柿生の里から早野・王禅寺へ

(歩いた日=2019年5月18日)
柿生の里散歩道として親しまれているコースを歩きます。コース中にひんぱんに案内板が設置されていますが、コースは複雑で、注意していないと迷ってしまうかもしれません。ここでは詳細にガイドしましたので参考にしてください。

柿生駅南口から50mほど歩いて駅前通りに出て右折し、川崎信用金庫の交差点を左折します。広い車道はバス通りで、5分ほど歩くと左側に稲荷神社、反対側のすぐ先に右側に上がる階段があります。「柿生トンネル跡」の表示があります。

(1)「おっ越山ふれあいの森」の散歩道
(2)おっ越山の南出口付近、右側斜面に竹林があります

階段を上がると、柿生中裏手の小さな山に入ります。ここから始まる緑地の道は「おっ越山ふれあいの森」の名前があります。しばらくの間、意外に深い森のなかのウォーキングを楽しめます。途中、右に浄慶寺、左に麻生台団地への道が分かれます。右側に竹林のある道に入ると、間もなく住宅地に抜け出ます。

道なりに下って行き、左にカーブして大きい車道に出ます。左側一帯は麻生台団地です。右折して車道を団地の外れまで来ると、車道が下りになる手前に案内板があり、月読神社への道標になっています。

月読神社への道に入り、すぐ左に広い道が分かれますが、直進する細い道に入ります。こちらのほうが高台の縁を歩くので展望がいいです。南端に来ると、これから向かう早野方面の緑地が一望できます。早野が大きい緑地であることがわかります。西側の丹沢方面は、建物がじゃまになって見えにくく残念です。

(3)月読神社、本殿裏にある古い常緑樹
(4)月読神社、東口の鳥居

車道の突き当たりで左折すると、すぐ月読神社(西口)です。左折せずに踏み跡を直進しても境内に入ることができます。月読神社は3方向に入口がありますが、西口から入って東口に抜けます。東側の裏のほうに一番立派な常緑樹が数本あります。

東口からまっすぐに下りて、車道を横切って直進すると、オレンジ色の擬宝珠のついた不動橋を渡ります。川は真福寺川ですが、水量が少なく汚いです。少し進むと左側に上麻生花島公園があり、入口にコース案内板が立っています。ここから車道をショートカットして右の歩道に入り、車道に出る手前にまた案内板があります。右の細い道に入ると、東柿生小学校の交差点に出ます。ここには古い石の道標が保存されています。

交差点から山の方向(北東)をめざし、暗渠の上に作られた道に入ります。周辺は畑作地になります。行き詰まりは左側に駐車場があり、直進すると池のフェンスに突き当たって、右側に籠口ノ池公園があります。

(5)籠口ノ池公園、コナラの木が多い斜面中腹の歩道

公園に入って左へ行き、あずま屋から池の縁の歩道を歩き、途中からコナラの多い中腹の道を歩いて戻ります。南方向へ坂道を登ると、遊具のある広場から公園の南口に出ます。車道を右にたどり、車道が左にカーブする所から右の道に入り、ゆるく登って公園の南端まで来ます。先ほどの遊具の広場の裏手に続く歩道から、竹林の中を通ってここへ来ることもできます。

公園南端の竹林から左折し、2階建ての低層マンションの前で右折します。稲荷社へ続いている竹林の右端に沿って下って行きます。前方に眺めが開け、寺家ふるさと村やこどもの国方面の緑の丘が見えています。

(6)稲荷森稲荷社、竹林山の稜線上にあります

1車線の細い車道に下りたら左に行きます。前方に高いケヤキの木が見え、その手前に稲荷森稲荷社の参道分岐があります。稲荷社へは先ほどの竹林山の稜線まで登り、片道5~6分かかります。小さいですがきれいな神社です。

ケヤキの大木があるお屋敷を左にすぎて下って行くと、コースの案内板とカーブミラーがあります。T字路を左折し、お屋敷の広い敷地の縁を歩いて行きます。左側に小さい神社(神明社)をすぎます。突き当たって道なりに右折して、左折するとバス道路に出ます。正面は緑の山が見え、手前に畑作地があります。右折して早野に向かいます。これからしばらくは畑作地の多い所です。

(7)通行量の多い石橋交差点にある供養塔
(8)早野川沿いの低地には小さな農園が多い

早野方向に150mほど行くと石橋交差点で、石橋供養塔の遺跡があります。さらに100mほど進み、左へ曲がるバス路線と分かれて右の歩道に入ります。細い流れの早野川に沿った一帯はさまざまな作物の農地が広がっています。

(9)子ノ神社、古いものらしく狛犬も独特

途中にある子ノ神社は、古く由緒ある神社のようです。狛犬は子犬を従えた見たことのない形式のものでした。

川沿いを下流に歩いて、川崎市踊場ポンプ場が右側に見えたら左折します。碁盤状の車道を2つ通過し、3つ目でバス通りに出るので右折して、1つ右隣りの交差点を左折します。ここには「早野聖地公園入口」の看板があります。

(10)早野の里山、ジャガイモ、柿の木、雑木林、竹林
(11)早野の小麦畑
(12)きれいに整理された早野の竹林

この付近から早野の里山風景が見られます。左への2つ目の分岐を左折し、突き当たったら右折、すぐ突き当たったら左折します。その先に五郎池があります。
ここまでの径路は複雑ですが、里山風景のよい所を選んで歩いたためです。別の径路でも五郎池に到達できれば問題ありません。

(13)里山景観が意図的に保存されています
(14)上池最上部の森、80.8m三角点の近く

五郎池から上池にかけては、谷戸地形の奥に自然林が維持されています。山奥まで入った林道を歩き、最後は完全な山道になって虹ヶ丘へ抜けます。狭い範囲かもしれませんが、川崎市内に残された多摩丘陵の昔の自然をかいま見ることができます。

(15)早野・虹ヶ丘分岐を示す古い道標

出た所は車道の角で、左側に駐車地が見えます。右折する車道ではなく、正面から右斜め方向への車道に入ります。突き当たったら道なりに右折、車道に出たら左折します。350mほどでT字路に出て左折、もう1度T字路に出て左折すると、琴平神社の下に着きます。交差点のすぐ手前です。
琴平神社は真新しく立派な建物の神社です。正面は急な階段の表参道、右横にゆるやかに登る車道があり、こちらからも神社へ行けます。
この道に入り、神社をすぎて登り切った付近に王禅寺ふるさと公園の南口があります。園内に入ってすぐ左側にトイレ、右側は遊具がある子どもの遊び場です。ここをすぎて車道をさらに登り、もう1つ上側の公園入口に行きます。車道から左に入る道が2つあって、右は王禅寺に通じています。山の稜線に登る左の道に入ります。

