[8月3週]夏山遭難やや減少し沈静化

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[8/13~19の遭難関係ニュースから]
8月第3週の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

お盆連休の週でしたが、夏山遭難はいくぶん件数が減って沈静化してきました。南アルプスでの遭難が目立っており、連休を利用して長期登山に出かけて遭難した例もあったのではないでしょうか。8/16、8/19の南アルプス塩見岳~仙丈ヶ岳で発生した行方不明遭難はその例で、このような場合、捜索・救助活動も困難なものになると思われます。
死亡遭難事故は只見町の蒲生岳、朝日連峰、奥秩父笛吹川東沢(沢登り)、南アルプス北岳バットレス、北アルプス前穂東壁、大峰山脈山上ヶ岳、大菩薩嶺で起こっています。北アルプスは発生件数は多いですが、死亡・行方不明事例はあまり多くありません。

8/13(火)蒲生岳(福島県只見町)で男性(18)が下山中に1人だけ先に進みはぐれる。登山口近くの山林で遺体発見
8/13(火)南アルプス北岳で女性(34)が下山中にバランスを崩して転倒し右足首骨折
8/13(火)南アルプス北岳で男性(45)が滑落して左足に2週間のけが
8/13(火)北アルプス北穂高岳で男性(58)が涸沢へ向けて下山中、転倒負傷。県警ヘリが救助
8/14(水)朝日連峰に8/10に入山した男性(57)が帰宅せず。8/15朝日鉱泉付近の登山道から50m崖下の沢で遺体発見
8/14(水)北アルプス白馬岳で女性(74)が下山中、疲労と体調不良により行動不能。大町署・遭対協が救助
8/14(水)北アルプス唐松岳で男性(51)が家族と八方尾根を下山中、転倒負傷。大町署・遭対協が救助
8/14(水)北アルプス槍ヶ岳北鎌尾根を登山中の男性(43)が疲労と体調不良により行動不能。大町署が救助
8/14(水)北アルプス北穂から南岳へ向かっていた女性(55)が大キレット付近で滑落負傷。松本署・遭対協が救助
8/14(水)北アルプス常念岳へ登山中の男性(35)が疲労及び体調不良により行動不能。遭対協が救助
8/15(木)南アルプス北岳大樺沢で下山中の男性(65)のストックが縮みバランスを崩して転倒。南ア署などが救助
8/16(金)南アルプス塩見岳~仙丈ヶ岳で、7/28山小屋から仙丈ヶ岳へ向かった男性(77)が行方不明。8/16届出
8/17(土)奥秩父東沢ホラの貝ゴルジュで男性(22)が沢下り中に姿が見えなくなる。8/18滝つぼ中で遺体発見
8/17(土)山中湖村の山中で男性(20代)が行方不明。詳細不明
8/17(土)南アルプス北岳バットレスで男性(31)が第5尾根を目指し登攀中20m滑落。県警ヘリが救助、病院で死亡
8/17(土)北アルプス前穂東壁で男性(41)がロープを使い岩場を下降中に60m滑落。8/18県警ヘリが発見、死亡確認
8/17(土)大峰・山上ヶ岳でボランティアガイドの男性(63)が一人で下山中に数十m崖下に滑落。8/18遺体発見
8/18(日)苗場山系釜川で男性2人(59・40)が沢登りで入渓後下山しないため通報。8/19林道に戻った所を発見保護
8/18(日)大菩薩嶺から小菅登山道を下山中の男性(76)が40m下の沢へ滑落。警察・消防が救助、搬送先病院で死亡
8/18(日)八ヶ岳蓼科山山頂から下山中の男性(35)がバランスを崩し転倒負傷。茅野署・遭対協が救助
8/18(日)南アルプス北岳バットレス第4尾根で男性2人(40代)が疲労のため行動不能。県警安全対策隊などが救助
8/18(日)中央アルプス木曽駒ヶ岳から下山中の女性(60)が浮石に乗り転倒負傷。駒ヶ根署・遭対協が救助
8/18(日)北アルプス小蓮華山で男性(66)が下山中に転倒負傷。県警ヘリが救助
8/18(日)北アルプス唐松岳八方尾根で女性(60)が下山中に転倒負傷。常駐隊・遭対協などが救助
8/18(日)北アルプス針ノ木岳で女性(50)が下山中に転倒負傷。県警ヘリが救助
8/19(月)南アルプス熊ノ平小屋を8/14に出発した男性(63)が行方不明。連休後勤務先から連絡を受け家族が通報
8/19(月)北アルプス白馬鑓ヶ岳で男性(58)が猿倉に向けて下山中に滑落負傷。大町署・常駐隊などが救助

