[9月]全国的に遭難減少の傾向がつづく

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[9月1~30日の遭難関係ニュースから]
遅くなりましたが、夏山シーズンに続く9月の山岳遭難状況まとめです。

収集したデータから推測すると、全国で昨年比4割近い(約37%)遭難減になりました。特に減少が顕著だったのは、南アルプス、富士山、続いて北アルプス南部です。また、関東近郊、近畿以西でもほぼ半減しています。理由は2点考えられます。
(1) 入山者自体が少なかった
(2) 入山者の登山のやり方が慎重になった
新型コロナウィルス感染症への対応がいろいろ言われる訳ですが、登山者の対応の仕方は正しかったと推測されます。

(日付の*印は、通報日、発見日、認知日などであることを示します)
9/1(火) 北アルプス・剱岳早月尾根下部で男性(31)が目まいと痙攣を訴え、脱水症により動けず。9/2県警ヘリが救助
9/2(水) 北アルプス・蝶ヶ岳で女性(72)が三股へ下山中、疲労により行動不能。安曇野署が救助
9/2(水)* 北アルプス・笠ヶ岳2280m付近の沢で両膝下部分の人骨を登山者が発見。9/10昨年9月死亡の女性(74)と判明
9/4(金) 南アルプス・薬師岳から御座石温泉へ下山中の男性(55)が道に迷い、19:30救助要請。韮崎署が救助
9/8(火) 北アルプス・剱岳早月尾根2600mで男性(44)が下山中に80m滑落、背骨など骨折。防災ヘリが救助搬送
9/9(水) 奥志賀・雑魚川渓谷をハイキング中の女性(79)が遊歩道から足を踏み外して滑落負傷。岳南消防が救助
9/9(水) 北アルプス・西穂高岳で男性(75)が天候悪化で引き返し中100m滑落、頭部裂傷など。長野県警ヘリが救助
9/10(木) 大菩薩・六本木峠付近で男性(69)が熊3頭に遭遇、子熊に襲われ顔・左足など裂傷を負う。防災ヘリが救助
9/11(金) 北アルプス・剱岳前剱付近で女性(53)が登山中バランスを崩し20m滑落、左肩・右足首骨折。県警ヘリが救助
9/12(土) 男鹿山塊・日留賀岳の南3kmで男性(65)が悪天候のため下山途中、道に迷い遭難。9/13発見、防災ヘリが救助
9/12(土)* 日光市湯西川の山中でキノコ採りの男性(75)が遭難のおそれあり、今市署が捜索(詳細不明)
9/12(土) 苗場山系・小松原湿原で男性(40代)が沢登り中に10m下に滑落し、別の登山者が通報。県警ヘリが救助
9/12(土) 北アルプス・雄山周辺から別山へ縦走中の男性(20代)が突然倒れ意識不明となる。搬送先の病院で死亡
9/13(日) 日光・黒檜岳登山口付近で男性(75)が下山中に足を滑らせ40m滑落、頭・右腕など負傷。日光署・消防が救助
9/13(日) 中央アルプス・恵那山中腹付近で女性(47)が恵那山神社から入山し、下山途中で道に迷う。9/14朝発見救助
9/13(日) 脊振山系・井原山洗谷ルートで『季刊のぼろ』編集長男性(57)が行方不明。9/14滑落したと見られる遺体発見
9/14(月) 奥秩父・廻り目平の岩場で男性(42)がクライミング中に転落して負傷。佐久広域消防が救助
9/14(月) 北アルプス・黒部下ノ廊下志合谷付近で男性(21)が水平歩道から谷へ100m滑落死亡。9/15ヘリで収容
9/14(月) 北アルプス・焼岳で男性(43)が中ノ湯方面へ下山中に転倒して負傷。県警ヘリが救助
9/15(火) 八ヶ岳・赤岳西側斜面で女性(71)が何らかの原因により150~200m滑落。県警ヘリが救助、病院で死亡確認
9/15(火) 南アルプス・燕頭山で女性(52)が下山中に足を滑らせて30m滑落、腰・胸などを骨折。防災ヘリが救助
9/15(火) 中央アルプス・大平峠から摺古木山方面へ登山中の男女(29・27)が道に迷い行動不能。県警ヘリが救助
9/16(水) 足尾・六林班峠から下山途中の男性(67)が道に迷い一時遭難。9/17自力下山、無事確認
9/16(水) 北アルプス・白馬大雪渓で男性(66)が猿倉方面へ下山中に滑落して負傷。大町署・遭対協が救助
9/17(木)* 奥多摩・百蔵山で登山者が土砂に埋もれた遺体発見。10月、2019/4/16の遭難男性(76)と身元判明
9/17(木) 四阿山2200m付近を下山中の男性(39)が道に迷い、沢に滑落して腰・足を負傷。9/19県警機動隊が救助
9/17(木) 北アルプス・燕岳~東沢岳で男性(73)が道に迷い「いる場所がわからない」と通報。9/25未発見
9/18(金)* 飯豊連峰福島県側で女性(75)が下山予定の9/18に下山せず、連絡不通。未発見のもよう(詳細不明)
9/18(金) 南アルプス・遠山川(飯田市南信濃)で男性(57)が渓流釣り中に滑落負傷して行動不能。飯田広域消防が救助
9/18(金) 北アルプス・大天井岳付近を縦走中の男性(25)が低体温症となり行動不能。県警ヘリが救助
9/19(土) 鈴鹿・御在所岳で男性(66)が登山中に高さ2mの橋から転落して頭などを打撲。防災ヘリが救助搬送
9/20(日) 和賀山塊・高下岳で男性(49)が下山中に足を滑らせ、右足首をひねって捻挫。防災ヘリが救助搬送
9/20(日) 蓼科山北東側2400m付近で男性(55)が下山中にバランスを崩して3m滑落、胸骨骨折など。県警ヘリが救助
