[8/6~12の遭難関係ニュースから]
8月第2週の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。
「山の日」ウイークでした。前週に次いで多くの遭難事故が起こり、なかでも北アルプスに集中して発生しています。死亡事故は、発生件数の割には多くないと言えるかもしれませんが、剱岳源次郎尾根、常念~蝶縦走路、黒部川上ノ廊下、奥穂高岳ジャンダルムで起こっています。北アルプス以外での死亡事故は、富士山、南アルプス北岳~間ノ岳、八海山~中ノ岳、日高山脈カムイエクウチカウシ山で起こっています。また、富士山御殿場口五合目で登山者と思われる遺体が発見されています。
8/6(火)鳥海山湯ノ台口ルートで男性(47)が登頂を断念し引き返すが、途中で暗くなり行動不能。8/7発見
8/6(火)月山~念仏ヶ原間で男性2人(80・78)が体調不良で動けなくなる。通りかかった男性が通報、8/7救助
8/6(火)湯ノ丸高原・烏帽子岳で女性(76)が下山中道に迷い、さらに転倒負傷。上田署・消防が救助
8/6(火)富士山山梨側八合目で学校登山中の男性(60)が休憩時に意識を失いツアーガイドが通報。8/7死亡確認
8/6(火)富士山御殿場口五合目付近で斜面に人が倒れているのを登山者が発見し通報。腐敗が進み性別・年齢不明
8/6(火)南アルプス杖立峠付近で下山中の女性(65)が靴ひもが絡まり転倒、左手首骨折。南ア署・消防が救助
8/6(火)南アルプス鋸岳を登山中の男性2人(64・64)が崖に迷い込んで行動不能。8/7県警ヘリが救助
8/6(火)北アルプス立山・真砂岳で、雨の中男性(58)が岩場で足を滑らせ左膝靱帯損傷。8/7防災ヘリが救助搬送
8/6(火)北アルプス大天井岳で、燕山荘から縦走してきた男性(49)が足を滑らせ転倒負傷。県警ヘリが救助
8/6(火)北アルプス常念岳から下山中の男性(68)がつまずいて転倒負傷。県警ヘリが救助
8/7(水)南アルプス北岳山荘~間ノ岳で最後尾にいた男性(21)が落雷を頭に受け死亡。ほか3人は山小屋に避難
8/7(水)北アルプス剱岳源次郎尾根で男性(83)が「迷っている」と電話後連絡不通。8/8滑落状態の遺体発見
8/8(木)日高・ヌカビラ岳で男性(51)が「ヌカビラ岳から下山する」と連絡後行方不明。8/9山岳会が発見救助
8/8(木)八海山から中ノ岳へ向かった男性(64)が行方不明。8/9荒山付近登山道の15m下で遺体発見
8/8(木)富士山須走口六合目付近で男性(75)が転倒し右足首骨折。通報から1.5H後に御殿場署などが救助
8/8(木)北アルプス白馬大雪渓で男性(65)が登山中に疲労と体調不良により行動不能。大町署・遭対協が救助
8/8(木)北アルプス唐松岳八方尾根で男性(61)が下山中に登山道から滑落して負傷。大町署・遭対協が救助
8/8(木)北アルプス赤岩岳で男性(67)が燕岳から西岳方面へ縦走中、赤岩岳付近で滑落負傷。県警ヘリが救助
8/8(木)北アルプス常念岳~蝶ヶ岳で8/1に山小屋に泊まった男性(42)が行方不明。8/9登山道の60m下で遺体発見
8/9(金)北アルプス白馬鑓ヶ岳から家族で下山中の男性(50)が転倒し負傷。県警ヘリが救助
8/9(金)北アルプス奥穂高岳で女児(10)が休憩時座った岩が動いてバランスを崩し転倒負傷。県警救助隊が救助
8/9(金)北アルプス大天井岳から西方へ縦走中の男性(43)が石を踏み外して転倒負傷。県警ヘリが救助
8/10(土)北アルプス唐松岳から下山中の女性(67)が足を滑らせ転倒負傷。大町署・遭対協が救助
8/10(土)乗鞍岳剣ヶ峰から下山していた男性(50)が転倒し負傷。県警・消防救助隊が救助
8/11(祝)日高・カムイエクウチカウシ山八ノ沢カールで女性(70)が2m滑落し全身を打つ。8/12心肺停止のち死亡
8/11(祝)南アルプス白鳳峠付近を下山中の男性(69)が岩場で足を滑らせ転倒、右膝負傷。林道まで下山して救助
8/11(祝)中央アルプス権現山を下山中の男性(61)が道に迷い行動不能。8/12伊那署が発見救助
8/11(祝)北アルプス黒部川上ノ廊下で男性(60代)が水中に沈んでいるのを発見。防災ヘリが収容後、死亡確認
8/11(祝)北アルプス黒部川赤木沢2000m地点で男性(58)が沢登り中に転落し右足骨折の重傷
