました。
首都圏からのツアー登山は、秋田駒ヶ岳と森吉山に登る1泊2日の行程で、20~70代の18人が参加していました。当日は16人が仙北市の宿泊地から森吉山に向かう予定でしたが、悪天候のため、添乗員とガイドが相談して目的地を小又峡に変更しました。小又峡への変更は、このツアー会社では初めてだったそうです。
小又峡は、平常であれば地元住民や子どもでもレジャーで訪れる場所です。しかし、急激な雨が降ったときには、増水が危険と指摘する地元の人もいます。男性ガイドも、当然、そのような事情に精通していたと思われます。
11時ごろ、遊歩道を歩き始めたときは小雨が降る程度で、沢の水深もそれほどではなかったそうです。しかし、途中でアーチ状の橋を渡ったあとで雨が強くなったため、ガイドの判断で引き返すことにしました。
戻ってアーチ状の橋を渡ると、橋げたで15段ほどの階段から岩盤に下ります。その階段の下1~2段が水流に浸かった状態になっていました。岩盤が濁流でおおわれ、膝下まで水に入って渡らなくてはならない状況でした。ガイドはツアー客の手を取りながら、横歩きで1人ずつ、水に浸かった場所を渡らせました。9人が渡り終え、10人目の女性が渡るときにバランスを崩して転倒し、ガイドも転んで、2人はあっという間に流されました。
橋の上には添乗員を含め7人が残っていましたが、4人は自力で下流の遊歩道まで渡り切り、3人は水位が下がるのを待って渡ったそうです。

当日の天気図、阿仁合では8日9~11時に13mmの雨が降った(出典:気象庁・日々の天気図)

目の前の状況判断は、現場にいる人しかできません。遭難事例を語る場合、現場を見ていない第三者が批評的なことを言うのは慎重でなくてはいけません。
男性ガイドは、サポートしながら何とか渡れる状況だと考えたのでしょう。しかし、1人の女性が渡れずに失敗しました。ガイドは、引率する全員(この場合16人)の歩行能力、技術レベル、体調などの身体状況まで、観察のうえ把握していなくてはならないのです。
自分の立場に置き換えたら、事故を防げたでしょうか?
登山ガイドという仕事のきびしさを思い知らされる遭難事例でした。