9/20(日) 北アルプス・涸沢パノラマコースを下山中の男性(51)が道に迷ったうえ、転倒して負傷。県警ヘリが救助
9/20(日) 三徳山投入堂付近で男性(46)が下山中に足を滑らせ10m以上滑落、尾てい骨骨折など。防災ヘリが救助
9/20(日) 英彦山(福岡県添田町)で単独登山の女性(40代)が道に迷う。田川署・消防が救助
9/21(祝/月) 空沼岳から札幌岳へ縦走中の男性(60代)が道に迷い行動不能。道警ヘリが救助搬送
9/21(祝/月) 那須・朝日岳から下山中の男性(71)が岩場で足をとられ10m滑落、頭や左脚を負傷。防災ヘリが救助
9/21(祝/月) 尾瀬・燧ヶ岳付近で、仲間と別れ渓流釣りに向かった男性(66)が集合場所に現れず。9/22山中で無事発見
9/21(祝/月) 浜松市天竜区の山中で男性(30代)が渓流釣りに出掛けたまま帰宅せず、家族が届出。9/22遺体で発見
9/21(祝/月) 北アルプス・剱岳別山尾根2800m付近で男性(46)がガレ場で足をひねり左足首骨折。防災ヘリが救助
9/21(祝/月) 北八ヶ岳・三ツ岳で女性(65)が下山中に岩を踏み外して転倒し右腕骨折。県警ヘリが救助
9/21(祝/月) 八ヶ岳・峰ノ松目付近を下山中の男性(38)が、ルートを誤って道に迷い行動不能。9/22茅野署などが救助
9/21(祝/月) 北アルプス・黒部五郎岳の沢付近で男性(43)がぐらついた直径1mの岩とともに転落し、左大腿部骨折
9/21(祝/月) 北アルプス・双六岳2600m付近で女性(54)が転倒して左足首を骨折。付近の山小屋へ自力で移動後、救助要請
9/21(祝/月) 北アルプス・槍沢2600m付近を下山中の男性(57)が浮石につまずき転倒、右足首骨折のもよう。県警ヘリが救助
9/21(祝/月) 北アルプス・北穂から涸沢岳へ縦走中の男性(24)が滑落して顔など負傷。県警ヘリが救助
9/21(祝/月) 北アルプス・北穂から下山中の女性(39)が50m滑落し、全身打撲や首を骨折のもよう。県警ヘリが救助
9/21(祝/月) 大峰・双門ノ滝の北1kmで男性2人が登山道から15~20m滑落。男性(49)右足骨折、男性(47)腰を骨折の疑い
9/22(祝/火) 西吾妻山大凹の水場付近で女性(67)が岩場へ飛び移る際に失敗し、左脚脛骨・腓骨を骨折。防災ヘリが救助
9/22(祝/火) 奥秩父・烏帽子岩左稜線をクライミング中の男性(68)が体調不良となり、防災ヘリが救助。病院で死亡確認
9/22(祝/火) 安倍奥・牛首峠~山伏で男性(70)がペースが合わず仲間とはぐれ、その後行方不明。消防ヘリが発見救助
9/22(祝/火) 北アルプス・前穂吊尾根で男性(70)が登山道から50m滑落し、目撃した登山者が通報。9/23県警ヘリが収容
9/22(祝/火) 北アルプス・燕岳から東沢岳へ縦走中の男性(55)が疲労により行動不能。安曇野署が救助
9/23(水) 9/23夜、夏油温泉付近の山中で女性(72)が行方不明となり、9/24~25は発見できず。9/25捜索打ち切り
9/23(水) 北アルプス・常念岳で男性(54)が下山時に発熱や頭痛などを訴え動けなくなる。病院へ搬送後死亡確認
9/24(木) 八幡平・夜明島渓谷の茶釜ノ滝付近で、女性(24)が頭に落石を受け頭蓋骨陥没骨折。警察・消防が救助
9/26(土) 大沢山(長野県立科町)でキノコ採りの男性(70)が道に迷って動けず、携帯電話で通報。9/27佐久署が救助
9/26(土) 雨飾山から下山中の男性(52)が疲労のため行動不能。遭対協救助隊が救助
9/27(日) 古賀志山から下山中の女性(51)が岩場で足を滑らせ右足首骨折、行動不能。防災ヘリが救助
9/28(月) 早池峰山系・薬師岳で男性3人(70代以上)が日没までに下山できず、2人が先行して通報。遠野署などが救助
9/28(月) 北アルプス・別山乗越付近で女性(70)が奥大日岳に向けて登山中、1m滑落して右手首骨折。山岳警備隊が救助
9/29(火) 御座山(長野県北相木村)で女性(50)と男児(7)が下山中、道に迷い行動不能。北相木村消防が救助
9/29(火) 八ヶ岳・北沢登山道で男性(65)が下山中、疲労と体調不良のため行動不能。茅野署などが救助
9/29(火) 北アルプス・前穂重太郎新道で男性(70)が下山中にバランスを崩して滑落負傷。県警ヘリが救助
9/30(水) 道志山塊・高川山で男性(53)が羽根子山経由で下山中、山林内で道に迷い救助要請。大月署が救助
9/30(水) 富士山山梨側四合目付近でキノコ採りの男性(38)が、体調不良のため動けなくなる。防災ヘリが救助
9/30(水) 中央アルプス・千畳敷で女性(67)が木曽駒ヶ岳へ登山中、八丁坂付近で転倒負傷。駒ヶ根署が救助
9/30(水) 中央アルプス・烏帽子岳へ登山中の女性(69)が何らかの原因により倒れる。県警ヘリが救助、病院で死亡確認
9/30(水) 北アルプス・剱岳で男性(65)が道に迷い小屋にたどり着けず、10/1小屋が通報。10/2防災ヘリが救助
9/30(水) 鈴鹿山脈で男性(78)が三重側から杉峠を目指し、誤って神崎川に迷い込む。10/1ツメカリ谷出合付近で発見救助
9/30(水) 英彦山(福岡県添田町)で男性(70代)が妻と別れ1人で登山中、玉屋神社付近で道に迷う。田川署・消防が救助

