[10月2週]森吉山麓小又峡でツアー客とガイドが遭難死

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[10/8~14の遭難関係ニュースから]
(遅くなりましたが)10月第2週の遭難まとめです。

中部山岳エリアの高山帯や東北地方の山では、10月1週が紅葉のピークです。その時期を過ぎて遭難発生件数が急減しました。入山者が減ったことを示しているのでしょう。
しかし、印象に残る遭難が起こっています。秋田県森吉山麓の小又峡で、ツアー登山の女性客と男性ガイドが、増水した流れにのまれて水死しました。また、北アルプスの黒部峡谷で転落・滑落事故が起こっています。黒部峡谷の「下ノ廊下」はこれからが紅葉シーズンとなり、翌週にかけて多くの事故が連続して発生しています。

10/8(火)森吉山小又峡で増水した沢に男性ガイド(73)と女性(74)が流され死亡。男性は10/11下流で遺体発見
10/8(火)北アルプス下ノ廊下黒部別山谷付近で女性(70)が徒渉時に流されて歩けなくなる。10/9防災ヘリが救助
10/8(火)北アルプス黒部源流登山道で女性(40)が濡れた石に足を取られて転倒し左足甲を骨折。11/9防災ヘリが救助
10/10(木)岩手山七滝ルートへ入山したと見られる男性(62)が帰宅せず、家族が届け出る。七滝登山口に車発見
10/10(木)古賀志山(宇都宮市)で女性(32)が登山道から6m滑落して顔や左膝に打撲傷。防災ヘリが救助
10/10(木)中央アルプス宝剣岳から千畳敷へ下山中の女性(69)が転倒して負傷。駒ヶ根署・遭対協が救助
10/10(木)北アルプス下ノ廊下東谷吊橋付近で、女性(71)が急勾配かつ幅の狭い登山道で足を滑らせ60m転落死亡
10/11(金)北アルプス奥穂ザイテングラードで男性(70)が下山中にバランスを崩して転倒。県警・遭対協が救助
10/11(金)北アルプス常念岳から下山中の男性(67)が前常念岳において道に迷い行動不能。安曇野署が救助
10/13(日)中央アルプス大川入山から下山中だった女性(53)が転倒して足首を負傷。静岡県防災ヘリが救助
10/14(祝)大雪・愛別岳で男性(38)が行方不明となり、10/21山頂の南1km、登山道から20m離れた斜面で遺体発見

気にかかった遭難事例

●森吉山小又峡でツアー登山の女性客とガイドが水死
この週に起こった中で、最も大きな遭難事故でした。
10月8日午後、森吉山麓の小又峡遊歩道で、女性ツアー客と男性ガイドが増水した川に流されました。女性(74)は死亡が確認されました。男性ガイド(73)は行方不明になりましたが、3日後の11日10時ごろ、事故現場から約50m離れた三角滝近くで遺体が発見されました。
首都圏からのツアー登山は、秋田駒ヶ岳と森吉山に登る1泊2日の行程で、20~70代の18人が参加していました。当日は16人が仙北市の宿泊地から森吉山に向かう予定でしたが、悪天候のため、添乗員とガイドが相談して目的地を小又峡に変更しました。小又峡への変更は、このツアー会社では初めてだったそうです。
小又峡は、平常であれば地元住民や子どもでもレジャーで訪れる場所です。しかし、急激な雨が降ったときには、増水が危険と指摘する地元の人もいます。男性ガイドも、当然、そのような事情に精通していたと思われます。
11時ごろ、遊歩道を歩き始めたときは小雨が降る程度で、沢の水深もそれほどではなかったそうです。しかし、途中でアーチ状の橋を渡ったあとで雨が強くなったため、ガイドの判断で引き返すことにしました。
戻ってアーチ状の橋を渡ると、橋げたで15段ほどの階段から岩盤に下ります。その階段の下1~2段が水流に浸かった状態になっていました。岩盤が濁流でおおわれ、膝下まで水に入って渡らなくてはならない状況でした。ガイドはツアー客の手を取りながら、横歩きで1人ずつ、水に浸かった場所を渡らせました。9人が渡り終え、10人目の女性が渡るときにバランスを崩して転倒し、ガイドも転んで、2人はあっという間に流されました。
橋の上には添乗員を含め7人が残っていましたが、4人は自力で下流の遊歩道まで渡り切り、3人は水位が下がるのを待って渡ったそうです。

当日の天気図、阿仁合では8日9~11時に13mmの雨が降った(出典:気象庁・日々の天気図)

目の前の状況判断は、現場にいる人しかできません。遭難事例を語る場合、現場を見ていない第三者が批評的なことを言うのは慎重でなくてはいけません。
男性ガイドは、サポートしながら何とか渡れる状況だと考えたのでしょう。しかし、1人の女性が渡れずに失敗しました。ガイドは、引率する全員(この場合16人)の歩行能力、技術レベル、体調などの身体状況まで、観察のうえ把握していなくてはならないのです。
自分の立場に置き換えたら、事故を防げたでしょうか?
登山ガイドという仕事のきびしさを思い知らされる遭難事例でした。