[1月]地方の低山でも滑落事故

Pocket

[1月7~31日の遭難関係ニュースから]
1月の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

元日からの遭難発生を合わせても20件未満(当方が把握した事例数です)、現在までのところ、2020年の月別で最少の発生数となっています。その理由は、雪不足のために、雪山登山者、スキー場周辺への入山者、ともに少なかったからだと推定されます。
1月7日以降1月中の発生は、北アルプス3件、八ヶ岳2件、各地の低山など7件、スキー場関係3件でした。積雪が原因なのか、低山でも滑落事故が頻発しています。1月中で最も大きく報じられたのは、30日に北海道トマムスキー場周辺(管理区域外)で起きた雪崩事故で、フランス人男性1人が死亡しました。

1/7(火)伊豆・天城山で男女2人が道に迷い救助要請。大仁署・消防が捜索し救助
1/11(土)北アルプス西穂2700m付近で男性(30)が稜線から150m滑落して肋骨骨折など。県警ヘリが救助
1/11(土)鈴鹿・御在所山八合目付近の岩場で男性(68)が滑って転び左足を負傷、骨折の疑い。防災ヘリが救助搬送
1/11(土)三段峡(広島県安芸太田町)でビデオ撮影の男性(70)が山道から30m滑落、妻が通報。19:55発見救助
1/13B(祝/月)谷川・平標山松手山ルートで、スキーで下山中の男性(62)が転倒し左足を負傷。県警ヘリが救助
1/13(祝/月)丹沢・鐘ヶ嶽で男性(70)がコース上に倒れているのを登山者が発見、病院で死亡確認。外傷なし
1/15B(水)かぐらスキー場付近で男性(44)がコース外に出て戻れなくなり道に迷う。1/16津南町大赤沢で発見救助
1/19(日)北アルプス涸沢岳西尾根2400mで男性(52)がテント周囲を散策中、迷って戻れなくなる。1/22遺体発見
1/20(月)道志・向河原橋~不老山で40代男性が登山道を外れて道に迷い行動不能
1/22(水)谷川・浅間神社奥ノ院付近で男性(45)が登山中に姿が見えなくなり行方不明。1/23崖下1000mで遺体発見
1/25(土)八ヶ岳広河原沢右俣で男性(46)がアイスクライミング中に4m転落し右足骨折の疑い。県警ヘリが救助
1/26(日)北アルプス前常念岳で男性(23)が単独登山中、道に迷い行動不能。富山県警ヘリが救助
1/30B(木)トマム山南西の三角沢で管理区域外滑走中のフランス人男性(38)が雪崩に巻き込まれる。1/31遺体発見
1/30(木)八ヶ岳赤岳地蔵尾根で男性(51)が下山中に滑落し右足首骨折の疑い。茅野署・遭対協が救助
1/31(金)日光・丸山で男性(57)が下山開始直後に20m滑落して頭を強打。防災ヘリで搬送後死亡
注:「*」は遭難発生日以外の通報日、認知日、発見日など、「B」はバックカントリーまたは管理区域外滑走での遭難

気にかかった遭難事例

●トマムスキー場で雪崩、男性1人死亡
1月30日15時30分ごろ、北海道占冠村の星野リゾートトマムスキー場周辺で、フランス人男女8人グループが管理区域外を滑走中に雪崩が発生し、男性1人(38)が巻き込まれました。仲間が救い出したときには意識も脈もなく、蘇生を試みましたが断念して、その場に残して7人は下山しました。翌31日、道警山岳救助隊などが捜索し、山頂から約50m下の雪洞中に男性を発見し、収容後に死亡を確認しました。

この遭難事例については、日本雪氷学会北海道支部の調査チームによる調査報告速報がありますので、そちらを参照してください。地形図を見ると、事故発生場所はまさに雪崩の起こる地形です(赤の部分が雪崩発生場所です)。スキー・スノーボードをやらない雪山登山者から見れば、彼らはただただ危険な斜面に飛び込んでしまうものだなぁ……という感想が浮かんでくるばかりです。

出典:雪氷災害調査チーム「トマム山雪崩調査(速報)」2020/1/31