(16)王禅寺ふるさと公園の雑木林ゾーン
(17)王禅寺の表参道(虹ヶ丘からの山道)
(18)星宿山王禅寺の旧本堂

王禅寺ふるさと公園は北半分に多目的広場と池や流れがあって、広場の周囲と公園南側に雑木林が保存されている自然公園です。南側の雑木林を歩き、一度公園の外(東側)に出て、西口から王禅寺へお参りします。
戻って広場の北側の雑木林に入り、歩道をたどって駐車場のある裏門坂出口に出ます。「裏門坂」バス停から、小田急線柿生、新百合ヶ丘、東急線あざみ野、多摩プラーザの各駅へのバスがあります。
人工温泉「湯けむりの里」へ行く場合は、王禅寺の南参道を虹ヶ丘へ下ると近道になります。王禅寺から徒歩約20分です。

[アクセス] 帰り:裏門坂(東急バス15分)柿生駅前(柿生駅南口)、または、裏門坂(東急・小田急バス15分)あざみ野駅
※「柿生駅前」バス停は駅から離れており、柿生駅南口から徒歩約3分
[参考時間] 柿生駅南口(15分)柿生トンネル跡(5分)おっ越山(20分)麻生台団地(15分)月読神社(30分)籠口ノ池(35分)子ノ神社(20分)五郎池(20分)虹ヶ丘の車道(15分)琴平神社(15分)王禅寺公園南口(20分)王禅寺(20分)駐車場/「裏門坂」バス停 計3時間50分
[追加情報]
・コースが長めです。「子ノ神社~早野」か「琴平神社~王禅寺」のどちらかをカットすれば短いコースにできます。
・横浜市や東急線方面から行く場合は、あざみ野駅から新百合ヶ丘駅行きバスに乗り「真福寺小学校」で下車して、徒歩10分で柿生駅へ行くことができます。径路は地図(赤の細破線)参照。
・虹ヶ丘団地近くに人工温泉「すすき野湯けむりの里」があります。入場料が高めですが、あざみ野駅へ無料送迎バスがあります。虹ヶ丘営業所から徒歩約12分です。

戸塚の市民の森

(歩いた日=2019年5月12日)
横浜市戸塚区には4つの「市民の森」がありますが、そのうち「ウイトリッヒの森」「深谷市民の森」「まさかりが淵市民の森」の3カ所を結んで歩きました。

戸塚駅西口(戸塚バスセンター)からドリームハイツ行きのバスに乗り、「横浜医療センター前」で降ります。バス道を少し戻り、右折して大正中に向かいます。学校の前で左折し、突き当たったら右折します。長い車道を行くと左側は深い森になり、一帯は福祉施設の敷地になっています。600mほど、7~8分でウイトリッヒの森(東口)に着きます。入園すると左側にトイレがあります。

(1)ウイトリッヒの森、針葉樹の多い北側
(2)ウイトリッヒの森、チロリン広場にあるサクラの大木

ウイトリッヒの森は中央通路の右が谷側で、スギやシダ類の多い暗い森、左は尾根側でコナラなどの明るい林です。両方を回る経路を工夫してゆっくり歩きました。それでも、30分もあれば一巡してしまいます。中央のアリンコ広場には休憩できるベンチと、小さい石像・碑があります。東口から入ってすぐの左側一帯はチロリン広場の名前がありますが、施設のようなものは何もありません。桜の大木があって花の時期には見事でしょう。

(3)宇田川歩道を上流へ歩きます(宇田川橋の付近)

ウイトリッヒの森の西口に出て、車道を道なりに下っていくと宇田川橋に導かれます。対岸に俣野小、川の両岸に歩道があります。上流に向かって左側(学校側)の歩道を上流に向かいます。このへんの宇田川は、浄化のためにコイを放っているようで、水流はコケ溜まりが少なくきれいです。
最初に車道を横断すると(芙蓉橋)、対岸の歩道は終わって車道に変わりますが、こちら側は歩道が続いています。さらに、韮橋、新芙蓉橋で車道を横断します。次の道下橋の所で車道に上がって左折し、スーパーの裏側を回っていくと、戸塚西公園の入口階段があります。

(4)戸塚西公園、日曜日で親子連れが遊ぶのどかな風景

緑の多い坂道を登って行くと、左側にトイレや広場があって、休日なら親子連れなどでにぎわっています。ゆるやかな丘の上まで登り切ると、公園の北端は畑地に接しています。右折して坂道を下り、老人施設の建物をすぎ、神社の森へ向かって左折する小道に入ります。

(5)竹林を背に立つ三嶋神社、右側には古木が数本ある
(6)専念寺に咲いていたピラカンサ(ヒマラヤトキワサンザシ)

神社は古い立派なもので、きれいな竹林と、見ごたえのある常緑樹の大木、ケヤキの老木があります。神社正面で右折すると表参道へ出てきます。
ここで川沿いの歩道に戻って、左(上流)側へ行くと専念寺があります。交通量の多い鎌倉街道を横断します(深谷橋)。

(7)深谷市民の森の入口

約200m上流へ歩いて、村上橋を対岸に渡ると、すぐ先に深谷市民の森の入口があります。深谷市民の森は2012年に開園した新しいもので、東側の半分強はまだ歩道が設置されていないようです。西側から東側出口まで400mほど、きれいに管理された気持ちのよい森林歩道ですが、ゆっくり歩いても10分ほどで終わってしまいます。歩道が拡張されれば、まさかりが淵の森へ連絡するようになるのでしょう。
東側出口から住宅地に入り、急坂を北東方向へ登ります。200mほど一気に登ると、まさかりが淵市民の森の南縁の車道に突き当たります。左右どちらからも入れますが、右に回り込んで、殿山広場から入ることにします。

(8)まさかりが淵市民の森、殿山広場からこども広場へ

まさかりが淵市民の森は、開園後35年になる古い市民の森です。殿山広場からこども広場への道は、尾根上の道に該当します。コナラとササの明るい林で、つかの間ですが、山歩き感覚を味わうことができました。

(9)こども広場のベンチ

こども広場にはあずま屋、ベンチ、トイレがあります。ひと休みするのによい場所です。ここから左折してまさかりが淵をめざします。宇田川へ向かって下り、途中、斜面を斜め方向に下り(トラバース)、最後は長い階段を下り、小さな湿地を通って殿山橋に出ます。

(10)宇田川を下流へ歩きます、左側には深い森が見られます
(11)まさかりが淵付近の常緑樹林

橋の手前で左折して、宇田川沿いの歩道を下流へ歩きます。右側は宇田川、左側は市民の森ですが、尾根上とはちがって、常緑樹の多い深い雰囲気の森です。途中、まさかりが淵の横を通過しますが、こちら側からはよく見えません。

(12)まさかりが淵、石組みの人工的な滝

村上橋まで歩いたら、対岸に渡って、川の向こう側を歩いて引き返します。5分ほどでまさかりが淵の展望台に着きます。昔は自然の淵(滝)だったのでしょうが、今は石を積み上げた人工的な滝になっています。ここだけ見物に来る人もいるのでしょう、下り口に駐車スペースが作られています。ただ、近くに牛舎があって、その臭いが漂ってくるのが残念でした。生活圏なので仕方のない所です。

