[7月4週]本格的夏山シーズン始まり、遭難発生急増

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[7/23~29の遭難関係ニュースから]
7月第4週の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

7/24(水)北陸、近畿、四国、九州で梅雨明け
7/25(木)中国で梅雨明け
7/27(土)台風6号、三重県に上陸(熱帯低気圧に変わり東海上へ離れる)
7/28(日)東海で梅雨明け
7/29(月)関東甲信で梅雨明け。全国的に夏空が広がり、山間部では雷雨あり

この週、関東甲信以南までが梅雨明け、本格的な夏山シーズンに入りました。それとともに遭難発生も多くなり、マスコミ報道などから把握した事例は7/23~29の7日間で38件にのぼっています。北アルプスでの遭難が非常に多くなっています。

7/23(火)羊蹄山(北海道)頂上付近で11:00ごろ、男性(67)が倒れ心肺停止状態となる。5.5H後に発見、死亡確認
7/23(火)飯豊連峰三国岳剣ヶ峰で男性(50代)が滑落して頭部を負傷、三国小屋へ退避。7/24新潟県防災ヘリが搬送
7/23(火)南アルプス栗沢山頂上付近で女性(50)がバランスを崩し転倒、頭を骨折など重傷。小屋・南ア署などが救助
7/23(火)南アルプス赤石岳砲台休憩所付近で女性(54)が滑落して足を骨折のもよう。2.5H後静岡市消防ヘリが救助
7/23(火)南アルプス茶臼岳ウソッコ小屋付近で男性(65)が増水した沢を迂回中に20m滑落、左手小指骨折など。消防ヘリが救助
7/23(火)北アルプス立山・大汝山山頂付近で男性(83)が体調不良で動けないのを警備隊員が発見。県警ヘリが搬送
7/23(火)北アルプス剱沢キャンプ場付近で女性(64)が石につまずいて足をひねり右足首骨折。7/24県警ヘリが搬送
7/23(火)北アルプス烏帽子岳で女性(69)が仲間4人とブナ立尾根を下山中に転倒負傷。大町署救助隊などが救助
7/24(水)奥秩父西沢渓谷で女性(67)が登山道から3m下の河原に転落、全身打撲など。日下部署・消防が救助
7/24(水)北アルプス白馬大雪渓で男性(74)が大雪渓を下山中に転倒負傷。県警ヘリが救助
7/25(木)道志山塊室久保川で女性(55)が沢登り中、石に足を滑らせて転倒し右脚骨折。大月署・消防が救助
7/25(木)北アルプス蝶ヶ岳でツアー参加の女性(67)が三股へ下山中につまずいて転倒負傷。県警救助隊などが救助
7/26(金)奥秩父廻目平で男性(48)がクライミング中にロープ操作を誤り転落負傷。山梨県防災ヘリが救助
7/26(金)富士山富士宮口九合目付近で男性(55)が岩に足を取られて転倒、左足首骨折の疑い。天候回復を待ち7/28救助
7/26(金)北アルプス前穂高岳で男性(73)が重太郎新道を下山中につまずいて転倒負傷。県警ヘリが救助
7/27(土)雄物川左岸斜面(秋田市)で女性(82)が山菜採りに出かけたまま帰宅せず。7/30防災ヘリが発見救助
7/27(土)飯豊連峰三国小屋付近で男性(60代)が岩場で足を滑らせて3m転落、額などにけが。2H後防災ヘリが救助
7/27(土)南アルプス塩見岳周辺でツアー参加の男性(67)が分岐で道を間違えはぐれる。7/28熊ノ平小屋へ自力避難
7/27(土)北アルプス剱岳早月尾根で女性(43)が残雪でバランスを崩し20m滑落、頭を強打。県警ヘリで救助後意識回復
7/27(土)北アルプス剱沢の山小屋で女性(44)が高山病のため動けなくなる。未明0:40通報、山岳警備隊が搬送
7/27(土)北ルプス黒部五郎岳カール内で女性(69)がバランスを崩して転倒し左足首骨折など重傷。7/28県警ヘリが救助
7/27(土)北アルプス北穂高岳で女性(51)が涸沢へ下山中に足を滑らせ転倒負傷。県警救助隊が救助
7/27(土)北アルプス北穂高岳で女性(72)が涸沢へ下山中につまずいて滑落負傷。県警救助隊が救助
7/28(日)八ヶ岳峰ノ松目付近で女性(68)が硫黄岳に向けて登山中、道に迷い行動不能。7/29茅野署などが救助
7/28(日)北アルプス雪倉岳北側稜線2330m地点で男性(31)が濃霧のため道に迷う。山岳警備隊・遭対協が救助
7/28(日)=発見日/北アルプス黒部湖畔1500m地点で頭部を負傷した男性(74)が倒れているのを登山者が発見通報
7/28(日)北アルプス雲ノ平登山道で男性(60)が足を踏み外して転倒、右足首骨折。山荘まで歩き、県警ヘリが救助
7/28(日)北アルプス燕岳合戦尾根で男性(51)が下山中に足を滑らせ転倒負傷。県警ヘリが救助
7/29(月)日高連峰カムイエクウチカウシ山で男性(40代)がハイマツ帯から飛び出た熊に襲われもみ合う。頭・背中などに重傷
7/29(月)谷川岳西黒尾根で登山者(性別・年齢不明)が下山中に転倒して滑落負傷。ヘリで救助
7/29(月)西丹沢・切通峠付近で男性(79)が三国峠から高指山を目指す途中で道に迷う。19:05富士吉田署が救助
7/29(月)八ヶ岳亀甲池付近で女性(73)が「疲れて動けない」と山小屋を通じ救助要請。茅野署・遭対協が救助
7/29(月)中央アルプス木曽駒ヶ岳から中岳へ下山中の男性(73)が滑落負傷。駒ヶ根署・遭対協が救助
7/29(月)=通報日/北アルプス剱岳へ7/25に入山した男性(69)が行方不明。8/1小窓ノ王で全身に擦り傷のある遺体発見
7/29(月)北アルプス剱岳源次郎尾根側壁で男性(67・41)が装備不足のため急斜面で動けなくなる。気づいた登山者が通報
7/29(月)北アルプス祖父岳~雲ノ平山荘間で男性(61)が濡れた岩に足を取られ転倒、左足アキレス腱断裂。7/30ヘリ救助
7/29(月)=通報日/北アルプス穂高連峰で男性(38)が7/24に入山後行方不明、登山届未確認、目撃情報もなし。8/9奥穂2300m斜面で遺体発見
7/29(月)九州津波戸山(大分県杵築市)で女性(50代)が誤って登山道脇の斜面を30m滑落、頭などに軽いけが。防災ヘリが救助