[その他のニュース]
●夏山遭難のまとめを公表
9月には、夏山シーズン(7~8月)の遭難発生状況を主要各県が発表します。また、各県の集計数をまとめた全国の統計を、警察庁が10日前後に発表するのが通例です。
警察庁の発表によると、今年の夏山遭難は470件(136件減)発生し、541人(128人減)の人が遭難しました。これは大幅な減少で、この結果、過去10年間で最少になりました。当欄では約4割減とみていましたが、警察庁の発表では約2割減少でした。減少幅が小さくなったのは、北海道、東京、神奈川、茨城、栃木、埼玉、愛知、奈良、鹿児島などで遭難が増加したからです。
主要県の発表は次のとおりです。
・長野県は大幅に減少して、47件(52件減)、52人(54人減)。遭難者数に占める60歳以上の割合は38.5%(18%減)となり、高齢者が入山を控えた傾向がうかがえるといいます。発生場所も北アルプス48.9%(28%減)に対して、里山での遭難が2倍になりました
・富山県では、半減しました(9/4北日本新聞)
・新潟県では、6割減少しました(9/6新潟日報)
・山梨県では、6割近く減少しました。南アルプスは2件(26件減)、富士山はゼロ(9/24山梨日日新聞)
・静岡県では5件発生(53件減)、実に9割減少しました。昨年43件だった富士山は入山禁止でゼロ(9/25静岡新聞)

気にかかった遭難事例

●登山雑誌『季刊のぼろ』編集長が滑落死
九州脊振山地・井原山の洗谷ルートで、9月14日10時過ぎ、西日本新聞社社員の野中彰久さん(57)がうつ伏せの状態で倒れているのが発見され、その場で死亡が確認されました。
現場は瑞梅寺ダムから約3km上流の沢沿い。野中さんはヘルメットをかぶってなく、後頭部陥没、顔面も負傷していました。何らかの原因で滑落したとみられます。野中さんは6月から登山専門誌『季刊のぼろ』の編集長を務めており、地元では驚きの声があがっているそうです。
洗谷ルートは地元では上級向とされますが、識者によると「普通の登山靴で歩け、沢登りと通常登山の中間くらいのコース」だそうです。4カ所のロープ場があり、高度があって、そこを抜けるのが慣れない人には難しいといいます。
同月18日、関係機関が緊急会議を開いて洗谷ルートの通行禁止を決定し、登山口は閉鎖されてしまいました。

私見ですが、登山ルートは市民、住民、愛好家たちが共有している文化的財産で、歩き続けられることによって維持されてきたものです。通行禁止以外にも事故を防ぐ方法はあるでしょう。どういうメンバーで通行禁止を決定したか不明ですが、登山者代表なども含め、幅広い意見を聞いたうえで決定してほしいと思いました。