[8月]夏山シーズンの遭難は大幅減少(続)

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[8月1~31日の遭難関係ニュースから(続)]
7~8月の山域別の遭難発生状況をまとめておきます。

●北アルプス
例年に比べて遭難は非常に少なかったです。後立山連峰は、白馬大雪渓4件、八方尾根2件、遠見尾根付近2件、鹿島槍ヶ岳、烏帽子岳各1件でした。死亡事例は、8/27遠見尾根で発生しています。
剱立山連峰は、剱岳4件、室堂平1件、薬師岳稜線2件でした。7/7室堂平で病死遭難(高山病か?)、8/26剱岳チンネ付近で滑落死亡事故がありました。
槍穂高連峰では、槍ヶ岳3件、北穂2件、奥穂2件、前穂2件でした。例年に比べて非常に少ないといえます。死亡事例は、8/2前穂北尾根で発生しています。
このほか、黒部源流山域2件、弓折岳1件、常念山脈5件でした。
●南アルプス
主稜線での発生は3件だけ(鋸岳、北沢峠、地蔵ヶ岳)でした。中心部よりも周辺山域での遭難が多くなっています。死亡事故は、8/1接阻峡付近、8/11梶谷川(釣り)で発生しています。
●中央アルプス
主稜線での発生は2件だけ(将棊頭山、熊沢岳)、周辺山域でも2件発生しています。
●八ヶ岳
全体の遭難発生数は昨年とほぼ同じでしたが、通常なら遭難が最も多い赤岳、阿弥陀岳、権現岳での発生が見られません。夏沢峠以北の北八ヶ岳で4件、横岳1件、編笠山2件、天女山1件でした。
●関東周辺
ここでは首都圏から主に日帰り圏内の広範囲な山域を指しています。今年の夏山シーズンで最も遭難が多かったのは、これらの山域でした。代表的な日帰りエリアである奥武蔵、奥多摩、丹沢では、死亡事故でなければ、遭難事故はほとんどマスコミで報道されません。したがって、特別に取材しないかぎり、遭難情報が把握しづらいのが現状です。
それ以外のエリアでは、奥秩父(大菩薩を含む)8件、足尾山塊3件、谷川連峰2件、雨飾山2件、その他、那須、奥日光、安蘇山塊、武尊山、榛名山、妙義山、西上州二子山など、広い範囲で遭難が発生しています。個々にあげませんが、死亡・行方不明事例も頻発しています。
●東北
把握できた事例は13件。発生山域は北から、岩手山(2件)、鳥海山(3件)、丁岳、月山、焼石岳(夏油温泉)、栗駒山、神室岳、吾妻連峰(2件)、安達太良山でした。そのほかに、飯豊・朝日連峰でも各1件発生しています。ただし、ほとんどは地元の登山者が遭難したもので、首都圏や近畿からの登山者が遭難した事例は少なくなっています。
●北海道
把握できた事例は13件。発生山域は、大雪山系(3件)、日高山脈(2件)、羊蹄山(2件)、空沼岳(2件)、利尻山、八剣山、お茶々岳、大千軒岳でした。遭難者住所が不明のものもありますが、地元登山者は一部のみで、本州から訪れた登山者の遭難が多いです。死亡事例は、7/5八剣山、8/9大雪・層雲峡、8/27羊蹄山、8/30日高・ヤオロマップ岳。
●近畿以西
把握できた事例は22件。白山および周辺で3件、鈴鹿山脈4件、大峰・台高4件、その他は散発的で、比良、大山、比婆山、四国石墨山、八多五滝、九州八面山、津波戸山、国見岳、市房山、屋久島高盤岳で発生しています。

[その他のニュース]
●三重県で8月に遭難急増
三重県で8月に入り遭難が急増しました。28日時点で8件13人にのぼり、昨年同期(4件4人)から倍増しています。7月までは例年より少なく18件21人(昨年同期25件29人)でしたが、8月に入って急増しました。新型コロナウィルスの影響で、人混みを避けて山に遊びに来る初心者が増加しているのが原因の一つではないかと分析しています。
8月15日、大普賢岳に勤務先の同僚など11人で登山に来ていた県外グループのうち、男女4人(20~30代)が下山時に道を間違えて遭難しました。翌日救助されましたが、スニーカーなどの軽装で、非常用食料もなく、登山届も提出していなかったそうです。(毎日8/31など)

●長野では遭難最多年齢層40~50代へ
長野県の8月までの遭難動向で、1/1~8/23の遭難者115人のうち、40~50代が最多の54人(47%)で、これまで最も多かった60代以上(36人=31%)を大幅に上回ったことがわかりました。県警山岳安全対策課では、新型コロナウィルスの影響で高齢者が登山を控える一方、中年登山者がテント泊などの重装備で、レベルの高い登山を志向しているのではと分析しています。
7月21日、烏帽子岳のブナ立尾根で男性(42)が疲労により動けなくなった事例では、男性の荷物は30㎏で、裏銀座コースへの挑戦を始めたばかりでした。8月15日、中央アルプス・駒ヶ岳で滑落遭難した男性(48)も、テント泊の重装備でした。(信濃毎日8/26)