[10月1週]椿荘キャンプ場の捜索で二重遭難頻発

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[10/1~7の遭難関係ニュースから]
(遅くなりましたが)10月第1週の遭難まとめです。

北アルプスなど3000m級の高山エリアでは、例年どおりなら紅葉の最盛期になっています。登山者数のデータは取れませんが、多数の登山者が北アルプス、南アルプスを訪れ、それに伴い遭難事故が多くなっているものと思われます。さらにこの時期は、キノコ採りで入山した人の遭難も加わっています。
また、丹沢・道志エリアの椿荘キャンプ場で行方不明になった女児の捜索活動に加わっていた関係者が、複数回にわたって二重遭難事故を起こしています。

10/1(火)古賀志山滝コース付近で男性(78)が登山道から30m下に倒れているのを登山者が発見。病院へ搬送後死亡
10/1(火)行方不明女児の捜索に加わっていた男性(55)と妹が、丹沢・大室山山中で道に迷う。10/2朝自力下山
10/1(火)北丹沢・椿荘キャンプ場付近で、遭難捜索ボランティアの男性(40代)が捜索中にクマと遭遇し、逃げる際に転倒して右足首骨折
10/1(火)南アルプス尾白川渓谷千ヶ淵付近で男性(68)が足を滑らせ転倒し左脚骨折の疑い。防災ヘリが救助搬送
10/1(火)長野県木曽町の山林でキノコ採りの男性(84)が滑落して行動不能となる。木曽署などが救助
10/1(火)北アルプス大日平登山道で男性(67)が濡れた木道で足を滑らせて転倒し左足骨折。県警ヘリが救助搬送
10/1(火)北アルプス白馬鑓ヶ岳で男性(44)が仲間と下山中、疲労により行動不能。10/2遭対協が救助
10/2(水)栗駒山登山口から2km地点で女性(34)が日没で行動不能となり、弟が下山し救助要請。翌日ヘリで救助
10/3(木)富士山吉田口一合目からキノコ採りに入山したと見られる男性(88)が行方不明。10/19三合目で遺体発見
10/3(木)北アルプス下ノ廊下半月峡付近で男性(53)がクマに襲われ鼻、胸、左腕を負傷。自力下山して病院へ
10/4(金)八ヶ岳・編笠山~観音平で女性(74)が下山中に木の根につまずき転倒、左脚骨折。防災ヘリが救助搬送
10/4(金)北アルプス槍沢で男女2人(77・75)登山中、疲労と体調不良により行動不能。遭対協が救助
10/5(土)岩手県大槌町の山林でキノコ採りの男女(70代)が体力を消耗したため山中泊。翌日、下山中を発見救助
10/5(土)上州武尊山で男性(51)が下山中に滑落して肋骨骨折など重傷。警察・消防が救助搬送
10/5(土)奥秩父・木賊山南東で女性(55)が西沢渓谷へ下山中に急斜面のガレに迷い込み動けず。県警ヘリが救助
10/5(土)北丹沢・椿荘キャンプ場付近で、TV局カメラマンの男性(36)が女児捜索を取材中に林道脇で足を踏み外して5m転落、鎖骨骨折の重傷
10/5(土)北アルプス槍ヶ岳北鎌尾根で男性(43)が滑落、同行の男性(48)と衝突し2人とも負傷。翌日ヘリ救助
10/6(日)北海道釧路町の山中で男性(82)がキノコ採りに出かけたまま戻らず。10/7警察が発見救助
10/6(日)尾瀬・燧ヶ岳御池ルートで女性(80代)が午後「道に迷った」と親族に連絡。22:10消防隊員が発見救助
10/6(日)奥秩父・瑞牆山で女性(70)が転倒し頭に軽いけがを負う
10/6(日)房総・無実山山中で男性(72)が仲間と別れて以後行方不明。10/7登山道から400m離れた沢で遺体発見
10/6(日)富士河口湖町の山中で男性(59)が午後からキノコ採りに出かけて戻らず。10/7斜面に倒れた遺体発見
10/6(日)上記男性を捜すために入山した父親(87)が連絡不通となり母親が通報。崖下に倒れて発見、死亡確認
10/6(日)南アルプス北岳で男性(57)が下山途中に転倒して左足首を骨折。県警ヘリが救助
10/6(日)南アルプス北岳で女性(75)が下山途中に足を滑らせ5m滑落、腰椎圧迫骨折。10/7警察・消防が搬送
10/6(日)南アルプス西農鳥岳で男性(71)が滑落して右足を負傷
10/6(日)北アルプス剱沢平蔵谷出合付近で男性(78)が登山中にふらついて転倒し顔を負傷。防災ヘリが救助搬送
10/6(日)北アルプス横尾谷で女性(77)が家族2人で涸沢から下山中、疲労により行動不能。県警・遭対協が救助
10/6(日)北アルプス西穂山頂付近で男性(44)に直径30cm大の落石が当たり左手骨折の模様。県警ヘリが救助
10/6(日)鈴鹿・仙ヶ岳白谷道で、男性(66)が頭部を負傷し登山道の15m下に倒れているのを発見、のち死亡確認
10/7(月)北アルプス剱岳に向かった男性(71)が、当日宿泊予定の山小屋に到着せず行方不明。10/14捜索打ち切り