(13)市民の森の周縁にあった畑作地

殿山橋へ戻ったら対岸に渡り、市民の森入口を通過して、次の分岐を右に入ります。右側に畑作地が広がり、背景に市民の森を見上げる里山風景となります。
そのまま細い車道を北東方向につないで歩いて行くと、通行量の多いバス道路に出ます。左へ行くと「中村三叉路」、右へ行くと「宝寿院前」バス停です。

[アクセス] 行き:戸塚駅西口・戸塚バスセンター(神奈中バス13分)横浜医療センター前/帰り:中村三叉路または宝寿院前(神奈中バス12分)戸塚駅西口
[参考時間] 「横浜医療センター前」バス停(10分)ウイトリッヒの森東口(30分)同西口(5分)宇田川橋(25分)戸塚西公園(10分)三嶋神社(15分)深谷市民の森(25分)まさかりが淵市民の森・殿山広場(5分)こども広場(10分)殿山橋(10分)村上橋(5分)まさかりが淵(5分)殿山橋(10分)「中山三叉路」バス停 計2時間45分
※戸塚駅まで歩く場合、殿山橋(40分)戸塚駅
[追加情報]
戸塚駅前に至る柏尾川は桜の名所として有名です。開花期には立ち寄るといいでしょう。まさかりが淵市民の森から柏尾川高嶋橋まで徒歩30分、それから戸塚駅まで徒歩10分です。

[5月3週]屋久島で大雨により300人超が孤立

[5/14~20の遭難関係ニュースから]
5月第3週の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

雪山登山やバックカントリーはそろそろシーズンオフになりました。遭難で多いのは山菜採り遭難と、低山ないし中級山岳(1000~2000m程度の山)の日帰り登山での遭難です。
登山での遭難は、岩場や急斜面からの転落・滑落事故が多いです。道迷い中に滑落事故が起こることもあります。5/14御在所山、5/15古賀志山、5/16六甲、5/17京都北山、いずれも滑落事故でした。
六甲や京都北山の例は、単独登山で滑落して動けなくなると、発見が遅れるという厳しい事例です。
この週には、それ以外にも印象的な遭難事故がありました。

5/14(火)秋田市仁別の山林で山菜採りの男性(71)が滑落(推定)死亡。5/15遺体発見
5/14(火)鈴鹿・御在所山裏道登山道で女性(46)が滑落重傷。警察・消防が救助
5/15(水)古賀志山(宇都宮市)で男性(68)が滑落負傷
5/16(木)六甲山に出かけた男性(72)が戻らず行方不明。5/21山中の沢で遺体発見
5/17(金)青森県今別町の山林でタケノコ採りの男性(72)が行方不明。5/19自力下山
5/17(金)京都北山の廃村八丁方面へ入山した男性(40)が滑落して重傷を負い、動けなくなる。5/17家族が通報、5/19発見救助
5/17(金)ロシア・カムチャツカ半島のカーメニ火山で山岳ガイド澤田実さん(50)が滑落死
5/18(土)屋久島で大雨による県道の土砂崩れが複数箇所発生。登山者300人超が山中で一時孤立し下山できなくなる。自衛隊などが出動し、5/19夕方までに314人が無事下山
5/20(月)富士山山梨側八合目で男性(20代)が装備不良などの理由で動けなくなり救助要請。警察の救助隊が捜索中、連絡しないまま自力下山・帰宅(遭難騒ぎ)

[6/20追記]
5/18(土)奥秩父・乾徳山で男性(62)が下山中に転倒し、意識不明の重体

気にかかった遭難事例

●澤田実さん、カーメニ火山で遭難死(5/17)
山岳ガイドの澤田実さんが、カムチャツカ半島のカーメニ火山(4575m)で滑落死亡しました。
カーメニ火山はカムチャツカで2番目に高く、国内外から多くの人が訪れるそうです。事故現場は標高約3900m、凍結した斜面から標高3600m付近まで滑落しました。ベースキャンプは標高3300mにありました。
澤田さんは未踏の東壁に挑む計画で、高度に体を慣らすため、簡単なルートから登山中でした。

山と溪谷社、2016年12月刊

澤田さんの著書は『体験的登山技術論』(ヤマケイ新書)があります。ビギナーには少し取り付きにくいかもしれませんが、登山が好きで少し経験ある人には参考になるでしょう。登山技術のことを書きながら、澤田さんの登山に対する姿勢や人柄まで伝わる本です。
澤田さんのような人も事故に遭ってしまうとは、山とはつくづく危険な世界なのだなと(それほどには見えず、だまされてしまうけど)再認識せずにいられません。

●屋久島で豪雨災害、登山者300人超が一時孤立(5/18)
18日に屋久島は、50年に1度という大雨になりました。
あの悪天候でも予定を変えずに(中止せずに)、300人以上もの人が登山に向かったのかと、正直なところ驚かされましたし、暗い気持ちになりました。あまりにも危険だからです。
テレビで男性ガイドの人が、午前中から午後2~3時までは普通の降りだった、中止できない程度の雨だった、あれで中止にしたら抗議される……という意味のことを言っていました。
大雨警報も、早朝の出発時にはまだ出ていなくて間に合わなかった、ということも。
しかし、結果的に多くの登山者が、命をおびやかされることになりました。
今回の経験から危機感をもち、反省点をとらえて修正してゆくのでなければ、いつか大きな事故が起こってしまう危険性が高いでしょう。
そういう視点から、これからの屋久島登山を注意して見てゆく必要があると思いました。

●富士山で20代男性の遭難騒ぎ(5/20)
男性は八合目で動けなくなってしまい、12:40富士吉田署に救助要請の連絡をしました。報道によれば「軽装備の登山のため、疲れて動けない」と言ったそうです。
警察は位置情報を確認するため、少し時間をおいて再度110番するように伝えました。
110番を県警本部で受けて、遭難者の位置を確認し、その場を動かないように要請しました。ところが男性は「体力が回復したので、自力で下山します」と主張して電話を切りました。
県警は男性が危険な状況にあると判断しましたが、雨の予報だったためヘリは出せず、救助隊が徒歩で現場へ向かいました。
それ以後、男性の電話は呼び出し音が鳴るだけでつながらなくなりました。救助隊は八合目付近の捜索を続けましたが男性を発見できずに、21:30で捜索を打ち切りました。
22:00に男性から電話連絡があり、男性は自力で山麓まで下山し、すでに自宅にいることがわかりました。

この男性は、遭難するとは、救助要請するとはどういうことかが理解できていなかったのでしょう。電話一本で、何人もの人が言わば危険をかえりみずに出動し、ヘリまで飛んでくれるのです。それだけ人の命が重いと考えて、多くの人が無償の行動をします。
そのような「遭難」に向かう行為の重さに対して、男性のとった行動はあまりにも軽すぎるものでした。
県警は男性にペナルティーは課さないですが、出頭してもらい指導を行うそうです。

2019GW期間の遭難データについて

GW期間の山岳遭難は、史上最多レベルの多発状況がくり返されています

春の連休中(4/27~5/6)の山岳遭難発生状況まとめが、5月10日付で警察庁から発表されました。
10日間に全国で発生した山岳遭難は、(カッコ内は昨年、次の数字は増減)
発生件数  164件(165)- 1
遭難者数  207人(187)+20
 死亡    23人( 13)+10
 行方不明  1人( 8)- 7
 負傷    76人( 74)+ 2