8/11(祝)北アルプス湯俣川で沢登り中に男性(61)のつかんだ石が足に落ちて負傷、行動不能。県警ヘリが救助
8/11(祝)北アルプス槍ヶ岳北鎌尾根で男性(77)が登攀中、疲労と体調不良で行動不能。8/12県警ヘリが救助
8/11(祝)北アルプス槍ヶ岳で女性(56)が登山中に滑落負傷。8/12救助要請、県警ヘリが救助
8/11(祝)北アルプス奥穂ジャンダルム付近で男性(49)が西穂へ縦走中、稜線から100m滑落死亡。8/12遺体発見
8/11(祝)岩屋山(長崎市)で男性(48)が下山中に脱水で意識もうろうとなり行動不能。8/12警察・消防が救助
8/12(休)北アルプス白馬乗鞍岳で男性(14)が栂池方面へ下山中に転倒負傷。大町署・遭対協などが救助
8/12(休)北アルプス白馬乗鞍岳で女性(35)が下山中に体調不良(熱中症疑い)で行動不能。常駐隊などが救助
8/12(休)北アルプス白馬鑓ヶ岳で女性(67)が下山中に転倒負傷。8/13救助要請、県警ヘリが救助
8/12(休)北アルプス餓鬼岳で男性(54)が白沢登山口へ下山中に滑落負傷。大町署が救助
8/12(休)北アルプス常念岳を目指して一ノ俣谷を沢登り中の男性(65)が転倒負傷。県警ヘリが救助
8/12(休)九重・大船山で男女2人(50代)が沢水登山口から入山、19:50「道に迷った」と通報。8/13防災ヘリが救助
[9/4追記]
8/8(木)北アルプス薬師沢登山道で男性(76)が足を滑らせ転倒して左脛骨骨折。8/9救助要請、県警ヘリが救助
8/8(木)北アルプス薬師沢登山道で男性(71)が浮石を踏んで転倒し右足を負傷。8/9救助要請、県警ヘリが救助
8/10(土)富士山富士宮口新七合目付近で男性(27)が転倒して右足首を負傷、行動不能。富士宮署などが救助
8/10(土)南アルプス赤石小屋で女性(71)が体調不良を訴え救助要請。8/11静岡市消防ヘリが救助搬送
8/10(土)北アルプス立山・二ノ越付近で男性(65)がバランスを崩して右足首をひねり骨折。防災ヘリが搬送
8/10(土)北アルプス立山・雷鳥坂付近で女性(64)が転倒して左足骨折の重傷。県警ヘリが救助搬送
8/10(土)北アルプス黒部川上ノ廊下で女性(46)が岩壁から2m転落、左腕脱臼と腰部打撲。県警ヘリが救助
8/11(祝)和賀山地甲山の東1kmで男性(37)が沢を下降中に転倒し左肩脱臼。防災ヘリで救助搬送
8/11(祝)船形山御宝前付近で男性(52)が御所山荘から登る途中、ルートから外れて迷う。8/12防災ヘリが救助
8/11(祝)富士山吉田口ルートで男性(61)が六合目を0:10に出発、九合目付近で突然倒れる。その後死亡確認
8/11(祝)南アルプス造林小屋跡で男性(31)が腹痛と手足のしびれを訴え下山不能。静岡中央署・消防が救助
8/11(祝)=発見日/南アルプス伝付峠付近で登山道から100m下方に男性の遺体発見。年齢不明。付近にザックあり
8/11(祝)北アルプス剱岳山頂直下で男性(46)が手をかけた岩が崩れたため転倒し右手指骨折。県警ヘリが救助
8/11(祝)北アルプス剱岳早月尾根で女性(59)が下山中に浮石でバランスを崩し右足骨折。8/12防災ヘリが救助
8/11(祝)北アルプス黒部源流赤木沢で男性(58)が沢登り中に岩で足が滑り転倒、右足首骨折。県警ヘリが救助
8/11(祝)北アルプス岩苔乗越付近で男性(44)が濡れた岩で足を滑らせて転倒し左膝靭帯損傷。県警ヘリが救助
8/11(祝)三徳山文殊堂付近で男性(18)が谷に落としたスマホを拾おうとして20m滑落負傷。ドクターヘリで搬送
8/12(休)飯豊・梅花皮小屋の南東2kmの登山道で男性(42)が滑落し左足首骨折。8/13防災ヘリが救助
8/12(休)富士山宝永火口付近で女性(8)が腹痛のため動けなくなる。目撃した登山者が五合目派出所に届出
8/12(休)富士山富士宮口八合目衛生センターで男性(44)が腕を負傷(骨折の疑い)。衛生センターから救助要請
8/12(休)富士山富士宮口山頂付近で女性(69)が転倒し頭部などを負傷。救助隊などが救助
8/12(休)富士山富士宮口山頂付近で男性(60)が転倒した女性(69)を助けようとして自分も転倒。救助隊などが救助
8/12(休)富士山富士宮口九合目付近で男性(14)が転倒して頭部を負傷。救助隊などが救助
