[9月1週]南北アルプスや富士山で再び遭難多発

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[9/3~9の遭難関係ニュースから]
9月第1週の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

9月6日(金)から8日(日)にかけて、中部山岳地域などでは好天に恵まれ、シーズン終盤の夏山登山を楽しんだ人が多かったのではないでしょうか。北・南アルプスや富士山で再び遭難が多くなっています。悪天候などで条件の悪いときよりも、好天になったほうが遭難が多いというのが、残念ながら現代の遭難発生の特徴です。

9/4(水)=発見日/日高山脈カムイエクウチカウシ山1180m付近で登山者が男性の遺体を発見。死後数日から数週間
9/4(水)=発見日/六甲・烏原大橋の真下で脚・顔などを骨折して倒れた男性(63)の遺体発見。大橋から転落か
9/5(木)谷川連峰万太郎山で男性(40代)が沢登り中に滑落して頭部や右膝を負傷。2H後防災ヘリが救助
9/5(木)御坂・三ツ峠登山口から天下茶屋を目指した男性(71)が登山道を外れて迷い16:35通報。大幡山で救助
9/5(木)八ヶ岳・赤岳で男性(71)が美し森へ下山中に道に迷い17:20通報。9/6北杜署が救助
9/6(金)吾妻・天元台高原で親子行事の山歩き集団がハチに襲われる。先頭グループ男女5人(中1)が刺され軽傷
9/6(金)尾瀬・燧ヶ岳で男女2人(60代)が登山中に道に迷い、下山しないため宿泊施設が通報。9/7朝自力下山
9/6(金)苗場山で男女2人(40代)が登山届の下山日を誤って1日早く記載。最終日に妻の弟が通報し遭難騒ぎに
9/6(金)富士山御殿場口下山道太郎坊付近で男女2人(30代)が負傷および疲労により救助要請。県警救助隊が救助
9/6(金)富士山御殿場口下山道大砂走り付近で男性(30代)が足を負傷して動けなくなる。夜、県警救助隊が救助
9/6(金)八ヶ岳・夏沢峠~硫黄岳間で男性(62)が登山中に同行者とはぐれ行方不明。9/8時点で未発見
9/6(金)南アルプス高嶺付近で女性(59)が下山中に岩場でバランスを崩し転倒、左足首骨折。県警ヘリが救助
9/6(金)北アルプス槍ヶ岳から槍沢を下山中の男性(70)が疲労により行動不能。遭対協が救助
9/7(土)面白山で女性(28)が濡れた登山道で滑落すると思い動けなくなって通報。山形署・消防が同伴して下山
9/7(土)平ヶ岳鷹ノ巣ルートの台倉山で、男性(40代)が下山中に脱水症などで動けなくなる。防災ヘリが救助
9/7(土)富士山富士宮口五合目宝永山下山道で男女2人(年齢不明)が道に迷い救助要請。県警救助隊が発見救助
9/7(土)富士山須走口八合目付近で男性(年齢不明)が足の痛みを訴え救助要請。防災ヘリが救助搬送
9/7(土)八ヶ岳・赤岳の文三郎尾根を下山中の男性(41)が足を滑らせて転倒し右足骨折。県警ヘリが救助
9/7(土)八ヶ岳・権現岳から下山中の男性(58)が足を滑らせ右脚骨折の重傷。防災ヘリが救助
9/7(土)南アルプス鋸岳で男性(71)が下山中に道に迷い日没となったためビバーク。9/8林道を歩行中に救助
9/7(土)南アルプス栗沢山で男性(54)が下山中にバランスを崩し転倒、右足首骨折。小屋関係者などが救助
9/7(土)北アルプス剱岳八ツ峰で男性(22)が岩登り訓練中に10m転落し頭・右手などに重傷。県警ヘリが救助
9/7(土)北アルプス焼岳で女性(38)が新中尾峠から上高地へ下山中に転倒して負傷。県警ヘリが救助
9/8(日)鳥海山で仲間から1人だけ遅れた男性(69)が、登山道に倒れているのを発見される。病院で死亡確認
9/8(日)奥秩父・瑞牆山のカサメリ沢で女性(52)がクライミング中に25m滑落、全身を打ち死亡。防災ヘリで搬送
9/8(日)南アルプス大樺沢二俣で男性(66)が転倒時に額を岩に打って負傷。小屋を通じ通報、県警ヘリが救助
9/8(日)北アルプス剱岳・前剱登山道付近で女性(19)が下山中に稜線から150m滑落死亡。8/12県警ヘリが2650m地点で遺体発見、収容
9/8(日)北アルプス東沢岳で男性(77)が餓鬼岳から東沢を下山中に足を滑らせ滑落して負傷。県警ヘリが救助
9/8(日)鈴鹿・御在所岳で男性(47)が登山に出かけたまま帰宅せず。9/12防災ヘリで遺体収容
9/8(日)白滝山(広島県尾道市)八合目駐車場付近で観光客ら4人がスズメバチに刺され軽傷。登山道は一時閉鎖
9/9(月)=通報日/南アルプス鳳凰三山へ向かった男性(82)が下山せず。9/12県警ヘリが地蔵岳南東170mで発見