こういう数字をどのように見るかですが、結論から言えば、昨年と同じような状況がくり返されたと考えていいと思います。特徴は次の点です。
(1)10日間の発生件数としては非常に多い
(2)死亡者比率(行方不明を含む)は11.6%で、比較的低い割合である
(3)高山の雪山登山だけでなく、低山や日帰り圏でも多発している
(4)(この点は今年だけの特徴かもしれませんが)山菜採り遭難も多い

さまざまな形態での登山、ハイキング、山菜採りなどのレジャーにおいて遭難事故が多発し、その中で、死亡事故ではない「軽い遭難」の占める率が高くなっています。GW期間のこのような遭難状況は、ここ5年間ぐらい同じように続いています。

昔は、このシーズンの遭難というのは、雪山登山で悪天候による気象遭難が集中的に発生したり、雪崩で複数の登山者がいっぺんに犠牲になる、などというのが典型的なものでした。しかし、そういう特別に危険な状況でなくても、ごく普通の条件下で行われる登山、ハイキング、BCスキー、山菜採りなどにおいて、登山史上最多レベルの遭難発生状況になっているのです。
言い換えると、春秋の軽登山中心のシーズン、夏山登山シーズンに続いて、雪山登山が加わる春山シーズンにおいても、いわば「大衆登山」を反映した遭難発生状況になってきているのだと思います。

[グラフの説明]
GW期間の山岳遭難は、2015年に最多となりました。それまでの数年間は、毎年最多記録が更新されてゆくセンセーショナルなものでした。
しかし、2015年から今年度までは状況が変わって、ほぼ横ばいになりました。
減少と言えるほどの変化はなく、微減または微増のレベルです。2015年以降は、10日前後で160件を超える、史上最多レベルの多発状況が、毎年くり返されていると言えます。

[5月2週]連休明け1週間の遭難発生状況

[5/7~13の遭難関係ニュースから]
5月第2週の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

連休明けの次の週末を中心に、全国で多くの山岳遭難が発生しました。山に出かけるのが楽しい季節になって、ハイキングや山菜採りが活発に行われているためと思われます。

5/9(木)秋田県藤里町の山林で山菜採りの男性(69)が滑落死亡。5/10林道から400m離れた沢で発見
5/9(木)宮城県鳴子温泉付近の山林で山菜採りの男性(77)が滑落死亡。5/11高さ60mの崖下で発見
5/10(金)足尾・庚申山で男性(80)が下山中に20m滑落、頭を強く打ち死亡
5/10(金)=発見日/富士山山梨側八合目付近で、単独の男性(49)がスノーボード装備のまま滑落死亡しているのが発見される。8~9日の入山予定
5/10(金)熊野古道でオーストラリア人女性(66)が幅80cmの山道から崖下に滑落死亡
5/12(日)=発見日/御坂・三ツ峠大滝付近で男性(29)が死亡しているのを発見収容
5/12(日)雨飾山で男性(45)が滑落負傷。県警救助隊などが救助
5/12(日)八ヶ岳周辺飯盛山で女性(59)が転倒負傷。消防署員が救助
5/12(日)鈴鹿・竹平峠~雨乞岳で男性(68)が道迷いの連絡後、行方不明。5/13発見救助
5/12(日)高島トレイル三国岳付近で男性(70)が下山せず行方不明
5/12(日)大崩山系五葉岳で女性(67)が下山中にはぐれて行方不明。5/14自力下山
5/12(日)国見山(熊本県山鹿市)で女性(72)が下山中にはぐれて行方不明。5/13発見救助

[6/10追記]
5/11(土)三ツ峠屏風岩でクライミング中の女性(56)が転落重傷
5/11(土)剱岳でバックカントリーの男性(62)がルートミス遭難、小窓付近2300mで救助
5/12(日)鳥海山でバックカントリー滑走中の女性(70)が転倒、右脚骨折。ヘリで救助
5/12(日)伊勢本街道・飼坂峠で男性(76)が道迷い遭難、2H後に無事救助
5/13(月)鈴鹿・御在所山で男性(78)が転倒骨折、防災ヘリが救助搬送

[その他のニュース]
5/8(水)長野県が連休中の山岳遭難発生状況を発表しました。18件21人発生(前年比3件増)、死亡・不明4人
5/10(金)警察庁が連休中の山岳遭難発生状況(全国合計)を発表しました。164件(前年比-1)、207人(同+20)、死亡・不明24人(同+3)。遭難者数は過去2番目に多かったそうです
5/10(金)西上州・烏帽子岳登山口駐車場でマイクロバスが崖下に転落し、登山客19人のうち乗車していた18人中14人が負傷しました。このバスは無許可営業のいわゆる「白バス」だった模様
5/13(月)熊野古道の死亡事故に対し田辺市は対策会議を開き、古道の安全性検証を行う方針を確認しました

気にかかった遭難事例

●5/10 熊野古道
10日12:25ごろ、熊野古道でオーストラリア人女性(66)が崖から転落したと、外国人観光客から消防に119番がありました。現場は「発心門王子」から南西約2.5km地点で、山道沿いの崖から約40m下の林中で女性は意識不明の状態で倒れ、搬送された病院で約4時間後に死亡しました。
滑落地点の山道は幅約80cmで未舗装、崖側に柵などは設置されていませんでした。
熊野古道の中心地である本宮町地区は、欧米やオーストラリアを中心に外国人客が多く、2018年には外国人宿泊客が2万4957人(2008年588人)と急増しているそうです。
田辺市は古道の安全性を再検証するため、山間部にある未舗装の山道を中心に現地調査を開始しました。5月中の調査終了を予定しています。

●5/12 高島トレイル・三国岳
三国岳付近に入山したとみられる男性(70)が下山せず行方不明になっています。警察・消防など約50人が捜索しましたが発見されず、15日に公的な捜索は打ち切りになりました。16日付「ヤマレコ質問箱」で情報提供が呼びかけられています。男性は大学ワンゲル出身のベテランでしたが、単独のうえ、登山届も提出されていませんでした。
遭難者情報は、https://www.yamareco.com/modules/plzXoo/index.php?action=detail&qid=5281
関連地図は、http://oginoyama.blog.fc2.com/blog-entry-680.html

●5/12 大崩山系・五葉岳
夫婦で登山していた女性(67)が下山中に夫(65)とはぐれて行方不明になりました。2人は正午すぎに下山を始め、女性は夫より先を歩いていましたが、夫が車を駐車していた大吹登山口に着いたとき女性の姿はありませんでした。しばらく捜し続けましたが見つからず、21:50に110番しました。
2日後の20:00ごろ、女性は延岡市上鹿川の民家まで自力下山したため無事が確認されました。下山地は山頂から約7km離れており、大吹登山口とは全く別の方向でした。2日間長い距離を迷い歩いたことが推測できます。生還できたことはすばらしいですが、道迷い遭難の最も危険なパターンにはまってしまった例と言えます。