[9/4追記]
8/13(火)蔵王・中丸山で男性2人(40代)がお釜から熊野岳経由で下山中に道に迷い16:45通報。夜間に救助、下山
8/13(火)富士山富士宮口八合目付近で男性(12)が体調不良で動けなくなったと届出。救助隊が救助
8/13(火)富士山富士宮口九合目付近で男性(52)が転倒して腰を強打し歩行困難になる。救助隊が救助
8/13(火)富士山富士宮口山頂付近で女性(15)が転倒して足首を負傷し歩行困難になる。救助隊が救助
8/13(火)=発見日/南アルプス尾白川渓谷で男性(65)が10m下の川岸に倒れ、散策中の男性が発見。外傷複数あり
8/13(火)北アルプス剱岳早月尾根下部で男性(50)が倒れているのを登山者が発見通報。県警ヘリが救助搬送
8/15(木)北アルプス剱沢キャンプ場で女性(54)に発熱と悪寒の症状が現れ高山病と診断される。防災ヘリが救助
8/17(土)阿武隈山地日隠山(福島県大熊町)で男性(47)が下山中に道に迷い110番通報。2H後に双葉署が発見救助
8/17(土)丹沢・切通峠付近で男性(24)が濃い霧のためはぐれる。8/22菰釣山の南3.5kmの沢で遺体発見、外傷なし
8/18(日)岩手山馬返し登山道六合目を下山中の男性(69)が足をくじき右足首骨折。通報1.5H後に防災ヘリが救助
8/18(日)北アルプススバリ岳~針ノ木岳間で男性(61)がバランスを崩し10m滑落、左脚骨折。防災ヘリが救助

[その他のニュース]
●大谷渓谷で台風10号による増水のため18人孤立
8月14日夕方、深耶馬渓の大谷渓谷(大分県玖珠町)で、バーベキューに来ていた18人グループから「車が水没して動かなくなった。助けてほしい」と消防に通報がありました。18人は5家族で、生後5カ月の女児を含む未成年11人と30~40代の7人。14日にRV車6台で渓谷を訪れ、バーベキューを終えて河原を走行中、岩石や砂利にタイヤがはまり4台が立ち往生しました。その後、台風による大雨で急激に川が増水し、車が水没したそうです。グループは近くの山の斜面にテントを張り、救助を待ちながら夜を明かしました。
県警・消防は夜から延べ約90人で捜索しましたが、激しい風雨のため15日深夜2:00に中断、朝7:20から45人体制で再開しました。川岸から高さ10mの場所にテントを見つけ、ロープを使って斜面を登り、午前中に全員救助されました。
大谷渓谷に沿った道路はなく、今回の事例を通じて、渓谷自体がRV車などでオフロード走行されている実態が明らかになりました。法律や条例で車の進入を規制することはできないため、渓谷入口に注意喚起の看板が設けられたそうです。また、ネット上では遭難グループに対する非難の書き込みが多くあったようです。

●5Gを使い登山者見守りシステム
8/15~20=長野日報他/信州大学とKDDIは、次世代通信規格「5G」を活用した山岳遭難対策の実証実験を、10月上旬に中央アルプス千畳敷周辺で実施すると発表しました。信大総合情報センター長の不破泰教授が進めている「登山者見守りシステム」が、総務省の「5G利活用アイデアコンテスト」で5G特性活用賞を受賞したことから、総務省予算から実験費を出して委託されることになりました。千畳敷に5G無線機やアンテナを設置し、登山者が遭難したことを想定して、位置情報の確認、ドローンによる捜索、遭難者の安否確認、救助隊の情報共有などの実験を行うそうです。

気にかかった遭難事例

熱中症を防ぐために気温計があるといい。30度を超えたら登山中止

●蒲生岳で熱中症により死亡
8月13日(火)13:30ごろ、福島県只見町の蒲生岳登山道近くで、男子学生(18)が倒れているのを住民が見つけて通報しました。心肺停止状態で病院に運ばれ、その後死亡が確認されました。男性はこの日の8:00ごろ、父親らと3人で登山を始め、下山途中一人で先に進んで、そのまま2人とはぐれていました。

蒲生岳は通常なら登り1.5時間、下り1時間ほどで往復できる低山です。当日はかなり高温だったと予想され、山を下りるほど気温も上昇したでしょう。遭難男性は脱水または熱中症により、急激に体調を崩して歩けなくなったと推定されます。

「只見」アメダス8/13の気温。事故発生時には35度レベルに(tenki.jpより)

●朝日連峰でも熱中症と推定される死亡事例
朝日連峰でも13日に男性(57)が、熱中症と思われる状態で遭難死しています。この男性は10~11日に入山、12日に大朝日岳の山小屋に泊まりました。しかし、14日になっても下山しないため家族が警察に届け出て、県警は15日午前中に朝日鉱泉の駐車場で男性の車を発見しました。そして、鉱泉から15分ほど登った登山道で男性のザックと帽子が見つかり、13:30ごろ、近くの沢で男性の遺体が発見されました。

ここからは推定になります。大きな外傷がないことから、男性は滑落したのではなく、水を飲むために沢に下りようとしたのでしょう。正常な判断力があれば、あと10~15分歩き続ければ朝日鉱泉に着くことはわかります。その余裕もないくらい、症状は切羽詰まっていたのだと想像されます。
熱中症は予防することがだいじです。暑すぎる環境下での山歩きはやめましょう。拙著『55歳からのやってはいけない山歩き』の熱中症の項では、気温25度以上なら厳重注意、気温30度以上なら山歩きを中止するようおすすめしています。

「大井沢」アメダス8/13の気温。10~17時には30度超え(tenki.jpより)