[4/23~29の遭難関係ニュースから]
4月第5週の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。
連休前半の状況です。連休初日から3日間で少なくとも18件の遭難がありました。そのうち5件が山菜採り、1件が山仕事(害獣駆除)、1件が観光、11件が登山中の遭難事故でした。
4/27(土)山形県西川町の山林で、山菜採りの男性(73)が滑落死亡
4/28(日)=発見日/鳥海山矢島口八合目付近で、男性(60代)が発病して死亡
4/28(日)福島県会津美里町の山林で、山菜採り中の姉妹(66・62)が体長1mのクマに襲われ顔や腕に重軽傷
4/28(日)新潟県で山菜採り中の滑落死亡事故が3件発生。新発田市で男性(81)、柏崎市で男性(80)、十日町市で女性(67)が死亡
4/28(日)新潟県妙高市で、作業中の猟友会男性(68)がクマに襲われ負傷
4/28(日)日光・明神ヶ岳で男性(59)が下山中に道に迷い、無事救助される
4/28(日)尾瀬・至仏山から下山中の男性(45)が雪面に足を引っかけて転倒、左足骨折
4/28(日)中央アルプス空木岳・池山尾根で男性(49)が20m滑落、左足首骨折の模様
4/28(日)=発見日/北アルプス立山連峰雷鳥沢で男性(79)が雪に埋もれて発見、死亡確認
4/28(日)=発見日/北アルプス八方尾根上部で倒れた男性(57)を発見、死亡確認
4/28(日)=発見日/北アルプス北ノ俣岳で男性(50)が死亡。前日山小屋に「たどり着けない」と連絡があったもの
4/28(日)=発見日/北アルプス槍沢で倒れた男性(55)を発見、死亡確認
4/28(日)北アルプス涸沢岳で男性(52)が雪崩に巻き込まれ100m滑落、腰を打撲し軽傷
4/28(日)兵庫県新温泉町「シワガラの滝」へ向かった男性(56)が山道から30m下の沢へ滑落、重傷の模様
4/28(日)熊本県美里町の権現谷で山道を散策中の男性2人が崖下に転落、男性(64)が死亡
4/29(月)愛鷹連峰鋸岳を登山中の男性2人(40・14、親子)が、登山道崩落により行動不能。県警救助隊が同伴下山
北アルプスで低体温症による死亡遭難4件
4月28日に北アルプスで単独登山の男性が4人遭難死しました。その前日は吹雪状態だったと思われ、悪天候に耐えきれずに倒れ、翌日あいついで心肺停止状態で発見されました。この4件は共通する要素の多い事例でした。
北ノ俣岳で遭難した男性(50)は、宿泊予定だった山小屋に15:30ごろ「たどり着けそうにない」と連絡していました。山小屋の男性3人が救助に向かったものの、悪天候のため断念したそうです。山小屋~北ノ俣岳間は、無雪期のコースタイムで登り2:00、下り1:30の行程です。
雷鳥沢の男性(79)は2560m地点で発見されました。別山乗越の小屋へ無雪期のコースタイムで0:40、雷鳥沢へ下るのも0:40ほどの距離でした。
八方尾根の男性(57)は標高2500m付近で発見されました。唐松岳頂上山荘へ通常なら0:30ほどの距離ですが、積雪と悪天候のため実際はもっと時間がかかったでしょう。
槍沢の男性(55)は標高2800m付近に倒れていました。休業中の殺生ヒュッテへ登り0:20、槍岳山荘(営業中)へ登り1:00ほどの距離でした。
これらの遭難原因は、悪天候に対して行動中止、避難などの防御行動をとれなかった点にあります。「30分~1時間ぐらいの距離なら、悪天候でも何とか行ける」という考えが根底にあったことでしょう。しかし、そんな予測がまったく通用しなくなるのが、気象遭難、低体温症といった事態なのです。
低体温症の恐ろしさは、経験したことがないと実感できません。コア体温(内臓などの深部体温、直腸温に近い)が2度低下して35度になると、初期段階の低体温症となるのですが、その時にはもう自分自身で正常な対応ができにくくなるそうです。
同行者がいれば、初期の低体温症になったときでも、避難、保温、救助要請などの行動がとれる可能性があります。しかし、一人で低体温症になると何もできなくなります。
単独登山のときには、本人が自覚できないうちに初期の低体温症になって、その結果、遭難してしまうといった恐ろしい事態が予想できます(筆者自身、経験したことはありませんが)。
ですから、単独登山のときには、コア体温36度(「寒い」という感覚、「震え」の身体反応が見られる)のうちに急いで避難しなくてはなりません。悪天候でもがんばって歩き続けるというのは、状況によっては非常に危険なことです。
以上のようなことを、私たちは遭難事例から学ぶべきです。
●明神ヶ岳(1595m):奥鬼怒・湯西川にあって、日光山系から独立した山塊をなしています。南北に3つの1500m峰があり、中央が最高峰の明神ヶ岳です。典型的なヤブ山でしたが、現在は登りやすいルートができているようです。
●シワガラの滝:扇ノ山北方、岸田川の左岸に分かれる小又川渓谷の名瀑。洞窟の中に滝つぼがある特異な形で有名です。駐車場から山道を約30分歩きますが、後半は沢沿いの荒れたルートになって危険なようです。
●洞ヶ岳(997m):熊本県美里町の東方にあって山系としては九州脊梁山地に属します。事故が起こったのは洞ヶ岳山麓、緑川ダム湖周辺と思われます。権現谷がどこにあるかは調べられませんでした。
●鋸岳(1296m):富士山南方にある愛鷹連峰主稜のうち、北半部の割石峠~位牌岳間にある難峰です。遭難の親子は鋸岳に東側から直接登るルートを行き、山頂直下で身動きできなくなったものと思います。グレード判断が誤っている(と思われる)遭難事例は、けっこう起こっているようです。