[12月28~1月6日の遭難関係ニュースから]
2020年も終盤に入ってきましたが、保存記録として、1月からの山岳遭難データをアップしていくことにします。まず年末年始の状況から。
警察庁で1月9日に発表した公表資料によると、2019年12月29日~2020年1月3日に発生した山岳遭難は37件、遭難者数52人(死亡・行方不明4、負傷15、無事救出33)となっています。年末年始の遭難状況は気象条件によって大きく左右されます。年次的な比較はあまり意味がないのですが、発生数としては過去最多レベルとなっています。過去18年間で、件数・遭難者数ともに2017年に次いで2番目に多いです。しかし、発生数のわりに死亡・行方不明者数は少なかったといえます。
マスコミで報道された遭難事例は少なかった模様で、当方でも5事例しか把握できませんでした。軽度な遭難事例が多かったものと推測されます。以下のリストには、12月5週から1月1週(12/28~1/6)に発生したもので、当方で把握できた事例をあげています。
12/28(土)北アルプス横尾尾根で男性(41)が登山中に雪庇を踏み抜いて滑落負傷。岐阜県警ヘリが救助
12/28(土)六甲山町五介山の登山道に男性(70)が倒れているのを別の登山者が発見通報。その場で死亡確認
12/28(土)南アルプス北岳で男性(27)が登頂後、山小屋へ下山途中に転倒して負傷。防災ヘリが救助
12/29(日)奥秩父前衛鈴庫山で女性(73)が体調不良と頭痛や手足の痺れを訴える(脳出血)。防災ヘリが救助
12/30(月)北アルプス剱岳早月尾根2600mで男性2人が雪庇を踏み抜き滑落、1人(46)行方不明。1/6捜索打ち切り
12/30(月)北アルプス西穂山頂付近で男性(29)がルートを迷い行動不能。12/31悪天候で捜索できず、1/1遺体発見
1/1(祝/水)札幌国際スキー場でイタリア人男女7人が山頂からコース外に入って迷い通報、19:00自力下山し保護
1/1(祝/水)富士山御殿場口下り六合目付近で冬山装備を持たない男性(34)が凍結斜面で行動不能。御殿場署が救助
1/4(土)北アルプス燕岳を登山中の男性(56)が悪天候により道に迷い行動不能。遭対協救助隊が救助
1/4(土)南アルプス前衛ボンジ山で男性(55)が登頂後、下山中にルートを迷い通報。1.5時間後ヘリで救助
気にかかった遭難事例
●剱岳早月尾根で雪庇踏み抜き、行方不明
12月30日13時30分ごろ、北アルプス・剱岳の早月尾根2600m付近で、3人グループの男性(46)が滑落して行方不明になりました。同行者の男性(27)も雪庇を踏み抜いて約50m滑落しましたが、自力で元の場所へたどり着きました。もう1人の女性(49)は無事でした。
3人は28日に馬場島から入山しました。30日は早月小屋を早朝に出発し、約2800mまで登りましたが、天候が悪化したため引き返していたところ事故が発生しました。現場周辺は風雪になっており視界が悪かったそうです。男女2人は早月小屋(標高2200m)に戻り、常駐していた山岳警備隊員に救助要請しました。2人は1月1日に消防防災ヘリで救助され、背中の痛みを訴えていた男性は病院で治療を受け、重傷のもようです(傷病名などは不明)。行方不明の男性はその後も発見されず、上市署は1月6日で捜索を打ち切りました。
この年末年始は、マスコミを騒がせるような遭難事故は少なく、この事例は最も被害の大きかった一つでした。積雪期の剱岳は全ルートが上級者向きですが、その中でも、早月尾根は中級者でも何とか登れるのでは?と期待をもたせてくれるルートです。しかし、実際にはやはり相当グレードが高く、雪山遭難が多く発生しています。富山県警が毎年発表している『試練と憧れ』(山岳遭難統計)に、早月尾根の危険個所が下記のようにまとめられています。このような信頼性の高い情報をよく研究してのぞむことが重要だと思います。