[その他のニュース]
●ヤマレコ地図に遭難場所を表示
7/23(火)登山者向けSNS「ヤマレコ」に、長野県内での過去の遭難発生場所を表示した「山岳遭難マップ」が掲載されることになりました(すでに掲載されています)。このマップは長野県警が協力し情報提供しており、当面は2017年度の北・中央・南アルプスと八ヶ岳での遭難データで、転倒、転落、滑落事故の発生箇所が計125カ所表示されています。今後、2018年度のデータも追加されていくようです。また、日本アルプス・八ヶ岳以外の山域が加えられていく可能性もあるでしょう。しっかりと運用されれば、オフィシャルな情報だけに、登山者にとって有益なものとなるでしょう。※『山と溪谷』2019年9月号ヤマケイ・ジャーナルに関連記事を書きました。

●剱岳の登山道に「スマート山岳道標」
7/25(木)毎日新聞より/富山県では7月中旬に、北アルプス剱岳の登山道付近10カ所に「スマート山岳道標」を設置しました。県では今年の夏山シーズンから、日本山岳ガイド協会が運営する「コンパス」での登山届ができるようになりました。コンパスのアプリを入れたスマートフォンで登山届を提出していれば、そのスマホを携帯したまま「スマート山岳道標」の近くを通過すると通過時刻が記録され、その情報が県警や家族などにも共有されます。以前お伝えした、ヤマップの「みまもり機能」と似たシステムです。

●鹿島槍ヶ岳で遺体発見
7/26(金)鹿島槍ヶ岳の北側2100m地点で富山県警山岳警備隊員が男性(47)の遺体を発見しました。今年3月24日に発生した滑落事故で、男性(44)1人は救助され、もう一人は現地に残されたままになっていました。死因は滑落による頭部損傷とのことです。

●山梨県の遭難発生最多ペース
7/26(金)山梨日日新聞より/山梨県警が発表した今年上半期(1~6月)の山岳遭難発生状況は、56件(前年同期比17増)、65人(同9増)で、過去最多だった2017年を上回っている状況です。全国的に多い「道迷い」ではなく、「滑落」が最も多いそうです。

気にかかった遭難事例

●剱岳北方で行方不明者、遺体で発見
7月25日に北アルプス剱岳へ単独で入山した男性(69)が下山せず、行方不明になりました。下山予定日の翌日29日、家族が携帯電話にかけてもつながらないため、男性が所属する山岳会を通じて室堂警備派出所に連絡しました。29~31日は発見できませんでしたが、8月1日、県警ヘリが小窓ノ王付近の岩場に横たわっている男性の遺体を発見し、収容しました。当初、めだった外傷はないと報道されましたが、全身に擦り傷があり、滑落した可能性があるとのことです。死因は低体温症でした。
単独登山で剱岳北方稜線をめざすのは、かなり実力も経験もあるベテランだったと推測されます。どういうミスで遭難してしまったのでしょうか?