[その他のニュース]

●富山県の夏山遭難最多
9/5=毎日など/富山県内で発生した7~8月の夏山期間の遭難事故は80件(速報値、前年比+12)、遭難者数は84人(同+13)となりました。これまで最も多かった2002年の71件・76人を上回り、過去最悪記録を更新しました。遭難者のうち60歳以上が43人で半数以上を占めています。態様別では多い順に、転倒22人、病気(高山病、熱中症など)20人、転落・滑落10人、疲労7人、道迷い4人となっています。※「態様」とは遭難事故の形態、表われ方のことです。

●長野県の夏山遭難は減少
9/3=信越放送など/長野県内で7~8月の夏山期間に発生した遭難事故は99件(前年比-18)、遭難者数は106人(同-15)、死者・行方不明者は9人(同-9)でした。過去最悪だった昨年から減少したのは、悪天候や梅雨明けの遅れから登山者が減少したのが原因とみています。年齢別では60代以上が60人(57%)、40代以上では総数の87%を占め、中高年ないし高齢者の遭難が目立っています。転倒・転落・滑落が63件で、全体の66%を占めました。

●全国の夏山遭難は606件・669人
9/6=時事通信など/警察庁は9月6日、7~8月に全国で発生した山岳遭難件数が606件、遭難者数は669人だったと発表しました。過去最多だった昨年よりも115件、124人減少しました。死者・行方不明者は54人(前年比-17)でした。「7月に天候の悪い日が多かったことが影響しているのではないか」とみています。

気にかかった遭難事例

●11日後遺体発見、9日後に身元特定
9月3日、南アルプス署は南アルプス間ノ岳の東側斜面で8月25日に見つかった男性遺体の身元を、DNA鑑定により特定しました。男性(63)は8月11日に単独で長野県大鹿村から入山。同13日に熊ノ平小屋に宿泊し、翌朝出発してから行方不明になっていました。同25日に上空をパトロール中の山梨県警ヘリが発見し、翌日収容されました。男性は稜線から約300m下の斜面に倒れ、死因は滑落による多発外傷でした。

●前剱で19歳女性が滑落死亡
9月8日から単独で剱岳に登山に出かけた女性(19)が行方不明になり、同12日9時ごろ、前剱~一服剱間の標高2650m地点で倒れているのが発見されました。女性は心肺停止の状態で、県警ヘリで搬送されましたが、病院で死亡が確認されました。死因は報道されていませんが、滑落による多発外傷と推定されます。

行方不明だった同11日の夜、女性のお兄さんがツイッターで情報提供を呼びかけ、本人の顔や登山姿が写った写真、簡単な服装リストなどを公開しました。発見後にもお兄さんから簡単な経過報告がされたことから、私たちも一部分ではありますが、この遭難事例の状況を知ることができました。
剱岳のルート中、前剱の南側斜面は事故発生が最も多い場所の一つです。本事例と同じパターンの転落・滑落事故がここで何度も発生してきました。あらかじめその危険性を知っていれば、意識の持ち方も変わっていたのではないでしょうか。登山者の皆さんに遭難情報、危険情報を伝えてゆくことは重要だと思います。

前剱南面の登山道。15年前に撮ったものなので、現在は変わっているかもしれません