8/12(休)北アルプス間山~北薬師岳で男性(60)が体調不良(熱中症)で歩行困難。8/13県警ヘリが救助
[その他のニュース]
●御嶽山規制区域への入山者、木曽署が取り調べ
8/6(火)=信濃毎日/御嶽山の入山規制区域に立ち入ったとして、災害対策基本法違反の疑いで、木曽署が県外の男性2人を取り調べていることがわかりました。2人は7月10日と14日に、王滝口登山道で帰省中の九合目より上部に入りました。九合目には規制を示すロープや看板があったが、人けがなかったので立ち入ってしまったとのこと。ほかにも複数人を調べているそうです。
●浅間山が小規模噴火
8/8(木)7日夜、浅間山で小規模噴火が発生し、噴煙の高さは火口から1800mを超えました。気象庁は噴火警戒レベルを1から3(入山規制)に引き上げ、半径4kmの範囲で大きな噴石や火砕流への警戒を呼び掛けました。これに伴い、浅間山の登山口はすべて封鎖し、立ち入りが規制されました。8月末時点で、小浅間山登山口、石尊山登山口、一の鳥居(浅間山荘)登山口、高峰高原登山口(黒斑山周辺を含む)から浅間山への登山は規制中です。
追記:8月19日午前、気象庁は浅間山について「中規模の噴火の可能性は低くなった」とし、噴火警戒レベルを3から2(火口周辺規制)に引き下げました。25日夜には再び小規模噴火が発生しましたが、噴火警戒レベル2が維持されました。火口から2km以内が入山規制となり、小浅間山、石尊山、賽ノ河原分岐点より上部には登山できません。
●ヒグマ事故後も多数の入山者
8/10(土)=十勝毎日/7月11日と29日にクマとの接触事故が起きた日高山脈のカムイエクウチカウシ山。山頂下の八ノ沢カールにテント泊し、翌早朝、山頂への登山中にクマと遭遇し襲われました。29日の40代男性はドクターヘリで搬送され、50針を縫う重傷を負いました。11日の事故後から道警、森林管理局、中札内村は入山自粛を呼び掛けていましたが、8月9日までに40人以上が入山し、本州からのツアー登山もあったそうです。地元山岳会のベテランは「一度襲ったクマは、また襲う。同じ場所に居着いているかもしれず、駆除されないかぎり山には登れない」と言っています。しかし、山はクマ本来の生息地でもあり、中札内村は駆除しない方針だそうです。
気にかかった遭難事例
●剱岳早月尾根から源次郎尾根へ迷う
8月7日、剱岳に登った男性(83)が行方不明になりました。男性はこの日、早月尾根の山小屋を出発し、11:30ごろ自宅妻(82)に「道に迷っている」と電話しました。その後電話がつながらなくなったため、妻から山小屋を通じて室堂警備派出所に通報がありました。8日12:10ごろ、剱岳の源次郎尾根2800m付近で倒れている男性を県警ヘリが発見、死亡が確認されました。頭部に裂傷があるほか、右足などを骨折しており、滑落した可能性が高いそうです。
データを調べると当日は好天だったと思われます。どういう経路で早月尾根から源次郎尾根へ迷うものか、気づかないうちに剱岳山頂付近を通過してしまったものか、山頂付近に登山者の姿が見えなかったでしょうか。案外ガスで視界が悪かったのでしょうか。道迷い遭難の特徴ですが、迷っても滑落しなければ助かったであろう事例でした。
9/4追記:新たに入手した情報によると、男性は剱岳頂上付近から100m以上滑落したと見られるそうです。多発骨折しており、外傷性ショックにより死亡していました。男性は約30年前に剱岳で遭難死した息子を弔う目的で入山していました。
●カムエク山で女性滑落死
8月11日13:00ごろ、日高山脈カムイエクウチカウシ山で登山ガイドの男性から「八ノ沢カール付近で女性が2mぐらい滑落して負傷した」と通報がありました。女性(70)はガイド・仲間6人と10日に登山開始し、11日に登頂して下山途中に滑落、全身を強く打ちました。当初は呼びかけにかすかに反応していたそうです。道警ヘリと救助隊が出動しましたが、視界が悪く11日は救助できませんでした。12日午前、心肺停止の状態で発見され、その後死亡が確認されました。
2mの滑落ですから、致命的なほど危険な場所ではなかった(つまり、ロープを使うなどの状況ではなかった)のかもしれません。こういう場合にフォロワーの事故を防ぐのは、ガイドとして力量が必要だろうなと思います。そして、救助隊の非をあげるのではないですが、ヘリで一発救助されていれば助かったかもしれず、残念な事例だったと思います。