気にかかった遭難事例

●椿荘キャンプ場女児捜索で二重遭難
丹沢・大室山北麓にある椿荘キャンプ場で、9月20日に女児(7)が行方不明になり、大規模な捜索が続けられました。捜索活動に加わるボランティアも多くいたようですが、二重事故の発生が4件報じられています。
9月27日、男性(27)が捜索中に崖から転落して重傷を負い、110番通報しました。29日朝、自力で林道を下山中のところを発見、保護されました。10月1日、早朝から妹と2人で捜索に加わった男性(55)は大室山で道に迷い、翌2日に自力下山しました。同1日、別の40代男性は捜索中にクマと遭遇して、逃げる際に転倒して右足首などを骨折しました。10月5日、取材中の民放テレビカメラマンの男性(36)が、林道から足を踏み外して沢に転落し、機動隊に救助されました。
その他、報道に出ていないトラブルもあったもようです。

山岳遭難捜索は専門的なレスキュー技術が必要な業務で、アマチュアがやるべきことではありません。専門技術を持っていない人には、可能な範囲での活動を指示して分担してもらう必要があります。きちんとした指揮系統(安全性の判断ができる)のもとで捜索救助活動を行わないと、大きな二重事故を起こしてしまう危険性があると思います。

●房総の低山で山岳会男性死亡
10月5日、「房州アルプス」の通称がある無実(みなし)山で、男性(72)が行方不明になりました。男性は同じ山岳クラブの男性と2人で、下見のために入山していました。日帰りの予定でしたが、周囲が暗くなってきたので、「家族から懐中電灯をもらってくる」と言って1人で先に下山しました。そのまま戻らず、携帯電話もつながらなくなりました。
仲間の男性は道に迷い、その夜は山中に泊まって、翌6日10時10分ごろ消防に通報しました。11時55分ごろ、仲間の男性は山中で発見、救助されました。
行方不明の男性は翌7日10時25分ごろ、登山道から400m離れた水のない沢で発見されましたが、すでに死亡していました。死因など詳細は不明です。富津署は「台風15号による倒木などで危険な場所もあるので、山に入るのは控えてほしい」と呼びかけています。

地形図を見ると、尾根筋は分岐が多いものの明瞭で、道迷いで引き返せなくなる地形ではないように思えます。また、登山ルートはすべて稜線上にあって、そこから400m離れた場所はほぼ沢底になってしまいます。薄暗い中を急いで歩いている際に滑落して、自力で動けなくなるような状態に陥ったのではないでしょうか?
マスコミ記事は検証の視点から書かれているわけではないので、遭難の状況がよくわからないものが多いです。特に山名、地名、沢名などを明記していないのは残念です。