八方尾根から唐松岳 2019年2月24日

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北アルプスでは、初級者が登れる雪山登山のルートはほとんどありません。八方尾根から唐松岳を往復するルートは、初級者が北アルプス主稜線の1峰に挑戦できる点で、とても貴重なものです。しかし、技術的にはやさしくても、冬季の気象条件などは困難が大きく、そのため、このルートは遭難の多いものでもあるのです。

01:八方山付近から、五竜・鹿島槍に圧倒される

雪質は予想以上に春山状態でした。ほとんどの人は最初からアイゼンをつけていました。私はせっかく持ってきたスノーシューで行ってみることにしました。
八方池山荘の裏側の八方山へ登ると、石神井ケルンのある展望地です。ここからもう五竜岳・鹿島槍ヶ岳が圧倒的な姿でそびえています。

02:第2ケルン近くのトイレと不帰ノ嶮

いかにも迷いそうな広い尾根を登っていくと、左側に立派なトイレの建物があり、少し離れて第2ケルン、ゆるやかな斜面を登り切って、逗子開成高校の遭難碑である八方ケルン、八方池近くの第3ケルンと続きます。ここまでの区間がたぶん一番迷いやすい所です。

03:上ノ樺とテント

第3ケルンの先は尾根すじがはっきりしてきて、ダケカンバの疎林が現れ、下ノ樺、上ノ樺の地名があります。テント地になっている所です。上に白く丸いピークが見えますので、あれが丸山だとだれもが思うでしょう。

04:丸山へ登る人たち
05:丸山上部の登り、右の三角形が唐松岳

上ノ樺でひと休みして水分・食料補給をしました。ここでアイゼンに替えるのが賢明でした。この上はどこも風が強く寒かったです。
丸山へは30分ほどの急登(この尾根の中では)です。不帰ノ嶮がいよいよ目前に迫って、複雑な岩と雪の模様を描き、キノコ雪、ヒマラヤひだ、というような片鱗を見せています。雪がもう少し多かったら見事なことでしょう。

06:主稜線への最後の部分、雪崩チェックが必要

夏の登山道は、いくつかの地点で南側(向かって左側)を巻いていきますが、積雪期はすべて稜線伝いに忠実に登っていきます。そして、最後に主稜線上の2650mピークに登ります。ここの直登部分が、しいて言えば、本ルートの一番危険な箇所だと思いました。今回はピーク下をトラバースしていましたが、雪崩の危険がある場合には、岩場を直登する必要があるでしょう。

07:頂上へ登山者の列ができる

ここを越すと、唐松岳頂上山荘の真上にでます。まだ遠くに見える唐松岳は、標高差100mぐらいの登りです。頂上往復と休憩を含めて1時間は必要でしょう。下りの時間を考えて、15時30分までに八方池山荘に戻れないなら、頂上はあきらめなくてはなりません。これが本ルートの最も残念なところです。

08:頂上より五竜岳
09:頂上より剱岳と北方稜線

私は稜線着12時、休まずに出発して頂上12時30分着、約30分間滞在できました。
黒部川は深すぎて見えず、対岸に剱・立山連峰がすばらしいです。黒部源流山域から槍・穂高連峰まで、北アルプス全域を見渡す絶好のコンディションでした。

10:下る人たち(1)
11:下る人たち(2)

下りは、丸山14時、八方池山荘に15時10分に下りることができました。白馬三山が斜光線を受けて、きれいな姿で望むことができました。

12:下りで見た景色:不帰2峰~天狗の雪模様
13:下りで見た景色:流れ込んだ斜光線

[登るための注意点]
このルートを登るには、守るべき約束事(ルール)があります。
(1)八方ゴンドラリフトの乗車口で、登山届を提出しなければなりません。
(2)登山口の八方池山荘前までは、スキー場内のゴンドラ、リフトを利用して登り下りします。スキー場内を徒歩で移動することは禁止されています。
(3)徒歩での登山の場合は、最終のゴンドラ、リフト運行時刻までに下山する必要があります。今回は八方池山荘前15時40分でした(季節・曜日により変わるかもしれません)。

[注]『入門&ガイド 雪山登山』の訂正事項はありません