三保・新治市民の森

赤の番号は写真を撮った場所を示しています

(歩いた日=2019年5月5日)
三保市民の森は、梅田川の源流である大きな谷戸の南~西側斜面に広がる森です。東側の谷戸に沿った谷道、西側の尾根に沿った尾根道、森の中央を南北に歩けるプロムナードの山道が作られています。

(1)三保平、森歩きのスタート地点になる場所

いろいろな歩き方ができると思いますが、今回は単純に谷道を南から北へ歩きました。左側には深い森が広がって、美しい風景が見られます。谷戸をはさんだ対岸にも新緑の森の山が見えていました。こちらには東洋英和女学院や老人福祉施設の敷地があります。

(2)谷コースの竹林
(3)T1(谷コースNo.1)
(4)プロムナードコース、シダの多い所

「天狗の踊り場」の分岐(T5)をすぎると車道に合流します。車道歩きはつまらないので、左の山道に入り、途中から山腹を横巻きに歩くプロムナードを適当にたどって行きました。途中、シダの大きな葉が密生した場所がありました。

(5)T9(おなが)まちがえて行き過ぎた

行き過ぎて最後の尾根(O15)まで登ってしまったので、「おなが」(T9)へ戻って車道を下り、建設会社(株式会社カクシマ)の前で対岸の道に渡ります。左折して登って行くと、東洋英和女学院の正門前に出ます。

(6)車道から連絡コースに入る地点

車道を右へ約100m進み、左に分岐する歩道に入ります。この歩道は尾根上に沿い、横浜創英短大と霧が丘学園中との間を通っています。400mあまり歩いて車道に出たら、車道を横切って直進し、道標のある所(B7)から右折して新治市民の森へ入ります。

新治市民の森は67.2haあって、横浜市に47カ所(2019年)ある市民の森のなかで最大だそうです。三保とは雰囲気がちがって、森林というよりも、田畑の耕作地とともに里山の環境が保存されています。こういう自然が残され、市のバックアップのもとに有志市民によって維持管理されているのは、本当に奇跡的なことだと感じています。

(7)新治市民の森に作られた谷戸田
(8)旭谷戸、本格的な野菜作りが行われている
(9)にいはる里山交流センター

入山してすぐの分岐(B6)を左折して、耕作地跡と里山を見上げつつ旭谷戸へ向かいます。下りきると左側に谷戸田が開け、ここから新治で一番大きい旭谷戸(谷ではなく畑作地です)が広がっています。のどかな集落と畑地の風景を見ながら歩き、しばらくすると里山交流センターに着きます。道路の反対側には旧奥津邸の再建された建物が開放されています。初めてなら、しばらく時間をかけて見学するといいでしょう。

(10)新治市民の森への正面入口
(11)ひと登りするときれいな竹林を通る

150mほど引き返し、分岐(B2)から南へ向かいます。山に入る所(C1)に「新治市民の森」のポールが立っています。正面入口といったところです。
静かな森を歩いて向山の尾根に上がり、少し行くときれいな竹林があります。油窪の分岐(C3)は直進すると駐車場のある見晴らし広場へ行きますが、ここは左の鎌立谷戸へ下りてしまいます。数軒の人家と畑地に出ますが、右折してふたたび谷戸の奥へ向かいます。

(12)常見谷戸、新治の森の深い場所にある
(13)尾根道合流点にあるスダジイ(たぶん)の老木

奥の分岐(A3)から左へ入り、次の分岐(E1)は右へ行きます。森の深い雰囲気をたたえた一帯となり、小さな池や湿地があります。そこを通り抜け、少しの登りで尾根道に出ます(D15)。合流点の手前左側にスダジイ(たぶん)の古木があります。

(14)夕暮れの森

右に行くとわずかで見晴らし広場ですが、左へ尾根道をたどります。新治で最も長いルートで、途中、草原上に開けた場所や、深い森や竹林もあります。最後は向ヶ原の畑地に下ります。
車道に合流(D1)したら、左に行くと新治小を経て里山交流センターへ戻ります。センターから十日市場駅へ徒歩15分です。

(15)梅田川の「一本橋メダカひろば」

もっと歩く元気があるなら梅田川沿いに帰るのもいいでしょう。車道合流点から直進すると、梅田川の杉沢堰に出ます。川沿いの歩道をたどり、「一本橋メダカひろば」で車道に上がると、すぐ近くに杉沢バス停があります。
もっと下流まで歩いて、朝香橋の手前左側にある急な階段を昇り、神明神社の前を通って十日市場駅へ行くことができます。「一本橋メダカひろば」から30分ぐらいです。

[アクセス] 行き:中山駅前南口(神奈中バス11分)三保市民の森/帰り:杉沢(横浜市営バス13分)十日市場駅前
※中山駅前からのバスは、南口へ出て左方向①番乗場から「中53・鶴ヶ峰行」または「横52・横浜駅西口行」に乗車
※十日市場駅まで、交流センターから徒歩15分、杉沢バス停から徒歩20分
[参考時間] 「三保市民の森」バス停(30分)「おなが」:T9(10分)連絡路入口(10分)新治市民の森・西入口:B7(15分)谷戸田:B4(15分)にいはる里山交流センター(5分)新治市民の森・北入口:C1(25分)常見谷戸(5分)尾根道(20分)向ヶ原分岐:D10(15分)向ヶ原:D2(10分)杉沢堰(10分)一本橋メダカひろば・「杉沢」バス停 計2時間50分
※さらに歩く場合、一本橋メダカひろば(10分)神明神社(20分)十日市場駅
[追加情報]
・バス停「三保市民の森」と新治市民の森の見晴らし広場に、愛護会が設置している駐車場(無料)があります。目測各10~15台ぐらい。土・日・祝日の9~17時のみ利用可能です。
・にいはる里山交流センターでは地図や資料を入手できます。また、年間を通じて自然観察や里山生活体験などのイベントを行っています。
・交流センターのある新治里山公園には、この地に古くから住んでいた奥津家の家屋敷を保存していて、自由に見学できます。主屋では室内で休憩したり、記念品の販売コーナーもあります。

[5月1週]連休後半の山岳遭難状況

[4/30~5/6の遭難関係ニュースから]
5月第1週の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

連休後半はさすがに遭難発生が多く、マスコミ報道などから29件の遭難事例を把握しました。
北アルプス11件、南アルプス2件、中央アルプス1件、東北4件、関東甲信8件、近畿2件、その他1件でした。北アルプス、関東甲信、東北エリアが多くなっていますが、連休中はこのエリアに比較的多くの登山者が入山したことが推定されます。
前回、連休前半(4/27~29)の遭難事例18件を紹介しましたが、この期間(3日間だけですが)も後半と同様、北アルプス、関東甲信、北日本(北海道・東北)で遭難が多い傾向となっていました。

最近、警察庁から連休期間の山岳遭難まとめが発表されました。それによると、全国合計で164件(遭難者数207人)の遭難が発生したということです。
このブログで把握した47件は、全体の約29%(件数比率)となります。ただし、警察庁の統計(特に後半)のなかには相当数の山菜採り遭難が含まれているものと思います。

