[10月4週]道迷いから死亡にいたった遭難事例

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[10/22~28の遭難関係ニュースから]
(遅くなりましたが)10月第4週の遭難まとめです。

高山では紅葉シーズンが完全に終わりました。雪のシーズンである12~1月までは比較的入山者は少なく、それにともない遭難も少なくなる可能性があります。それとは別に、道迷いから死亡にいたる遭難事例がいくつか見られ、注目されました。
これからは最も日の短い季節となり、登山にはリスクの高い状況となります。きちんと計画性をもって、時間の余裕を十分に保ちながら、登山に出かけることが重要です。
富士山では、自分の登山の様子をライブ送信中に滑落遭難してしまうという異様な事例が、マスコミなどで注目されました。登山準備が不十分なようですし、登山のやり方が誤っているとしか言いようのない事故でした。

10/22(火)奥秩父・鶏冠山から下山中の男女(45・33)が道に迷う。西沢渓谷(西沢山荘の北西1800m)で発見救助
10/22(火)傾山地新百姓山へ杉ヶ越から入山した男性(64)が行方不明。10/28山菜採りの男性がおもち谷で発見通報
10/22(火)由布岳で男女(62・58)が16:20「道に迷った」と通報。10/23熊本県防災ヘリが救助
10/24(木)三才山(松本市)の山林でキノコ採りの男女(73・71)が道に迷い行動不能。10/25松本署が救助
10/25(金)野地温泉から安達太良山へ入山した男女(70・69)が悪天候などで動けなくなる。10/26心肺停止で発見
10/26(土)南アルプス仁田岳南東の山中で男性(55)が滑落負傷して救助要請。10/27静岡中央署が救助
10/26(土)南アルプス前衛七面山で男性(79)が下山中に足を滑らせ転倒して左足首骨折。防災ヘリが救助搬送
10/27(日)塩原・八方ヶ原歩道で男女(60・59)が登山道から外れて道に迷う。警察・消防が救助、同伴下山
10/27(日)妙義山奥ノ院鎖場で男性(55)が岩場をトラバース中に滑落した模様。防災ヘリが搬送、死亡確認
10/28(月)大菩薩峠から小菅村へ下山中の男女(76・64)が高指山付近で道に迷う。上野原署・消防らが救助
10/28(月)富士山須走ルート山頂付近で男性(47)が登山をライブ配信中に滑落。動画を見た複数の視聴者が警察に通報した。10/30七合目(3000m)で遺体発見
10/28(月)大山・甲ヶ山で男性(49)が仲間と別れ1人で下山したまま行方不明。10/29登山道を外れた沢で遺体発見
10/28(月)熊本県美里町の山中で女性(79)が伐採作業の立ち会い後、1人で下山中に行方不明。警察・消防が捜索中

気にかかった遭難事例

●新百姓山の遭難男性、遺体で発見
10月22日、九州・傾山地の新百姓山へ登った男性(64)が戻らず、行方不明になりました。23日、同居する妹が警察に届け出て、昼前に杉ヶ越登山口付近で、遭難男性のオートバイが見つかりました。その後、杉ヶ越登山口から山頂までのルートを中心に捜索しましたが、発見されませんでした。
10月28日14時30分過ぎ、新百姓山の西2kmにある「おもち谷」で、山菜採りをしていた男性が、倒れて死亡していた遭難男性を発見、通報しました。

新百姓山の西2kmということから、重内(おもち)谷本流に近い位置まで下っていたと思われる
原本:yamareco – 2017年5月4日 yamaumihitoさんの山行記録より

発見場所の詳細は不明、死因も把握できていません。おもち谷は新百姓山のすぐ西側にある谷で、地形図を見ると、新百姓山~杉ヶ越間のルートからいくつかのポイントで、おもち谷に迷い込みやすいことが推測できます。このことを逆に考えると、迷ったら素直に引き返せば、もとの正規ルートに戻りやすいことを意味します。
10月23日に発見されなかったことが不運でした。23日午後から24日にかけて雨になった可能性が高いです。谷を強引に下って抜け出そうとするのではなく、なるべく尾根に近い位置にとどまってビバークしていれば、発見されやすかったと思います。

●大山山系甲ヶ山でも、遭難男性死亡
10月28日、友人と4人で甲ヶ山などに登った後、午後から別のルートを1人で下山した男性(49)が、夕方になっても戻らず、携帯電話でも連絡がつかなくなりました。友人が警察に通報し、29日朝から捜索が開始されました。13時30分ごろ、消防ヘリが登山道近くを流れる沢沿いに倒れている男性を発見し、救助しましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。
男性は28日18時30分ごろ、家族に電話で「道に迷ったので帰りが遅くなる」と話していました。大山山系で今年初めての遭難死亡者になりました。

前事例同様、道迷い時の対応に失敗した結果、滑落または低体温症で死亡してしまった事例と言えます。インシデント(遭難寸前の状態)が起こったとき、サバイバル状態の中でも生き延びられる知識と装備を持つことが、この時期の登山には重要だと思います。「軽量化」で緊急用装備まで省略してはいけません。
※上記事例のかたがそうだったという意味ではありません。