4/30(休/火)=通報日/中央アルプス檜尾岳で男性(41)が悪天候などで行動不能。5/2県警ヘリが救助
5/1(休/水)宮城県大和町の山林で、山菜採りの女性(72)が道迷い遭難。5/2県警ヘリが発見救助
5/1(休/水)太郎山(長野県上田市)で男性(72)が足を滑らせて転倒し負傷
5/1(休/水)渓流釣り目的で魚野川へ入渓した男性4人(45・33・29・29)が道迷い遭難。5/2無事救出
5/2(休/木)甑岳(山形県村山市)で男性(19)が疲労のため歩けず救助要請。5/3県警ヘリが救助
5/2(休/木)西上州・三笠山を下山中の男性(72)が行方不明となり、5/3木に引っかかった遺体発見
5/2(休/木)富士山山頂付近を下山中の男性(36)が300m滑落し左足首を負傷。5/3県警ヘリが救助
5/2(休/木)南アルプス甲斐駒ヶ岳で男性(64)がアイゼンを足に引っかけ10m転落、右脚打撲など
5/2(休/木)乗鞍岳山頂から下山中の男性(54)がバランスを崩し滑落負傷
5/3(祝/金)太平山(秋田市)で男子学生(20)が滑落負傷、救助に下りた2人も戻れず。5/4全員救助
5/3(祝/金)尾瀬・至仏山でガイド助手女性(65)が雪上を5m滑落し左肩脱臼。ビバーク後5/4通報
5/3(祝/金)=発見日/西上州・荒船山艫岩の150m崖下に倒れた男性を発見、のち死亡確認
5/3(祝/金)北アルプス白馬岳主稜を登山中の男性(59)が滑落し負傷。同行女性(57)ともに救助
5/3(祝/金)北アルプス奥穂ジャンダルムで中国人男性(26)が滑落し右膝に軽傷。5/4県警ヘリが救助
5/3(祝/金)北アルプス蝶ヶ岳で女性(50)がバランスを崩して転倒し負傷
5/3(祝/金)愛宕山(京都市右京区)で中国人男性(38)が道に迷い中国旅行社に救助要請。5/4救助
5/4(祝/土)会津駒ヶ岳滝沢登山道で心肺停止状態で倒れた男性(57)を発見、のち死亡確認
5/4(祝/土)丹沢・鍋割山南方で、雨を避けるため木の陰に移動した男性(45)が落雷を受け死亡
5/4(祝/土)北アルプス剱岳源次郎尾根で女性(44)が急斜面から500m下に滑落、多発外傷で死亡
5/4(祝/土)北アルプス剱岳を登山中の男性(34)が500m滑落、肋骨骨折など重傷
5/4(祝/土)=発見日/北アルプス樅沢岳で女性(46)が一時行方不明、長野県側数百m下で遺体発見
5/4(祝/土)北アルプス槍ヶ岳北鎌尾根独標付近で女性(33)が滑落して右脚を骨折。県警ヘリが救助
5/4(祝/土)北アルプス槍沢ババ平で男性(43)が体調不良のため動けなくなる。県警ヘリが病院搬送
5/5(祝/日)鳥海山で女性2人(74・73)が何らかの理由で遭難し行動不能。5/6秋田県警ヘリが救助
5/5(祝/日)南アルプス甲斐駒ヶ岳で下山中の男性(70)が20m滑落し左脚骨折。県警ヘリが救助
5/5(祝/日)北アルプス剱岳早月尾根で下山中の女性2人が滑落し負傷(詳細不明)
5/5(祝/日)北アルプス蝶ヶ岳で下山中の男性(62)がバランスを崩して滑落負傷
5/5(祝/日)天ヶ岳(京都市左京区)で女性(77)ほか5人が道迷い遭難。通報40分後に発見救助
5/6(休/月)宮崎県高千穂町五ヶ所の山中で山菜採りの女性(82)が戻らず行方不明

[5/21追記]
5/6(月)宮崎県高千穂町の山中で山菜採りをしていた女性(82)が戻らず行方不明。5/12現場から1km離れた山林で遺体発見
[6/10追記]
5/5(祝/日)薬師岳登山口から早池峰山へ向かった女性(44)が道迷い遭難、無事救助
5/6(休/月)大笠山から下山中の男性(57)が620m地点で転落重傷

気にかかった遭難事例―全国で散発的に発生

●4/30 中央アルプス檜尾岳
4月28日に千畳敷から空木岳をめざした男性(41)が、帰宅予定の29日に戻らず、家族が30日に警察に届け出ました。男性は5月2日午後に檜尾避難小屋にいるのを発見・救助されて、「衰弱して動けなくなった」と話したそうです。この事例はいわゆる“遭難騒ぎ”で、社会にめいわくをかけただけでした。

●5/2 甑岳(山形県村山市)
遭難男性(19)は何時に入山したか不明ですが、疲労のため途中で歩けなくなり、17時すぎに携帯電話で救助を求めました。翌朝6時すぎに県警ヘリが登山道で手を振る男性を発見・救助しました。男性は普段着のままで食料も持っていなかったそうです。傷害も発病もなく、道迷いでもなく、正規の登山道上にいるにもかかわらず“遭難”というのは、一般的な登山常識からは理解しにくいです。

●5/3 愛宕山(京都市右京区)
遭難者は中国人観光客の男性(38)でした。18時ごろスマートフォンのアプリを使って中国旅行会社に救助を要請し、同社から連絡を受けた東京在住の中国人女性が最寄りの警視庁立川署に連絡し、立川署から右京署に連絡が入ったのは23時25分でした。さらに、女性が遭難男性のスマホに連絡して位置確認したそうです。翌4日9時40分に救助されました。外国人登山者・観光客に日本の山の危険情報(滑落・道迷いなど)を伝達するのは緊急の課題だと思います。

●5/4 北アルプス樅沢岳
山頂付近にテントで泊まっていた男性が、同行者の女性(46)の姿が見えないため付近をさがしたところ、スリップしたような跡を発見したため、警察に通報しました。女性は山頂から長野県側に数百m下った斜面に意識不明で倒れており、その後死亡が確認されました。夜間~未明の間にテントから外に出て、何らかの原因により滑落したと推定されます。

●5/4 丹沢・鍋割山
一般ルートである後沢乗越ルートで、13時30分ごろ男性(45)が落雷を受けて死亡しました。雨が降ってきたため、同行の男性が雨具を用意している間、一人で木の陰に移動したところ落雷に遭ったそうです。詳しい状況はわかりませんが、落雷を受けた木などから人体へ雷撃が飛び移る「側撃雷」を受けたものと推定されます。樹林帯はむしろ安全と思っていたのではないでしょうか。本当に山はこわいです。

恩田の里~成瀬緑道

赤の番号は写真を撮った場所を示しています

(歩いた日=2019年4月13日)
都市の中に緑地をたずねて歩くのが楽しいです。心地よい自然の風景に出会えると得をした気持ちになります。
東急田園都市線・青葉台駅から桜台公園めざして歩くこと約30分。ここは全体の行程を考えれば、バスに乗ってカットしたほうがいいかもしれません。バス停「公園前」で降りて、西方向へ車道を登り切った付近から、晴れていれば丹沢と富士山が見えます。

(1)桜台公園の桜と新緑
(2)松風台車道、道端に出ていた花(薄紫のハナニラ)

大型店舗群が集まる一角の手前で右の細い道に入り、すぐ左折して、小さな山のきわを回ります。突き当たったら右折して進むと、いきなり田園風景に変わります。住宅地のすぐ隣にこんな風景が隠れていたことに驚きますが、じつは耕作地がけっこう多い横浜市内では、しばしば見られる風景でもあります。

(3)春の花(カラスノエンドウ)
(4)春の花(ムラサキケマン)
(5)恩田の里、水入れを待つ水田

今回訪れたのは4月前半、桜が満開のころで、いろんな野の花が咲きそろっていました。
田園風景はゆっくり歩いても30分ほどで終わります。住宅街の一角に出て、交差点を左折し、140mほど進むと公園があります。ひと休みするといいでしょう。公園の周囲の車道を回って、南へ進む突き当たりの長い石段を登ります。右(西)側の眺めが開け、歩道が先に続いています。

(6)丘陵の畑地のわきを通る道
(7)春の花(イヌガラシ)

歩道の左は植林地、右は畑地です。柵がされて私有地には入れませんが、樹の花、野の花が咲くのどかな山道です。ここを300mほど進み、いくつか住宅を過ぎて、左へゆるくカーブする手前で右に分かれる道に入ると、急下降してバス通りに出ます。すぐ前に徳恩寺、左側に東急こどもの国線・恩田駅があります。
徳恩寺の前の道に入ります。細いですが普通の車道で、車に気をつけながら通過するだけです。左下の鍛冶谷公園では、子どもたちのサッカー教室をやっていました。右には庭のある裕福そうな住居が並びます。神社前の石段をすぎると、左にカーブして広い車道に合流し、右側にコンビニがあります。コース上はトイレがないので、ここはポイントです。

(8)山吹緑地、丹沢・富士の眺めがよい

交差点に面して左斜め前の道に入って進むと、しだいに自然風景の中に向かいます。ゆるい坂を登り切った所が成瀬尾根の上になります。左側に小広い山吹緑地があり、西方の眺め(丹沢、富士山、町田市街)が広がります。詳しい展望図が設置されていますので、見える山の名前などがわかります。

(9)成瀬緑道
(10)風の広場

ここを南端として、青葉区・町田市境の尾根に沿って、成瀬緑道(成瀬尾根)が通っています。地域の人たちにとっては、自然の道を残す大事な場所のようです。
北上する場合は最初が一番自然豊かな景色になります。前半は森林と畑地の中を歩きます。樹林はきれいに維持されていますが、とても狭い範囲だけのようです。ベンチのある「風の広場」は腰を下ろして休めるポイントです。このあたりの樹林風景は安らぎます。

(11)尾根上に見える満開の桜

地図上のトンネル(成瀬尾根トンネル)をすぎると、道は尾根の少し左下を行くようになって、右側の竹林の混じる尾根上は立入禁止です。タケノコの盗掘を防ぐためのようです。やがて左側は小さな家並みに沿い、右に新緑の樹木や満開の桜を見上げながら歩きます。このあたりでは、自然の風情は薄くなります。

(12)成瀬尾根から車道へ下りる

階段で車道に下り、成瀬緑道は終わりです。右へ住宅地を行くと交差点に大きなスーパーがあり、300mほど直進すると東急電鉄・こどもの国駅へ着きます。

[アクセス] 行き=青葉台駅(バス3分)公園前下車、または、青葉台駅(バス5分)松風台下車/帰り=こどもの国駅(バス15分)青葉台駅 ※ほかにも多数電車・バス路線あり
[参考時間] 青葉台駅(バス3分または徒歩30分)桜台公園前(15分)桂台遊水池(15分)恩田の里(20分)すみよし台第3公園(20分)徳恩寺前(30分)山吹緑地(15分)風の広場(30分)成瀬尾根北口(15分)こどもの国駅 合計2時間40分~3時間10分
[追加情報] ・昼食は和食「なごみ」がリーズナブルでおいしいです。
・時間があれば「こどもの国」に立ち寄るのもいいです(有料)。多摩丘陵の自然が保存された貴重な場所で、外周道路を約1時間で歩くことができます。

こどもの国、にぎわっていた

[4月5週]連休前半の山岳遭難状況

[4/23~29の遭難関係ニュースから]
4月第5週の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

連休前半の状況です。連休初日から3日間で少なくとも18件の遭難がありました。そのうち5件が山菜採り、1件が山仕事(害獣駆除)、1件が観光、11件が登山中の遭難事故でした。

4/27(土)山形県西川町の山林で、山菜採りの男性(73)が滑落死亡
4/28(日)=発見日/鳥海山矢島口八合目付近で、男性(60代)が発病して死亡
4/28(日)福島県会津美里町の山林で、山菜採り中の姉妹(66・62)が体長1mのクマに襲われ顔や腕に重軽傷
4/28(日)新潟県で山菜採り中の滑落死亡事故が3件発生。新発田市で男性(81)、柏崎市で男性(80)、十日町市で女性(67)が死亡
4/28(日)新潟県妙高市で、作業中の猟友会男性(68)がクマに襲われ負傷
4/28(日)日光・明神ヶ岳で男性(59)が下山中に道に迷い、無事救助される
4/28(日)尾瀬・至仏山から下山中の男性(45)が雪面に足を引っかけて転倒、左足骨折
4/28(日)中央アルプス空木岳・池山尾根で男性(49)が20m滑落、左足首骨折の模様
4/28(日)=発見日/北アルプス立山連峰雷鳥沢で男性(79)が雪に埋もれて発見、死亡確認
4/28(日)=発見日/北アルプス八方尾根上部で倒れた男性(57)を発見、死亡確認
4/28(日)=発見日/北アルプス北ノ俣岳で男性(50)が死亡。前日山小屋に「たどり着けない」と連絡があったもの
4/28(日)=発見日/北アルプス槍沢で倒れた男性(55)を発見、死亡確認
4/28(日)北アルプス涸沢岳で男性(52)が雪崩に巻き込まれ100m滑落、腰を打撲し軽傷
4/28(日)兵庫県新温泉町「シワガラの滝」へ向かった男性(56)が山道から30m下の沢へ滑落、重傷の模様
4/28(日)熊本県美里町の権現谷で山道を散策中の男性2人が崖下に転落、男性(64)が死亡
4/29(月)愛鷹連峰鋸岳を登山中の男性2人(40・14、親子)が、登山道崩落により行動不能。県警救助隊が同伴下山

北アルプスで低体温症による死亡遭難4件

4月28日に北アルプスで単独登山の男性が4人遭難死しました。その前日は吹雪状態だったと思われ、悪天候に耐えきれずに倒れ、翌日あいついで心肺停止状態で発見されました。この4件は共通する要素の多い事例でした。

北ノ俣岳で遭難した男性(50)は、宿泊予定だった山小屋に15:30ごろ「たどり着けそうにない」と連絡していました。山小屋の男性3人が救助に向かったものの、悪天候のため断念したそうです。山小屋~北ノ俣岳間は、無雪期のコースタイムで登り2:00、下り1:30の行程です。
雷鳥沢の男性(79)は2560m地点で発見されました。別山乗越の小屋へ無雪期のコースタイムで0:40、雷鳥沢へ下るのも0:40ほどの距離でした。
八方尾根の男性(57)は標高2500m付近で発見されました。唐松岳頂上山荘へ通常なら0:30ほどの距離ですが、積雪と悪天候のため実際はもっと時間がかかったでしょう。
槍沢の男性(55)は標高2800m付近に倒れていました。休業中の殺生ヒュッテへ登り0:20、槍岳山荘(営業中)へ登り1:00ほどの距離でした。

これらの遭難原因は、悪天候に対して行動中止、避難などの防御行動をとれなかった点にあります。「30分~1時間ぐらいの距離なら、悪天候でも何とか行ける」という考えが根底にあったことでしょう。しかし、そんな予測がまったく通用しなくなるのが、気象遭難、低体温症といった事態なのです。

低体温症の恐ろしさは、経験したことがないと実感できません。コア体温(内臓などの深部体温、直腸温に近い)が2度低下して35度になると、初期段階の低体温症となるのですが、その時にはもう自分自身で正常な対応ができにくくなるそうです。
同行者がいれば、初期の低体温症になったときでも、避難、保温、救助要請などの行動がとれる可能性があります。しかし、一人で低体温症になると何もできなくなります。
単独登山のときには、本人が自覚できないうちに初期の低体温症になって、その結果、遭難してしまうといった恐ろしい事態が予想できます(筆者自身、経験したことはありませんが)。
ですから、単独登山のときには、コア体温36度(「寒い」という感覚、「震え」の身体反応が見られる)のうちに急いで避難しなくてはなりません。悪天候でもがんばって歩き続けるというのは、状況によっては非常に危険なことです。

以上のようなことを、私たちは遭難事例から学ぶべきです。

●明神ヶ岳(1595m):奥鬼怒・湯西川にあって、日光山系から独立した山塊をなしています。南北に3つの1500m峰があり、中央が最高峰の明神ヶ岳です。典型的なヤブ山でしたが、現在は登りやすいルートができているようです。

●シワガラの滝:扇ノ山北方、岸田川の左岸に分かれる小又川渓谷の名瀑。洞窟の中に滝つぼがある特異な形で有名です。駐車場から山道を約30分歩きますが、後半は沢沿いの荒れたルートになって危険なようです。

●洞ヶ岳(997m):熊本県美里町の東方にあって山系としては九州脊梁山地に属します。事故が起こったのは洞ヶ岳山麓、緑川ダム湖周辺と思われます。権現谷がどこにあるかは調べられませんでした。

●鋸岳(1296m):富士山南方にある愛鷹連峰主稜のうち、北半部の割石峠~位牌岳間にある難峰です。遭難の親子は鋸岳に東側から直接登るルートを行き、山頂直下で身動きできなくなったものと思います。グレード判断が誤っている(と思われる)遭難事例は、けっこう起こっているようです。

[4月4週]軽井沢の里山で登山者原因の出火

[4/16~22の遭難関係ニュースから]
4月第4週の山岳遭難まとめと、関連ニュースです。

この週も遭難発生は比較的少なかったですが、近郊低山で60代後半から70代の高齢者による重大事故(死亡・行方不明)が多く発生しています。転・滑落事故を防ぐことに重点をおいて、ルート選びや歩行技術をしっかりチェックする必要があると思います。

4/16(火)単独で百蔵山に登った男性(70代)が下山せず行方不明。登山口に車あり
4/16(火)北アルプス西穂独標で男性(73)が滑落負傷。県警ヘリが救助
4/17(水)八ヶ岳・赤岳で男性(69)が滑落負傷。県警ヘリが救助
4/21(日)古賀志山北方の斑根石山で単独登山の男性(67)が約100m滑落死亡
4/21(日)前日光・石裂山で男性(72)が数十メートル滑落負傷
4/21(日)北アルプス燕岳で合戦尾根を下山中の男性(57)が残雪でスリップし滑落負傷
4/22(月)単独で六甲山へ出かけた男性(71)が行方不明。4/23登山道近くの崖下で遺体発見

[2019/05/10追記]
4/17(水)南大菩薩・滝子山で女性(58)が滑落、右腕骨折の重傷
4/21(日)中央沿線・百蔵山で下山中の女性(59)が滑落、左脚を骨折して行動不能

●百蔵山(1003m):山梨県大月市にある山。稜線続きの扇山、権現山とともに郡内三山といい、昔から「中央線沿線」の山として1~2山組み合わせて登られてきました。ルート上および山頂から富士山や道志・御坂山塊のながめがいいです。

●斑根石山(559m):古賀志山の北方で、富士見峠をはさんで対する通称「559mピーク」で、正式名称が斑根石山(はんねいしやま)です。広く見れば古賀志山群の一峰といえます。北面は切れ落ちていて、うっかり転落すれば大事故になるようです。主要ルートからはわずかに離れていますが、ヒカゲツツジ(淡い横白色のツツジ、日本固有種)が多く見られる山ということです。

●石裂山(879m):「おざくさん」と読み、前日光高原の南端にある山。阿蘇山塊(栃木・足利・桐生周辺)に接する位置にあります。日光開祖の勝道上人が開いたと伝えられ、修験の山として古い歴史があります。ルートは整備されていますが、鎖や梯子が多く、踏み外すと危険です。

●六甲山(六甲最高峰 931m):六甲山は山系全体の名称ですが、山岳遭難では個々の発生場所が報道されず、単に「六甲山」とされる場合が多いです。私たちは詳細な発生場所を知りたいのですが、多くの場合、あらためて取材しないと判明しません。六甲山では年間50件ほどの山岳遭難があり、最も多いものは道迷い遭難です。4/22の事例は「新神戸駅から北に約2kmほどの登山道の崖下」で遺体が発見されました。そのとおりの場所は、摩耶山に至る天狗道上部となります。

軽井沢の里山で登山者原因の出火

浅間山の南斜面にある石尊山

4月19日12時40分ごろ、浅間山の寄生火山である石尊山の山頂付近で山火事が発生し、およそ3時間半後に鎮火されました。この火事で山頂から南側斜面にかけて下草や立木約2.25haが焼けましたが、ケガ人はいませんでした。
出火の原因は、単独登山の男性(55)がコーヒーのお湯をわかそうとして使用した、携帯用ガスコンロの火が周囲に燃え移ったということです。本人が消防に通報しました。
消火活動のために、県の防災ヘリと消防隊員、地元消防団のほか、県の依頼を受けた自衛隊所属のヘリ計5機が一時出動したそうです。
芽吹き前の樹木と枯れ草だけにおおわれた斜面は、いかに燃えやすいか容易に想像できます。そのような場所でコンロ類を使用しないことは、山で行動する者の常識として身につけなくてはいけないと思います。